あの日から、もう五日が過ぎてしまった。
長く続いたキスを終えた上条は、それからめっきり口数を減らしてしまい。
冗談だ、だとか。不幸な偶然だと言う言葉を待っていた一方通行の期待はすっかり裏切られる形となった。

「……」
「………」
上条が立ち上がると、椅子の脚が床を叩く小さな音がした。しかし両名ともそれに何か反応をするわけでもなく、各々の行動を続行する。
今は少しばかり早い夕食の時間だった。
今日の主菜は上条得意の肉野菜炒めで、この古めかしい洋館の食卓に並ぶには些か庶民的すぎる気がしないでもない。
しかしその味はここにくる前に上条が一方通行に作ったものと同じで、それが更に今の状況の違和感を煽り立てる。
「(……どォして)」
上条は急に態度を変えたのだろうか。
これまでの執拗なスキンシップがまるで嘘のように、一切触れられることが無くなったのだ。
誤解を生まないように補足すれば、一方通行はあの行為を望んでいるわけではない。
ただ、今まで当たり前のように与えられていた体温が無くなってしまったことに違和感を抱いているだけだ。
「じゃあ、俺行くから」
「…あァ」
上条は自らが食べた分の食器をてきぱきと片付けてしまうと、必要最低限の言葉だけを残して自室へと籠もってしまう。
残された一方通行は一人寂しく食事を続け、それが終われば彼も自室へと戻る。汚れたままの食器を放置しても上条は何も言わず、当たり前のように翌朝には朝食が用意されていた。
「………」
碌に会話をしない所為か、喉がその機能を忘れてしまったのではないか、と。
一方通行は不意に馬鹿げた思いを抱く。
窓のない自室でベッドに寝そべりながら、書庫から持ち出した本をぼんやりと流し読むことで時間を潰して見るものの、時計がないので今が何時なのか。本一冊でどれだけの時間を消費できたのかすらわからない。
「……」
手に持っていた書籍を枕元に積むと、彼は仰向けになりぼんやりと天井を眺めた。

特に、何もすることがない。
誰かに必要とされることもなく、誰かを必要とすることもない。
限りなく自由で、限りなく孤独。
そんな生活も今日で十日目を迎えたが、未だ、焦りに似た違和感に苛まれる。上条と共にいる間は、その違和感が少しは薄くなるような気がしていたのだが。
「………」
ふと、自らの唇が気になった。
白く細い指で輪郭を撫でていると、嫌でも上条の感触を思い出す。
湯に浸かっていた所為で暖かかった。乾燥していたからか、少しかさついていた。長く静かな鼻息がこそばゆかった。少しだけ汗の匂いがした。体勢を変えられないようにと抱き締めてきた腕は、固かった。
至近距離で合った眼は底が見えないほどに真っ黒で、吸い込まれてしまうのではないかと、思った。
「……チッ」
馬鹿らしい。だからどうだと言うのだ。
一方通行はそう考え、首を横に振ることで雑念を散らすことにした。



