「だからどうしてお前は命令に従わないんだ!!この地形で言えば、ここに設置ガンを置いて通常エネミーを掃討するのが当たり前だろ!!」
「うるっせぇえんだよ!!俺はヤりてぇようにヤるっつってんだろうが!!」
S.I.V.Aでは、ミッション後に持ち回りでミーティングが行われる。進行役により内容は変わるが、主な中身は今回の反省点と次回への課題のまとめである。
「(……また始まったわね)」
今回の進行役はカミヤだった。
彼は持ち前の真面目さを生かし、スティールスーツのログを用意した後にそれぞれの動きの良し悪しを的確に突く。
敢えて短所を言うのであれば、『細かすぎる』と言ったところだろうか。監督役のホダカは口を挟まないため、他のハウンド達は下手をすれば二時間以上その反省会に付き合わされることになるのである。
今日も今日とて、既に一時間が経過している。
夜遅いミッションであったため、現在時刻は午前を回っている。
ほぼ全員が抱く早くシャワーで汚れを流してベッドに飛び込みたいという欲求は、残念ながらカミヤには届いていなかった。
「それは駄目だ!俺は皆の安全を考えて作戦を立てているんだからな!!きちんと指示に従え!!」
「……ぁあああああっ!オマエ、オレのおふくろかよ!!」
「違う!!」
カミヤの頑固たる態度にクライブの怒声が響き渡る。
彼が前述の人として当たり前の欲求を口に出さないのは彼なりのカミヤに対する気遣いなのだが、当の本人は気付いていない。
少なくともこの口論が収まるまで事態は何も進展しないだろう。
そう判断したアンナは眼鏡を外し、セレスティーヌは自慢の金髪の毛先をいじり枝毛を探し始める。
流石のホダカもそろそろ口を挟むべきか、とボールペンをカチリとノックした所で。
「恋人だ!!!」

カミヤの凛々しい声が響く。

「ん?」
「は?」
「え?」
「……っ、な、っ!!!」
女性陣が顔を上げて呆気に取られている間に、クライブの顔が赤く染まっていく。
そんな彼らを放ったらかしたまま、カミヤは言葉を続けていく。
「恋人?いや、未来の亭主の方が良いのか?兎に角だ、恋人の心配をして何が悪い!!」
「ち、ちょっとカミヤ!?あなた達ってそういう関係だったの!?」
「ああそうだ!」
「ばっ、オマっ!っんな、ぎっ」
「クライブ、落ち着きなさい。噛んでるわ」
「そして否定はしませんのね。……これは詳しいお話を聴かせていただく必要がありそうですわ」
先程までの無関心さはどこへやら。
アンナは眼鏡を直し、セレスティーヌは毛先をそっと直し、ホダカは録音用デバイスの電源を入れジャケットの中に忍ばせた。
「ばっ、ばっかじゃねぇの?!誰がんなことしゃぶ、喋るかっつーんだよ!!」
「あなたには聴いていないわ」
「そうねカミヤ。仲間内の情報共有は大切なだから、話してくれるわよね?」
「了解した!発端はだな……」
「やめろって言ってんだろうがあああああ!!」
クライブがカミヤの口を塞ごうと腕を伸ばしてみるが、するりと交わされた挙げ句に彼は女性の波に飲まれてしまう。
抵抗は無駄だと思い知った彼は椅子に腰を下ろし、首まで赤く染めたまま俯いた。
「(……恥ずかしぃ……)」
出口のパスはホダカと解説役のカミヤしか持っていない。そのため、退室することも出来ないクライブは両の掌で顔を覆ったまま。
ただただ恋人がのろける様を聴かされるという拷問を受ける羽目になってしまった。

翌日、ミーティングに参加していなかったサイードやアレックス。エレナにユンと言ったメンバーは、やたら血色の良い女性陣三名とやたら不機嫌なクライブ。そして今日も今日と手変わらずに突っ走るカミヤに、不思議そうな視線を送っていた。






「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -