それは、普段と何ら変わりない目覚めだった。
後頭部が痛むことと、下腹部に感じる妙な圧迫を除けば、だが。



「おーはよォ。上条くン?」
「…どういう状況だ、おい」
上条が意識を覚醒させると、目の前には彼の恋人である一方通行がいた。ちょうど仰向けに寝かされている彼の腹に跨がるようにしている『彼女』は、普段のような特徴的な服では無く。
本来の用途から逸脱したとしか考えられないような丈。それに過剰なフリルを追加されたエプロンを着用していた。
正しく言えば、エプロンのみをだ。
「…何だ、折角カノジョが裸エプロンで乗っかってンのによォ。嬉しくねェのか」
「嬉しいっちゃ嬉しいけどその前に確認させてください!何してんだよお前は!?つーか見えてる!色んな物が見えてる!」
エプロン自体が薄く、透け感のある素材で作られており。更に言えば一方通行は下着を付けていなかった。つまり普段は電気を消さなければ見せて貰えない場所が、今は堂々とLED灯の下に晒されているわけだ。
その痴態に顔を真っ赤に染めた上条が顔を背ければ、一方通行は両手で彼の頭をがっしりと掴み視線を彼女へと向かせる。
上条からの問いに対し、真摯な表情を浮かべながらの言葉が返ってきた。
「あー…、なンだ。花嫁修行ってのをしてみよォと思ったンだが」
「…おう」
「考えてみりゃァ、炊事、掃除やらの家事一般はオマエがやってンだろ?」
「まぁ慣れてるからな」
「ンで、他に俺がしてやれることっつったら、金かセックスしか無ェって結論に達してだ」
「その理屈おかしくねぇ!?」
学園都市第一位が導き出す方程式の中間が、上条には理解することが出来なかった。散々に突っ込んでは見るものの、一方通行はしらりとした表情で言葉を続けていく。
「金はまた次ン時に置いておく。…後はオマエの好みを洗って、俺がそれに対応出来るよォにすれば対等っつゥ訳だ」
「……」
駄目だこの人他人の話聞いてない。
上条が兎に角事態の収拾を図ろうと手を動かそうとした瞬間、ぎちりと何かが軋む音がした。
おそるおそると言わんばかりの態度でそちらに目線を送れば、医療用テープが滅茶苦茶に巻かれ、拘束されている自らの腕が見える。手自体はフリーだが、肘から手首まではぴったり両腕がくっつくように固定されている。
「無駄な抵抗はするなよ。…去勢されてェなら話は別だが」
物騒な感情を宿した赤い眼が至近距離で見つめてくるので、上条は自らの中心が縮こまるような錯覚を抱く。
その表情に満足げな笑みを浮かべた一方通行は上条の腹の上でのそりと体勢を整え、彼の衣服に手を掛けた。
寝間着のTシャツをぺろりとめくり上げれば、年相応の引き締まった胴体が露わになる。白く細い指で、薄い皮膚と皮下脂肪に覆われた筋肉をなぞるように触れた一方通行は、酷く楽しげだ。
「……っ」
その触れ方がやけに優しく愛情に満ち溢れていることを感じた彼は何故か気恥ずかしくなり。首を動かして周りの様子を確認することで意識を逸らそうと努めてみる。
やたらスプリングの効いているベッドに、周囲のインテリアはピンクやクリームと言った暖色系で統一されていた。
どう見ても、学生寮ではない。
他に得られる情報はないかと上条が更に首を動かした時だった。不機嫌そうな声が、彼の鼓膜を揺らす。
「何余所見してやがる」
「んっ?!」
一方通行の指が、上条の乳首を抓み上げたのだ。
思わず飛び出した間抜けな声に、上条の顔が赤く染まる。抓んだ方はと言えば、とても愉しそうに笑う。
「き、ひ。面白ェ。オマエがいつも俺に可愛いとかほざく理由、少しは解った」
もっと声を出せと言わんばかりに。一方通行は上体を倒すと、上条の乳首に舌を這わせた。
小さく濡れた舌に舐められた部分は素直に充血を起こし始め、しこりを感じさせるような硬度を保つ。
「ちょ、…やーめろ、って」
「ンだァ?良くねェのか」
「いや、どっちかってーとだな、くすぐったい、んだよ」
一方通行の柔らかな髪が。耳の後ろから首まで続いている黒いコードが。ましてや、上条を舐める彼女の舌が。
一番最初こそ不意を突かれた為に妙な声を上げてしまった上条だったが、その刺激に慣れてしまえば、ただこそばゆさだけが残ったのだ。