「……はぁ」
部屋に戻った上条は、大きな溜息を吐く。
たった今閉めたばかりのドアに背中を預けた直後に膝の力が抜けていき、そのままずるずると絨毯の上に座り込んだ。
ほんの少しだけ寂しそうな表情を浮かべている一方通行を置いて部屋に戻るのはなかなかに辛かった。しかしそれ以上に、同じ空間で同じ時間を過ごすことが辛かった。
「(……あー、うん。…そーかよ……)」
誰に掛けるわけでもない言葉を脳内で巡らせながら、自らの頭を掻く。
今まで無意識の中で取っていた行動を改めて思い返せば、恥ずかしさの余り死んでしまうのではないかと思ったのだ。
一度目のキスは確かに偶然だった。
しかし二度目のキスは、上条が明確な意志を持って行った。
そこに含まれるのは明確な好意で、直接的に言えば肉欲で。
今まで彼の身を案じている振りをしながら、自分自身のエゴを押しつけていたのだ。
「(……最低じゃねーか…)」
誰もいない空間で二人きりと言うシチュエーションが拍車を掛けたのかは分からないが、一方通行はきっと戸惑ったに違いない。
何せこれまで普通の友人として過ごしていたはずの同性から、濃密なスキンシップを受けたのだから。
上条からすれば、土御門や青髪ピアスに同じことをされたようなものだ。当たり前のように戸惑うし、もっと言えば嫌悪感を抱いたとしても不思議ではない。
「……」
だから、上条は恐ろしくなってしまったのだ。
土御門は言っていた。『一方通行の生殺与奪は全て上条の手の中だ』と。それはきっと、一方通行をヒトとして扱わず、上条の想いを受け入れるだけの存在に作り替えるには。
本当に理想的なシチュエーションなのだ。
しかし残念ながら、彼はそこまで残酷にはなれていない。
「……」
スケジュールの半分も消化していない状況だが、自分の感情を自覚した上条にはもう限界だった。
一方通行のことが好きだ。
だから普通に幸せにしたいし、幸せになって欲しいと思う。
しかしその時彼の隣にいる人間は、自分であって欲しい。自分でなければならない。
誰も隙には挟み込ませず、自分だけが、一方通行と言う存在を独占したい。
他者というブレーキが無い為か、加速度的に狂気に傾き掛けていく自分の心内が、今の上条には本当に恐ろしかった。
のそりとした動きでパンツのポケットから携帯電話を取り出した上条は一人の男の番号に発信してみるものの、コール音が鳴り止むことはない。
自らの理性と一方通行の貞操のために今すぐこの生活を終わらせてくれと頼み込むつもりだったが、それが叶うことはどうやら無さそうだ。
「………」
ぱちりと音を立て携帯電話を閉じると、直ぐにでも生々しい感触が甦る。
色素が欠乏した肌は湯で暖められた所為でほんのりと赤く染まり、上条の腕の中に収まった身体は固く筋張っている割に唇だけは柔らかかった。
肉を押し返すような弾力もきちんとあり、少しだけ震えていた。
「……っ」
今すぐにでも、アレを貪りたい。
力ずくで組み伏せて、上条と言う存在をその身体に刻み込みたい。
そんなことは駄目だ。あいつには帰りを待っている家族が居るのだから。当初の思いのまま彼に休息を与えてやらないと、いけない。
そうすればこれから先もずっと、今までと同じ関係を築けるはずなのだ。
根は同じ『一方通行と共にいたい』と言う想いであるのに、表面化するまでにどうしてここまで違いが出てしまうのだろうか。
どれだけ考えたところで、その答えは現れない。
上条は溜息を吐いて立ち上がると、寝間着に着替えようと自らの服に手を掛けた。

