位置について!


うー・・・ん。

4月。春休みももう今日で終わってしまうのかと思うと、とても寂しい。さて、私はこの不規則な生活から抜け出せるのだろうか?まず、朝布団から出る為には室温が暖かい方が良い。4月といえどまだ朝は寒い。っていうか、私の部屋の日当たりが悪すぎて寒い。まずはそこから改善しよう、という事で残り少なくなったヒーターの灯油を貰いにガソスタまで来た。
ガソスタには、最近入ったのか分からないが見知らぬバイトだろうと思われる男と、うちの高校の制服を来た男子が喋っている。その様子を横目で見ながら、私はガソスタの奥まで入っていつものおじさんに灯油を頼む。灯油が入るまで、私は自販機でジュースを買いさっきの男子を見る。

ここらでは見慣れない銀色の髪。その横顔もまた見慣れないものだった。うちの近所には居なかったはず。新入生・・・にしては大人びている印象を受ける。ジュースを一口含んだところで、持ち前の社交性を活かし彼に話しかけることにした。さっきのバイトは居ない。


「こんちは。」

「あ・・・こんにちは。」

「ちがったらごめん、新入生?」

「いや、転入するんだ。2年に。」

「え、じゃあ私と一緒だ!そっかー、転入生だったのねー。道理で見たこと無い顔なわけだ。あ、私印矢恵。都会から来たの?」

「ああ。・・・俺は、月森孝介。よろしく。」

「うん、よろしく!同じクラスだと良いね!・・・って、あんまり顔色良くないっぽいけど・・・大丈夫?」

「・・・あぁ。」

「都会から来たから身体がビックリしてるのかもね。無理しないほうが良いと思うよ。」

「・・・。」

「あー、えっと、良かったらこれ飲む?口つけちゃったけど・・・。」


私が差し出したのは、さっき買ったジュース。一応清涼飲料水なので、胃に負担をかけることは無いと思う。多分。彼・・・月森君は緩慢な動きでそれを受け取り、一口飲んだ。初対面で厚かましいとは思ったが、私は月森君の背中をさする。私は風邪の時にこれをしてもらうと、いくらか楽な気持ちになれるのだ。


「・・・だいじょうぶ?」


と、後ろから、まさに鈴を転がしたような可愛らしい声が背中に当たった。振り返れば、その声に似合うような幼い女の子が、心配そうな顔をしてこっちを見ていた。


「車よい?ぐあい、わるいみたい。」

「ああ、その線もあったか・・・。」

「そのジュース、お姉さんの?」

「え、ああ、うん。ごめんね、お嬢ちゃんのは無いや。」

「ううん、良いの。知らない人からお菓子とか貰っちゃダメって、お父さんが・・・。」

「菜々子、孝介。そろそろ・・・。」


と、何処かでいつか聞いた声。いつかって、最近だよ。超最近聞いたよ。声のした方を見れば、あの時と同じように眉間に皺を寄せて、無精ひげを生やした・・・。


「どっ、堂島さん・・・!」

「ん?あ、天城屋のとこの・・・!」

「?、お父さん、知り合い?」

「や、ちょっとな・・・。」

「ははは、何もやってません。」

「・・・。孝介、どうかしたのか?」

「私じゃないです!!!」

「分かってる!」

「あの、俺は大丈・・・。」

「お父さん、お薬あげないと。」

「長旅で、どっかから風邪でも貰ったんだろう。・・・天城屋は何しに来たんだ?」

「その呼び方は何だか・・・まあいいや。私はちょっと灯油を・・・。って、放火しようとかそんなんじゃないですから!日当たりの悪い自室に暖をと思いヒーターの燃料を・・・!」

「そういつも疑ってかかってる訳じゃないんだがな・・・。」

「あの、」


チョイ、と服を引っ張られる。髪の毛と同じ色をした瞳とかち合った。男の癖に綺麗な顔してんなぁ・・・。何だ、都会はイケてるメンズの集まりなのか。


「ジュース・・・。」

「ああ、良いって良いって!貰っておいて。安いけど、転入祝いってヤツ?」

「いや、あの、そうじゃ・・・。」

「ほら、車乗って早く帰って早く寝なさい!明日早速学校なんだから。」


月森君は、何か言いかけた口を閉じて、大人しく車に乗り込んだ。女の子・・・菜々子ちゃん、と堂島さんも車に乗り込む。月森君がもう一度私を見た。私は笑って口を開く。


「じゃあ、また明日!学校で会おうね。」

「・・・ああ。」


堂島さんの黒い車を見送る。いやあしかし、コワモテの堂島さんにあんな可愛い娘さんがいるだなんて・・・。奥さんはとても美人さんに違いない。堂島さんもやるな。と、自分が何しにここへ来たのかを思い出す。また奥まで行って、おじさんから中身の入った小さめの赤いポリタンクを貰う。


「随分良い雰囲気だったねぇ。」

「は?」

「いやー、青春が始まる瞬間っつーのは、どうしてこうも甘酸っぱいのか・・・。」

「え、ちょっ、おじさん?」

「良いねぇ、俺はお似合いだと思ったよ。いや、もう矢恵ちゃんにはジュネスの息子がいたんだっけ?」

「なっ!違いますよ!そんなんじゃ・・・!」

「や、どちらにしろ都会男を次々引っ掛けてく矢恵ちゃんは凄い!はい、お釣り。」

「そ、それじゃあ私がまるで悪女みたいじゃないですか!」

「罪な女に育ったもんだ。小さい頃は、どんなじゃじゃ馬に育つかと・・・今でもじゃじゃ馬だったか。」

「もー!おじさん!!からかうのもいい加減にして!」

「ははは。まあ、中途半端にするのはオススメしないな。俺みたいに奥さんに逃げられそうになるぞ。」

「〜〜〜〜っ、さいなら!!」

「まいどあり〜。」
20090420*20101227修正

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