その事実が気に入らないのか、一方通行は舌打ちをしてむくりと身体を起こす。
距離が開くことで再び白い裸体が上条の眼に飛び込んでくるので、否が応でも身体は反応した。
ちょうど、たった今。彼女が座り込んでいる部分。
血液が集まり始め、硬さを持ち始め。
「なンだ、こっちのが良ィのか」
結果として、下着を付けていない一方通行の柔らかな尻の肉に、堅く熱いモノが当たっていた。
彼女が挑発するように腰を揺らして擦り付ければ、欲を見透かされた上条の頬の赤みが増す。
「……ン」
一方通行はそんな上条の都合など全く気にせず、身体の向きを変え彼の下肢に手を伸ばした。Tシャツの下はトランクス一枚だったので、それも慣れた手付きで剥ぎ取ってしまう。
「……」
ああ、天井の照明が眩しい。一方通行がいつも電気消せって言うの解る気がする。
上条は下半身を丸裸にされた羞恥から逃げるように、どうでもいい情報に没頭した。
しかし、鋭い刺激がそれの邪魔をする。
「…、まだ半勃ちか」
「………!!」
一方通行が相変わらず愉しそうな笑みを浮かべながら、上条の根をやわやわと扱き始めたのだ。
天井を向いていた上条がその刺激に息を詰まらせ自らの下腹部に視線を向けるが、根の状態を確認することはできない。
代わりに、一方通行の真っ白な臀部が視界を覆った。
「仕方ねェ」
呆れているようで、しかし嬉しそうな色が混じった声。上条が止める間もなく彼女は再び上体を倒し。四つん這いになるような体勢で、彼の根に舌を這わせた。
「…ちょ…!」
びく、と。大きく身体が跳ねたことを感じた一方通行は、制止の声も聴かずに根を口に含む。
柔らかな唇と舌の感触。それと彼女が体勢を変えたことで晒された、つるりとした割れ目。そして極めつけは、割れ目から延びている小さなコード。
「(………!?)」
低く小さなモーター音を鳴らしながら、それは一方通行の膣内に収まっている。振動の強弱を切り替えるスイッチはと言えば、彼女の白い太股に医療用テープで固定されていた。
口では何だかんだと言いながらも、上条とて思春期の少年なわけで。
そんな光景を眼にして、勃起しないわけがない。
「ン?!…っぐ」
口の中で突然体積を増し始めた根に対し、一方通行は小さく呻き声を上げた。息が詰まらないようにと亀頭を舌で舐め尿道口に吸い付けば、再び上条の身体が跳ねる。
彼はと言えば、普段こう言った行為には消極的な彼女の変貌ぶりに驚きながらも興奮していた。
もしこの手の自由があったなら。
本能の赴くままに一方通行を貪ることが出来たろうに。
酷い好機を逃していることに上条が断腸の思いを抱いていれば、一方通行は根の先端を唇で食み、先走りと自らの唾液を絡ませながら啜る。
ぴちゃ、ずず、と。何ともはしたない水音が部屋に響いた。
「……っ、…」
その。淫らな愛撫がもたらす結果は決まっている。上条の根はヒクつきはじめ、腰の辺りからそわりとした快感が伝わり始める。
「…ちょ、ッヤバ、やば、!……あ、」
呆気なく上条は絶頂に達しようとした。
が。
「なンてなァ」
あと一息と言ったところで、一方通行の唇が離れた。彼女は透明な粘液で塗れている自らの口に自身の右手中指と薬指を突っ込むと、手淫を思わせる動きで粘液を絡ませる。
「たまには、オマエにも泣いてもらわねェと」
一方通行は指を口から出すと、真っ赤に腫れ上がってひくついている上条の根に再び口付けた。そして、その指はと言うと。
「…ちょっ!?そっちは違うから!!上条さんは男の子ですから!!」
「あァ?男だからこっちなンだろォが」
強ばった後孔に、ぬるりと侵入した。
「…いっ……!!?」
上条の目は驚きからか。それとも貫かれた痛みからか、大きく見開かれ薄く涙の膜が張る。
侵入者を排除するためにきつく締め上げてくる孔の入り口を無理矢理広げた一方通行は、何かを探るように奥へと指を潜らせ続けた。その間も上条の根はヒクついており、先端からは先走りを溢れさせている。
「ン、ひひ」
愛しい彼の分身に頬擦りをした一方通行は、再び舌で愛撫しながら腸内を掻き回す。
「い、いってぇっ、から!」
