ああ、意識が遠のいていく。
死ぬ前に、一目でも会いたかったなあ。
瞼が閉じていく瞬間、
どこからか美桜と呼ぶ声が聞こえた気がした。
「美桜!」
「美桜っ!」
「死ぬな!死ぬなっ!」
どうしてか、目を閉じてはいけない気がした。
瞼が重いのに、目を開いたって、もうどうしようもないのに。
それでも、
それでも、
誰かが私を必死に呼ぶから。
最期の淡い願い
石のように重い目を開いた先に見えたのは、夢だった。
消えたはずの小太郎がそこにいたのだ。
出るはずのない声で死ぬなと言って、泣きそうな表情をして見つめてくるのだ。
「すてきな…ゆめ、だなぁ」
「夢ではない!意識を飛ばすな!もう戻ってこれなくなるぞ!」
しかし、重力に従って彼女の瞼は閉じられていく。
「美桜!美桜っ!やめろ!目を閉じるなっ!」
「こた、ろう、さ…」
そうして、そこで彼女の瞼は完全に閉じられた。