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完全歓迎ムード
「…ということは、そのサスケさん?と殴り合いをしてたら吹っ飛ばされて、起き上がったらここにいた、と」
うむ、と胡坐をかいた青年は首を縦に振った。刹那、おかわりでござる!と意気のいい声が響く。
「で、時は戦乱の世で、武田信玄に仕える武将さん」
また大きく首を縦に振る。そしてご飯を口に掻き込んだ。
「ほーへほはる!」
リスのように口一杯にご飯を溜めながら是認する。そして喉を鳴らすと、また美味しそうにご飯を掻き込んでいく。
こたつを囲んで座る一家四人は顔を見合わせた。
信じられない、と。
しかし目の前に男がいるのは夢でもなんでもなくて。嘘だと否定したくても、窓の鍵は掛けられたままだったし、一階のドアの鍵も閉まっていた。完全密室状態なのだ。それに話しかたも容貌もエネーチケーの大河ドラマそのもの。テレビやコタツ、家のもの全てを見て吃驚してるし。
どうやらこの人、本当に戦国時代の人らしい。
「真に美味!このような旨きもの初めて食べました!」
それにしても口元にご飯粒をつけ、目を爛々と輝かせている青年が武将だなんて。
「ほんと!お母さん嬉しいわあ!ほらどんどん食べてって!まだまだあるからね!」
「それは真にござるか!?」
「ええ!最後はご飯を入れて雑炊することだってできるのよ!」
「ぞ、雑炊!何と甘美な響きか!」
「兄ちゃんいい食いっぷりだねえ!見てるこっちが気持ちいいよ!」
「いやいや類殿もでござる!」
「こう見てたら家族が一人増えたみたいで嬉しいなあ、母さん!それも戦国時代の武将さんだなんてうちは果報者だ!」
あはははーと笑い合う5人。
「本当だねー。ってちょっと待った!」
ずば、とその雰囲気を一刀両断する。
「いきなり何だよ姉ちゃん」
「どうかなさったか」
「もう豚肉は残ってないわよー」
「仕方ないパパのを、ってもうないや」
「そうなの豚肉…って違ぁああう!」
「ちょっとあなた!何めちゃくちゃ馴染んでるんですか!」
びしっと娘が指差すと、青年は目を丸くした。
「某?」
「そう、あなた!なんかフワフワしてますけど分かってるんですか!自分の状況!」
青年はこてんと首を傾けた。半端なく男前なのに、仕草はどこか小さい子を思わせる。可愛い。めちゃくちゃ可愛い。何だ格好良いのに、可愛いって。ギャップを狙ってるの?危な!もうちょっとで仕留められるところだった!…じゃなくて。
「未来にタイムスリップしてきたんですよ!」
瞬きを何度かし、考えるそぶりを見せる青年。そして口を開いた。
「たいむすりっぷとは何だ?」
…相手は戦国の人だった。
完全歓迎ムード「時空を超えたってことだよ兄ちゃん!」
「おお!そうでござるか!」
「まあ今日は夜も遅いし、ここに泊まっていきなさい。明日には明日の風が吹くわ」
「そうだよ母さんナイスアイディーア!何なら帰るまでここに住みなさい!」
「ま、真にござるか!某は真田源次郎幸村と申す者に御座る!何とぞ宜しくお願いしまする!」
「名前ながっ!」