「はァ?ほざいてンじゃねェよ」
抗議のように脚を動かしては見るものの、彼女は一切動じない。それどころか脚を抑えつけ。的確にその場所を見つけ出した。
「…本当だ、っ、…ん、あ?」
後孔をこじ開けられた痛みすら霞むような、初めて感じる感覚が上条を襲う。根から伝わる快感とはまた別の、じわりと腹の奥が熱くなるような。
曖昧ながら快感を得ている証明するかのように先走りの量がどろりと増え、一方通行の舌を汚す。
「ン、まだ痛ェの、か?」
細い指の腹が、こしこしとその部分を擦る。
「――――!!!」
今度こそその部分を責められることを快感だと明確に理解した上条は、まるで処女のように抵抗した。
「ちょ、あ、ほん、とやば、やめ、あっ」
「聞こえねェなァ」
ちゅ、と。一方通行は壊れた蛇口のように先走りを垂れ流す上条の鈴口に舌を這わせ、尖らせた先でほじくるように突く。
腸内の前立腺と、尿道口。それらから得られるモノは十代の少年には強すぎた。
「う、ぁ、う……っ!」
何で彼女に尻を掘られなくてはいけないのか。何でこんなにも気持ちが良いのか。
様々な思考が脳内を駆け回るが、電気が走るような快感が全てを上書きしてしまう。
もう、限界だ。
ガクガクと腰を揺らしながら。せり上がる熱を解放しようとしてはみたが。
「……」
一方通行の左手が上条の根の生え際をそっと抑え、それを阻む。
「……っ…!!」
一度ならず二度までも絶頂を阻まれた上条は、ひゅ、と喉を鳴らした。既に彼の身体は汗で濡れており、その顔は真っ赤に色づいている。
呼吸の度に凹凸を繰り返す上条の腹筋の感触に酔いながら、一方通行は後孔から指を引き抜き。腫れ上がった根から再び口を離した。
ぬるりと引いた糸があったが、彼女が舌なめずりをすれば呆気なく切れてしまう。
「…な、…んで」
どこか呆然と。熱に浮かされた声が届いたので、一方通行は身体を起こし、再び彼へと向き直る。
それからエプロンの裾をめくり上げ、これまで胎内を揺らしていたローターを見せつけるように引き抜いた。
「…何でって、…どォせ出すなら、こっちだろ?」
既に彼女の膣口も、充分すぎるほどに潤っていた。ベッドに膝を付け互いの口周辺を摺り合わせれば、くちくちと濡れた音が響く。
正直上条は、その刺激だけで達してしまうところだった。
しかし彼女の言うことは尤もで。
中で出したいという強い欲が、上条を堪えさせたのだ。
「…ん」
もう観念しよう。上条は素直に頷くと、拘束された腕で自らの顔を隠す。
要は、恥ずかしくて死にそうだったのだ。
「ン、いい子ですねェ。上条くンは」
白い頬に赤みを含ませながら笑う一方通行には、上条のその表情が大変に可愛らしく見えた。
嗜虐の色を隠さないままの笑顔を浮かべたまま、彼女はゆっくりと腰を沈め始める。
張り詰めた笠に狭く熱い肉を掻き分けられる度、彼女はひくりと内部を締め付けた。
最も広がっている頭を飲み込んでしまえば、後は幹だけだ。
上条が悶える様を見届けながら更に腰を落とそうとした一方通行ではあったが。
ここで、思わぬ誤算が起きる。

「……っ…!?」

幹を丁度半分ほど飲み込んだ所で、奥に届いてしまったのだ。それ以上腰を沈めようとしても熱く脈打つ根が子宮口をじわりと圧迫するので、快感が先行し身動きが取れなくなってしまう。
二度も絶頂を阻まれた上条の根が普段以上に膨張していたのか、それとも彼女の『慣らし』が足りなかったのか。
「(…や、べェ……っ)」
中途半端に腰を沈めた体勢のせいで、彼女の細い足がヒクつく。上条は何時までも訪れない完全な挿入に焦れて、一方通行に視線を送った。
「……」
手の隙間から見える彼女の表情に、先程までの余裕は全く見られない。赤い眼を潤ませ、血色の良くなった細い身体を震わせながら上条の根を受け入れる様は、酷く被虐的だった。
「…な、まだ?」
カチリ、と。どこかでスイッチが切り替わるような感覚だった。上条は少しだけ口の端を吊り上げ、彼を受け入れたまま硬直している一方通行に声を掛ける。
「は、…オマエには、これで、充分だ、ろォ…っ?」
言葉の端は、上擦っていた。
