青々とした空に、大きな入道雲一つ。蝉時雨が響き渡り、火照るような暑さが支配する。彼と彼女が出会ったのは、夏を一言で表したような日であった。見慣れたはずの景色山の山頂まで続く緩やかなこの坂道は人通りがめったになく、毎度のことながら彼女の足音しか響かない。道の両側から中を覗くように鬱蒼と生えた木々からは痛いほどの蝉の鳴き声。「到着」彼女の目線の先には、苔の生えた石段と古ぼけた鳥居が一つ。いまにも崩れ落ちてしまいそう、そんな言葉の似合う寂れた神社であった。