デートに行きませんか?
「…の、…殿。椿殿!」
ぼんやりと目を開くと、たいそう端正な顔がうつった。覗きこんでいる男の瞳にも、自分がうつり込んでいる。
「…整ってるねえ」
ぽつりと呟くと椿はまた目を閉じ、寝返りを打つ。幸村は何のことだと首を傾げたが、はっと思い出したようにまた椿を揺さぶり出す。
「椿殿お!起きてくだされ!」
「…るさいなあ、なによ」
力任せなその起こし方に椿は苛立ちを隠すこともなく、むっと幸村を見返した。
「お主今日は休みなのであろう?」
にんまりと楽しそうに笑う青年に、椿は何の話なのかと眉を寄せた。
「でぇとに行こう椿殿!」
「…はぁあ!?」
眠気は一気に消え去ったのか、少女は布団から飛び起きた。
デートに行きませんか?目をキラキラと輝かせた幸村は続ける。
「某じてんじゃに乗れるようになりたいのだ!」
「…それデートじゃないでしょ」