余裕がないことを悟られまいと一方通行は腰を揺らして彼を挑発するが、それはもどかしさを与えるだけだ。
絶頂には足りない。しかし膨らんだ欲を鎮めるほど弱いものでもない。
ぬるりとした感触に腰が抜けそうになりながらも、上条はぐっと堪えて彼女と眼を合わせた。
「…いや、もーちょっと、頑張って、欲しい、かなー…?」
「あ、ァ?…遅漏、かよ、オマエ…」
上条の言葉に対抗した一方通行は先程よりも激しく腰を揺らしては見るが。とつとつと亀頭が子宮口をつつく度に背筋に電流が走るので、直ぐに動きは止まってしまう。
無理のある体勢を続けたために細い脚はガクガクと震え、今にも崩れ落ちてしまいそうだ。
「……っ…」
ぎゅっと眼を閉じて耐える姿は淫らで可愛いものだが、余りに無理をさせては可哀想だ。上条は小さく息を吐き、彼女に提案した。
「な、一方通行。コレ取ってくれよ。…そしたら、手伝える、から、な?」
「…ゥ、……ふっ…」
手伝う。この、中途半端な状態から抜け出すことが出来る。
快感のために麻痺し始めた脳を懸命に働かせた一方通行は、震える腕を伸ばしてテープに手を掛けた。
ぴり、べり、と音を立てながら剥がされて行けば行くほど、上条の欲はせり上がってくる。『上条が手伝う』と言うことがどういうことになるのかまでは、残念ながら一方通行は考えられなかった。
「……は、…」
「…ン」
剥がされたテープをくちゃりと丸めた彼女は、小さく息を吐いて自らを落ち着かせようと努力する。
しかし上条はと言えば、真っ赤なテープ痕が残った両腕をそっと伸ばし、一方通行の細い腰を掴む。
そして、彼女が本当に油断しているタイミングで。
「………」
ずん、と沈めさせた。
「…ひ、うァ、ンンンーっ!」
白い身体がびくりと跳ね、漸く訪れた完全な結合で膣内が押し広げられる。限界以上に広げられているような。脳天まで突き上げられような錯覚に陥りながら、一方通行は甘い声を上げた。
「…っ」
きゅうきゅうと吸い尽く胎内の感触に耐えながら、上条は腰から手を離さないままに下から突き上げる。
やけにスプリングの利いたベッドがギシギシと軋むので。その音が一方通行の羞恥に火を点けた。
これでは、泣かされる方が逆だ。
「ンァ、やめ、もっ、う、ゥ」
「だーめ。散々気持ちよくして貰ったからな。…ちゃんとお返ししねぇと」
「うェ、ふ、あ、あァ、ン……っ!」
汗と、その他の体液で濡れた肌がぶつかる度に音がする。腰を掴んで離さない上条の手に白い手が重なるが、状況は改善しなかった。
細く華奢な顎を逸らし首を横に振っても、それは変わらない。
熱に犯された状態では身体のバランスを保つことが出来ず、突き上げる熱から逃げるように身体を前に倒してベッドに手を突く。
「あ、ァは、うィ、い、イ…っ!」
赤い眼が涙を溢れさせながら、訴えるように上条を見る。律動の度に白い髪がふわふわと揺れ、黒いコードがぺちぺちと上条の胸に当たった。
可愛い。非常に、可愛らしい。
火がついた嗜虐心に油を注ぎ込むだけの行動に上条は満足げに笑むと、陰核を擦り上げるようにずりずりと腰を揺らす。
腫れ上がった敏感な部分を刺激された彼女は涙をはらはらと零し、とうとう上条の身体にぺたりと突っ伏す形になった。
「あくせら、れー、た」
「う、ンン、ェ、は、ァっ」
これ以上ない至近距離で響く喘ぎ声は、上条の理性を瓦解させてどうしようもない。
腰を掴む手を離して、代わりに柔らかな尻の肉を掴むと、きゅ、と内部が引き締まる。
名前を呼ばれたことを辛うじて認識した一方通行は、震えながら顔を上げ。唾液で塗れた唇で上条に吸い付いた。
「ンン、ふ、む」
「……ん」
ちゅ、ちゅ、と愛液と先走りの混ざる音が部屋に響き、敏感な肉穴を擦られる度に全身が震えてしまう。
もうその部分のことしか考えられなくなってしまうような、恐怖に似た快感。
唇を離し、呼吸を整えようと努力をしてもだらしない声が漏れるだけだ。
「あー、ァ、あ…っ、ァ――…っ」
文字通りの、泣くような鳴き声。
一方通行が身体をヒクつかせる度に上条の根を締め上げるので、彼とて限界に近づいている。
突き上げを激しいモノに変え膣を抉るほどその限界が目の前に迫り、熱が溜まる。
