『…転勤なんて滅びればいいんだ』



車の中でそう呟いた私。
二ヶ月前に父親の転勤が決まり、そこからはまるで走馬灯のような早さで転校手続きに送別会にお見送り…親しい友人達と別れるまでが早すぎて泣きそうになった。



「もう、そんな事言わないの名前」

『だって…兵庫だっけ?知り合いいないとか…はぁ…』

「あら、そんな事ないわよ?」



どういう事か母に問えば、どうやら引っ越し先に昔私と仲が良かった子がいるらしいのだ。
知り合いが誰か思い出せないまま、私はとうとう引っ越し先に到着してしまった。






「……名前ちゃん?」

『あ、はぁ……えっと?』



誰だこの男は!記憶にないんですけど!?
目の前にいる髪が少し摩訶不思議な男を見て、真っ先に私はそう思った。



「ひっさしぶり〜!俺、ほら勘右衛門!見んうちにちょびっと女の子らしゅうなって!」

『うぇ…えと…日本語を喋ってほしいと言いますか…!』


方言で話されても分かるか!大体かなり馴れ馴れしいけど私はコイツを思い出せないからどう接したらいいか…!!



「あぁ…ごめんごめん!やっぱ方言じゃ分からんよなぁ」

『…はい…ていうか…あの…』

「…?」

『私…貴方の事覚えてない…ていうか』



ビシッ!
私の発言の後に聞こえた(気がした)凄い音にびっくりして顔を上げれば、そこには目を見開きショックを受けている勘右衛門とやら。
…もしかして私酷いこと言った!?



『あ、あの、ごめ…』

「じ、じゃあ昔の約束とか覚えてない…!?」

『………すみません』



謝れば凄く泣きそうな顔で震え始める勘右衛門。
覚えてないのは私のせいだから、そんな顔を見てしまうと罪悪感がどんどん沸き上がってくる。



『えっと、勘右衛門…君?ホントに私記憶が無くて…ごめんなさい!』

「…もうっ!久し振りに会ったらなんどいや!名前のだぼ!ごーわく!」

『ごごごごごめんなさいぃぃぃぃ!!』


方言怖い!荒い!
思いっきり叫んだ勘右衛門にビビり、無意識のうちに泣き出してしまった私。
それに気が付いた勘右衛門がハッとして、あわあわと私を慰めはじめた。



「わ、あの、ごめん!つい方言で…べっちょない?」

『べっちょ…?』

「違った!大丈夫!?」



必死になって聞いてくるものだから、怖さなんて忘れて吹き出してしまった。
くすくす笑う私に安心してか、ホッとため息をついて笑いかけてきた。



「良かった…でもホント覚えてないん?」

『うん…約束って何?』

「え…あ〜…うん」



どもりながらもごもごと何か呟く勘右衛門。
心なしか顔が赤いような…何を約束したんだ私達。凄く不安。



「あの、昔やけどさ…公園で、その…結婚しようって…」

『………え?』

「俺が好きって言うたら名前ちゃんも答えてくれたから…」



…思い出した。そういえば遥か昔にそんな約束をしたような記憶がうっすら残ってる。あの時の相手って勘右衛門君だったのか…って思ったら凄く恥ずかしくなって、私も彼も顔を真っ赤にして俯いてる状態になってしまった。



「んで…あの、思い…出した?」

『う、うん……』

「今すぐにやて言わんけど、考えてもらえない…?」



真っ赤な顔でそう行ってくる勘右衛門の顔が真剣で。
ああ、これは落ちるのも時間の問題かもなんて考えちゃう自分にちょっとだけかゆい気持ちになった。




再会と約束





―――――――――――――

訛「見んうちにちょびっと女の子らしゅうなって!」
訳「見ないうちに少し女の子らしくなって!」

訛「…もうっ!久し振りに会ったらなんどいや!名前のだぼ!ごーわく!」
訳「…もうっ!久し振りに会ったら何なの!名前のあほ!腹立つ!」

訛「べっちょない?」
訳「大丈夫?」



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もう方言とかいざ書くとなったら全然分からん…!(^p^)
絶対どこかおかしいと思いますけどスルーして下さいw



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