【1-10】

今は曖昧な感情に蓋をして、

誰に言われた訳でもないが、きっと僕達にはまだ早過ぎるのだ

「ずっと友達でいようね」愛おしくも何より残酷な君の微笑み

歌声は一つ目のサビ半ばで途切れた

告げられぬ五文字の愛の言葉、或いは、

雪よりも尚白き天竺葵の蕾は、未だ開かぬまま

僕は幾度その言葉を嚥下しただろうか

"代わり" なんて、どんなに探したって何処にも居やしないのに

この気持ちの呼び名を知らなければ 馬鹿なまま、幸せなまま 生きてゆけただろう

起承転結も何も無い クライマックスには程遠い


【11-20】

あの日咲いた風信子はまだ枯れないのですか?

熟れてない果実は、どれもこれも酸っぱいものだよ

仰ぎ見た蒼空、流れ往く飛行機雲、陽射しを透かす碧い木の葉 褪せぬ初夏の情景

夕暮れの通学路に落ちる延びた影は、何時も寂しげに揺れていた

もしも十年後、変わってしまった景色の真ん中で、変わらぬ想いのまま再会出来たなら、

雨の日、校庭に浮かぶスカイブルーとレモンイエローの縞模様を、密かに探していた

楽園を追い出されたくはない 追い出されたくはなかった

天の川の距離を泳いで渡る気概など、

大罪は恋や愛を語るには切り離せぬもので

動悸、息切れ、眩暈 それが合図



恋と呼ぶには余りに幼く、愛と呼ぶには余りに拙い

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