その時。

ドアをノックする、小さな音が部屋に響く。
「っ」
情け無い程に一度身体を強ばらせた上条は、音の方向に視線をやる。返事がないことをどう思ったのか、再び小さな音が響いた。
誰が扉の向こうに居るかなど、考えるまでもない。
緊張で戦慄く腕を鎮まらせながらドアを開ければ、つい今まで上条を焦がしてやまない少年が其処に立っていた。
こうして真正面から視線を交わすのは、どれほど振りだろうか。変わることなく照明を反射する白い髪や肌に見惚れているうちに、柔らかそうな。いや実際に柔らかな唇から吐息が漏れる。
「……」
一方通行は無言のまま、自らの首輪を指で小突いた。気怠げに伏せられた睫も白く光を反射して、彼の頬に陰を落としている。
「あ、あぁ。…入れよ」
その仕草で彼の欲するものを理解した上条は更に広くドアを開け、彼を迎え入れた。
素直に部屋に入った一方通行は、そのまま部屋の中央に設置されているベッドまで歩き、靴を脱いでくたりと身体を横にする。
「……」
ごくり、と。上条の喉が鳴った。
前回の充電は昼間だったので何とか理性を保つことが出来たが、今は夜だ。しかも長時間の充電が必要なので、否が応でも同じベッドで一晩を明かす必要がある。
心臓が跳ね上がったような気がして発作的にその辺りを掻き毟りたくなるが、上条は何とか堪えた。
静かに一方通行との距離を縮めベッドに腰を掛ければ、二人分の体重でぎしりと音が鳴る。
自らの薄汚い感情が漏れないように細心の注意を払いながら彼の首もとに手を伸ばした上条は、小さく声を掛けた。
「切るぞ」
「…あァ」
短い返事だった。カチカチ、と二回ボタンを押し、一方通行から人としての意識を奪った上条は、机の引き出しから電極用の充電器と携帯電話用の充電器を取り出した。
電極の充電が終わった後に、自らの携帯電話を充電しようという算段のためだ。
電極用の充電器を手に取りベッドに戻った上条は、彼が行う三度目の充電を開始する。
「………」
一方通行は目を閉じたまま、微動だにしない。これまでであれば赤ん坊のような譫言を呟き、疲れた頃に意識を落としていたのだが、今日はもう眠りに落ちてしまったらしい。
慣れない生活のためにストレスを抱えているのだろうと気遣いながらも、どす黒い情欲は相変わらず鎮まることはなく。
上条も靴を脱ぎベッドに上がってしまうと、一方通行に覆い被さった。
体重は掛けずに、身体同士が触れ合う面積も最小限に、まるで上条と言う名の檻を作るかのように。
そして、右手で白く柔らかな頬に触れる。
感触を忘れないうちに右手は勝手に滑り、白い肌の中で色づいている唇に触れた。
「……」
真っ白な肌に、真っ赤な唇をして死んだように眠っている。今ここには居ない銀髪の少女が昔図書館で借り、上条の学生寮で読み散らかしていたどこかの童話に、そんな一節があったことを不意に思い出した。
どうしてあの手の話は王子様のキスで目を覚ますのか、不思議に思ったことも、ついでのように思い出す。
一方通行の唇を探る手は止まらなかった。
5日振りの彼の肌の感触が堪らなく心地良く、引くことが名残惜しくて堪らないのだ。
彼に触れている部分からジリジリと侵蝕されるように、上条の熱が上がる。彼は一旦身体を起こし一方通行を仰向けにさせると、大きく息を吐いた。
許されるべきでないことだとは理解しているが、まな板の上の鯉を目の前にして上がり続ける熱を冷ます方法を上条は知らない。
着ていたトレーナーを脱ぎ上半身を肌着だけにすると、少しだけ体重を掛けるようにして一方通行にのし掛かる。
「……」
確かめるように再び一方通行の唇を撫でた彼は、まるで吸い寄せられるように。
三度目の、キスをした。
「……っ、…」
触れ合っている部分からは痺れるような甘い感覚が広がり、至近距離にある一方通行の肌の香りで肺の中全てが満たされる。
荒くなる呼吸と鼓動、口の中を満たすように滲み出る唾液。最早唇だけの触れ合いでは満足出来なくなった彼は、本能のままに滑った舌で一方通行の唇を舐めた。
そのまま割開くように尖らせた舌を割れ目に差し込んだ時だった。
「ンっ!?」
「っ、?」
びくん、と。意識を失っていたはずの一方通行の身体が強ばった。其れだけではない。閉じられていた赤い眼は5日前と同じ、もしくはそれ以上の驚きを湛えながら見開かれたのだ。
その反応には、確実に人の意志が宿っている。
上条が唇を離し距離を開けると、突然の事態に置き去りにされながらも、必死に乱れた呼吸を鎮めようとしている一方通行と視線がぶつかった。
上条の予想通りだ。一方通行の表情は、困惑と驚愕で固まってしまっている。
観察を続けている内に、一度喉を鳴らして空気を飲み込んだ彼から言葉が発された。
「…な、……ン、で」
上条が一方通行からその問いを投げかけられるのは、数回目だ。しかしコレまでのような猫を被った答えはもう存在しない。
緩やかに唇の両端を持ち上げた上条は、出来るだけ穏やかな声で。抱えていた想いを放り出した。

