やさしき日々
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見づらい方はふち無しver

親友からの説教30分でしたスクールライフ




ホームルームも終わり、やっと帰れると思ったらまさかの掃除当番。心の中で校門で待たせている幸村さんに土下座する。ほんっとすいません!もうちょっとだけ待ってて下さい、ダッシュで行くんで!やっとこさ掃除も終わり鞄を引ったくり教室のドアに手をかけた瞬間、肩に誰かの手が。

「椿ちゃあん?お姉さんに説明、してくれるよね?」

魔王に捕まった。

まじすみまっせん、幸村さん。だいぶ遅くなりそうです。


親友からの説教30分でしたスクールライフ


やっと弁解を終えた少女は、一目散に校門へ走っていく。幸村さんはもう呆れて帰ってしまったかもしれない。一緒に帰ろうと誘った本人が待たせるなんて本当最悪だ!

階段を三段飛ばしで下り、校門へ向かって駆け抜ければ、人影が見えた。

「幸村さんほんっとごめんなさい!」

勢いよく頭を下げれば、聞こえてきたのは幸村さんの弱々しい声。顔を上げると、

「なな何してるんですかぁあ!」

そこには絡み合う二人の男たちが。公衆の面前で何堂々とっ!

「助けてくだされ椿殿ォ!」

ちゃんと見れば、幸村さんが後ろから雁字搦めにされてる?って後ろにいるのって…

「何してんですか木村先生!」

幸村さんの後ろから腕を回しているのは、この学校の体育教師木村たくま先生だった。はい、キムタクかと思った人残念!あの日本の男前代表に似かよったところは一切なく、体つきはゴツく、筋肉ムキムキ、肉食代表みたいな豪快な先生だ。そして超の付くほど、

「この上腕二等筋、首から肩にかけての筋肉の付き方、極めてつけはこの腹の割れ方!うまい、巧すぎる!一体どんな体の鍛え方をしているんだ!一体何者なんだっ!」

筋肉バカだ。

「手のひらの硬さから言えば、剣道。しかし、剣道だけでは指にこんな豆ができまい!この豆痕は弓を持つ際に出来るもの、つまり弓道!そしてこの豆痕は柔道いや空手か、それともボクシングか!そしてこの豆痕は…見たことがない!一体何を使えば、この豆痕ができるんだ!そしてお前は、一体いくら体術を身につけてるんだ!」

熱くなったら止まらない、いや止められないのだこの先生。あ、耳元で叫ばれすぎて幸村さんの意識が朦朧としてる!いや、体を絞められすぎてるのか!どっちにしろ幸村さんが危ない!

くらくらと幸村さんが首を回す。やばい!意識が!死んじゃう!

「ちょ、先生!まっ…」

その瞬間目の前を横切ったのは、大きな何か。

ドスンッ!

少女は目を見開く。目の前に落ちてきたのは、

―木村、先生?

「危ないところだったでござる」

ふうと息を付いたのは、木村の体よりもうんと華奢な青年、幸村。

「悪いが衆道の気はないのだ」

何度か二人を見比べて、やっと気づいた。

どうやらこの人あの百キロ以上ある巨体を投げ飛ばしたらしい。

「って、ええぇえ!幸村さん強ォオ!ちょ筋肉どれだけ!まじ、ええぇえ!」

驚きの声を上げると、幸村ははっとしたように椿に目をやった。

「すまぬ椿殿!つい癖でやってしまった!」

ぱんと勢い良く合掌すると、幸村はさっきの勢いはどこへやら眉を下げ、体を小さくした。

そのとき丁度、木村がううっと唸り声を上げた。

「「げ!」」
やばいと二人は顔を見合わせる。

「こういうときは」
「逃げるが、」
「勝ち?」
「うむ!」

頷き合うと、二人は一目散に走り出した。

「お前気に入ったぞぉお!お前名は何て言うんだぁああ!?また此処に来い!俺が筋肉検査してやるっ!」

「ぎゃぁああ!追いかけてくる!」
「椿殿!お荷物を!」
「え、あ、はい!」
「お手を!」
「はい!」
「走りますぞ!」
「うわぁあ!幸村さん早すぎ!」


手を繋いで帰ってきた二人を見て、仲良くなったものだと母が喜んだのはまた別のお話。