「ほーら、こっちだよ」
こっちこっち、と女は言う。
しかし鳥たちがそれに従うことはなかった。
片手に餌を持ち、瞬きもせず鳥を見つめる男。
そしてその向かいには警戒の目を一心に向ける鳥たち。
膠着状態は数分前より相変わらずで。
はあと小さくため息をついた娘は、男に声をかけた。
「あのお兄さん。目つきがちょっと…鋭いんじゃ」
鳥を丸のみしてしまいそうな目で睨む彼の姿はまるで毛皮目当ての密猟者。
手の中の粟玉さえ、まるで野鳥捕獲のためのエサのようで。
鳥たちをあれだけ殺気立だたせられるのも、ある意味才能なんじゃないだろうか。
男はぎろりとその血走った目つきでこちらを向く。
そして一言。
『しかし目を離せば負けだろう、こういうのは』
ド天然発言を投下した。
動物好きの不器用くん
「えええ!一体何と勘違いしてるんですか!?野生の争い!?」
猛獣と命の掛け合いしてるんじゃなんですから!と女は叫ぶ。
『じゃあどうすればいい』
男は眉根をぴくりとさせた。
「とりあえず最初に瞬きしてください」
目すっごく真っ赤ですよと付け足した。
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bkm