「…俺さ、お前のこと好きみたいだ。一方通行」

どこかで、降り積もった雪が崩れ落ちる音がした。部屋の中は無音のまま、肋骨の内側だけが騒がしい。
一方通行の眼はこれ以上無いほど見開かれて、本当に可愛らしく上条の目に映る。どう返答したものかと戸惑っていることが手に取るように理解でき、微笑ましい。
だからもうどうにでもなれ、と、追い打ちのように上条は言葉を重ねていく。
「……ああそうだ。好きだ、お前のことが、好きなんだ。だからさ、俺にくれよ。お前の全部」
「……っ」
上条がそんな想いで居たことなど、一方通行は爪の先ほども知らなかった。見慣れているはずの黒い瞳は見たことのない色を含んでおり、酷く物騒なモノに見えてしまう。
一方通行は突然の告白にどう返事をしたものかと脳を稼働させるが、なかなか答えは出てきてくれない。
仮に拒絶したとして、残りの40日間をどう過ごせと言うのだ。上条が情欲のままに突き動かないと言う保障が何処にある。
それに、以前交わした約束もある。
この館にいる間は、彼の言うことに従うという、一方的な約束が。
「………」
彼は今になって、自分が上条を試すような真似をしたことを後悔する。前回の充電の際、電極のスイッチを二度押すことで通常モードからオフ状態に移行させていることを知った一方通行は、今日に限っては予め能力使用モードでこの部屋にやってきたのだ。
だから上条が二度スイッチを押せば、通常モードのままに充電されることになる。
彼が意識のない一方通行を前にしてどの様な態度を取るのか。また、どうにか外部と接触する方法がないかと考えた故の行動だった。
結果としては、事態を悪化させただけであったが。
上条は答えを急かすこともなく、言葉を紡ごうとしては口を閉ざす、まるで金魚のような一方通行をずっと眺めている。
受け入れても拒絶しても、一方通行に待っている未来は決まってしまっているのだから、焦る必要がないことを知っているのかも知れない。
「……」
学園都市に戻ると言う最終目標を抱えている一方通行からすれば、上条を刺激しないことが最優先になる。
だが一方通行が上条に恋愛感情を抱いているかと言えば、残念ながら答えはノーに決まっていた。
だが、しかし。そうして何度も否定を繰り返すうち、一方通行の脳裏にほんの少しの負い目が浮かび上がる。
もし、上条の気持ちにもっと早く気付けていたのなら。もしくは、電極を切って上条の気持ちに気付かない振りを続けていたのなら、彼もこのような言葉を口走らなくとも済んだのではないか、と。
恋慕と言う火薬を抱えていた上条に火を点けてしまったのは、一体誰なのか。
「……」
カタカタと、ガラス窓が揺れている。
恐らく外は猛吹雪なのだろう。
聴覚だけでそう判断しながら、長い沈黙の後、一方通行は言葉を吐いた。