上条の身体からずり落ちないように細い脚でしっかとしがみつく一方通行も、一刻も早い解放を求めているようで。駄々をこねる子供のように、彼の首筋に頭を擦り付けた。
髪の隙間から見える普段白いはずの耳は真っ赤に染まり、今にも熟れて落ちてしまいそうだ。
それに舌を這わせ、追い打ちのように亀頭で子宮口を突き上げれば。
「う、ゥあ、あ、ああ、…ァ…っ!」
普段からは考えられないほどに甘く高く掠れた声が上条の揺らした直後に、これまでで一番の締め付けが根を襲う。
「……っ…!!」
もう耐える必要はない。
上条は一方通行の尻の肉をぎゅっと掴みながら、溜まりに溜まった白い欲を最奥へと叩き付けた。
「ンっ!…ゥ、…ン……」
迸りを感じた一方通行は、絶頂の為に力が抜けきった身体で全てを受け入れた。
まるで茹でられた蛸のように真っ赤になりながらその余韻に浸っていれば、上条がもぞりと身じろぎをするので。
彼女は小さな声で言葉を零す。
「…ン、重ェ……?」
「ん、いや」
「そォか…」
慣れないことはするモノではない、と上条の上で一方通行がぼんやりと考えている途中で、彼は彼女と繋がったまま身体を起こした。
繋がった場所から未だ止むことのない刺激に彼女が呻くのを聴いた上条は、本当に器用に、流れるような動作で彼女をベッドに押し倒す。
視界を逆転された一方通行は、もうこの行為は終わると思っていた。
視界を逆転した上条は、まだこの行為を続けると思っていた。
「……はァ?…おい」
嫌な予感がした一方通行が上条の身体を押し退けようと手を伸ばしたものの、それは彼の手と絡みベッドに押し付けられた。
「…いや、ほら、上条さんさ、お前に処女奪われちゃったから。…責任取って貰わないと」
こめかみを伝う汗を拭うこともせずに爽やかな笑みを浮かべた上条とは逆に、一方通行の顔がひきつった。
「(……死ぬ)」
誰にも助けを求められないこの状況で、彼女はそっと死を覚悟する。






「なぁ、一方通行」
「ンー…?」
あれから数時間後。
第二ラウンドが終わり意識を落とした彼女が意識を取り戻してから。上条は汗で濡れた彼女を抱き締めながら声を掛ける。
「何で花嫁修行とか言い出したんだよ、いきなり」
「……」
汗を吸ったTシャツもエプロンもベッドの下に無造作に落とされており、今彼らの身体を隠すモノはない。
この状態で嘘を吐くのは無粋だと判断した一方通行は、上条の首筋に頭を当てながら答えを吐く。
「この前オマエの部屋言った時、エロ本見つけちまってなァ」
「…」
ぎくん、と上条の身体が跳ねた。
「ンで土御門に聞いてみりゃ、やれ『男にとって三次元と二次元は別物だ』だの『箸休めみたいなモノだ。気にするな』だの訳の解らねェことを言いやがる」
「……」
「ンで、…あァ、こいつのじゃ無ェのかって解ってから、まァ、何つゥか、……」
一方通行の言葉が止まる。
つまり彼女は、隣人である彼が「いやーすまんですたい。それは俺がカミやんに預かって貰ってたんだにゃー」と言う事を期待していたのだ。
土御門に一切の非はない。むしろ上条の肩を持ってくれた事に対しては感謝の念すら覚えるほどだ。
沈黙のために少しばかりの気まずい時間が訪れるが、上条に言葉を発する権利はない。
彼女の次の言葉は、案外早くに発せられた。
「見るなとは言わねェが、……」
再び、言葉が止まる。抱き締めて居るせいで表情を窺うことが出来ないが、どこか、拗ねているように上条は受け取った。
また暫くの沈黙の後、躊躇い気味に言葉が紡がれる。
「あー、…出来る限り、オマエのしてェことには、応えてやる、…から」
最後まで吐露することに羞恥を覚えたらしい彼女は、それ以上何も言わなかった。
しかし皆まで言われなくとも、彼女が何を言いたいのかくらいは上条にも理解が出来る。
「……!」
嬉しさと。恥ずかしさと。彼女に抱く愛しさの全てを掻き混ぜた彼はくちゃりと笑顔を浮かべると。
一方通行を抱く腕に力を籠めた。










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