「……好きに、すりゃァ良ィ。……俺ァ、止めねェ、から」

上条の気持ちに対しては曖昧な。しかし上条の欲には確実に応えている言葉だった。
その意味を理解した彼は再度唾液を飲み込むと、身体の内側で燻っていた熱を表に出すことにする。
「そう、か」
短い返答の後、上条は噛みつくようにして4度目のキスをした。受け入れる覚悟が出来た一方通行の身体が強ばることはない。
先程の焼き直しのように舌で唇を割り開くと、固く、つるんとした歯の表面を撫でた。
「っ、ン」
小さな呻きを漏らしても上条の動きは止まらない。視線の置き場所に迷ったまま眼を閉じれば、温かな手が服の隙間から侵入してくるのが理解できた。
数日前まで風呂場で行われていたこととそう変わりはない筈なのに、場所が違うだけでこうも感じ方が変わるのか。
酸素が足りない所為で馬鹿なことを考え始めた途端に上条の唇が離れ、今度は一方通行の細い顎先や小さな喉仏をなぞるように舌が這う。
これまで感じたことのない感触に一瞬身を竦ませたが、その愛撫は止まない。吸い付くような肌触りの虜になった上条が薄く肉の付いた喉に甘く噛みつくと、乾いた悲鳴が漏れた。
「ひっ、ァ」
今まで抑えつけていた反動なのだろうか。上条は酷く興奮して、自慰を覚えた猿のようにがっついてしまう。
縞柄のシャツを捲り上げ、可愛らしい色をした器官を指の腹で擦り上げれば、またびくんと身体が跳ねる。
ちゅ、と誰に見せつけるわけでもない鬱血痕を首筋に一つ作り唇を離した上条は、満足げな言葉を吐いた。
「敏感、なんだな」
「……っ」
嘲りがほんの少し含まれた言葉に対し、一方通行は何の返答も出来なかった。刺激の所為で勃ち上がったその場所は、上条に触れられる度に刺すような感覚を脳に訴える。
許可が下りたために遠慮をしない上条の手は、胸の愛撫もそこそこにグレーのパンツに手を掛けた。ファスナーを下げる音が妙に生々しく部屋に響いたが、両名とも今更気に掛けることはない。
パンツを太股辺りまでずり下げた後は、濃いグレーのボクサーパンツをずり下げる。乱暴な手付きで三分もしない内に身体の中心をさらけ出された一方通行の白い頬に、さっと赤みが差した。
「(…可愛い)」
反射的に閉じかける脚の隙間に上条の手が入り込み、それを許さない。電灯の光の下、肉そのものを透かした色の性器が露わになった。
「…………」
それを眼にした上条の欲は、更にヒートアップする。彼自身もパンツと下着を下げて根を露出させると、それは既に固く充血し、先端に先走りを滲ませていた。
「っ、ヒ」
一方通行がグロテスクなその形を知らなかったわけではない。それを自らに向けられていると言う予想だにしなかった状況に恐怖しているのだ。
男同士の性交時に身体の何処を使うのかも一方通行は知っている。しかし何の下準備も無しに使える場所ではないことも、良く知っていた。
まさか上条は、と身体をびくつかせていれば、それを察した彼が顔を綻ばせる。
「いきなりは入れねぇよ、さすがに」
彼はそのまま、ぐ、と膝を折り曲げさせ、骨と最低限の肉しか付いていない太股の隙間に性器を差し込んだ。一方通行の勃起も何もしていない未熟な性器は、上条の猛りに押しつぶされてしまっている。
これで何をするのかと眼で問えば、答えの代わりに上条の腰がずるりと引かれた。
「っ、ゥ、」
一際高い温度の肉の塊が脚の隙間を前後するのは気持ちが良いものではないが、上条の先走りでぬるついた自らの性器が少しずつ擦られるのは、むず痒い程に気持ちが良い。
ゆっくりと引かれた後に、同じ速さで押し進んでくる。粘液の絡む水音が静かな部屋に響くと、一方通行は羞恥の余り顔を真っ赤に染め上げた。
「ゥっ、ンン、ンゥ」
性器同士がある程度の勢いを保ちながら擦り合わされるようになると、快感と断言できる熱が彼の下腹部を苛み始める。
上条のものより一回りは小さい性器もひくりと鎌首を擡げ始め、包皮に包まれていた筈の先端から先走りを垂らすようになった。
ぬめりの良くなった肉の棒は一方通行の根の付け根や小さな睾丸を突っつくように。もしくは剥き出しになっている敏感な先端を擦るようにピストンを激しい物へと変えて、彼の白い腹に透明な液体を撒き散らしている。
「あ、…くせら、れーた」
上条は熱に浮かされたように、目の前の少年の名前を呼ぶ。
「一方、通行。好き、好きだ。…一方通行」
「……っ、…」
言われている一方通行が羞恥を覚えるほどに余裕のない声で譫言を呟きながら、上条は腰の動きを更に激しいものにする。
汗と粘液で濡れ始めた二人の肌は一定のリズムを刻むようになり、ぶつかる度に音が鳴った。
上条の腰の動きと連動するようにベッドが軋む音も一方通行の鼓膜を揺らし、これ以上無いほどに羞恥を煽る。
「ァ、…あ、ァ、…っ」
一方通行はこれまで、そう言った事とは殆ど無縁の生活を送っていた。だからこうして快楽で脳内を灼かれるのは初めてと言ってもほぼ問題はない。
火傷をしそうな程熱い肉にくちゅ、にゅる、と責められ、先に限界に達したのは一方通行だった。
「あっ、ゥ?い、…な、ンか、ァ、あ、ァっ……っ!!」
切なげな高い声が漏れた直後。びくんと細い背中が浮き上がり、未熟な亀頭の先端から精液がびちゃりと吐き出された。
白い下腹部と上条の根を汚したそれらから香る青臭い匂いが部屋に広がり、何とも甘美な光景が上条の視界に入る。
「……」
「…ン、ふ、…は、ァ、…あっ…ァ……」
羞恥と快楽から顔を真っ赤に染めた彼は、右手で自らの両目を覆った。熱く火照った指先に反射的に浮かんだ涙が付着し、掬われなかった分は静かに頬を伝う。
上条は一方通行の蕩けた顔を見つめながら、これからどう彼を愛そうかを脳内でシミュレーションしていた。



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