意識が自分のものになった瞬間に、有り得ない快感が下半身に宿っていた。
俺はまだ瞼を開けてはいなくて、少し刺激の強すぎる性感に眉をしかめながら、自分の置かれている状況を確認するために瞼を開けた。

そして、俺はまたそこで有り得ない光景を目の当たりにすることになる。
俺の腹の上で誰かが喘いでいた。
物凄く見覚えのある、深く緑がかった色の髪。
俺と違って基が綺麗な金髪なのだから、態々痛め付ける必要なんてないのに、と言っても止めようとしなかった、鮮やかな緑色の髪。
俺の身近でそんな色の髪をしているのは一人しかいない。
しかしその一人と今俺の腹の上で喘いでいる人物とを結びつけようとすると、どうしようもない矛盾点が1つ出来てしまう。

俺の極々身近にいる彼は男性で、
今俺の腹の上で喘いでいるのは女性だった。

「…っ、……ちょ…っ…!!」
慌てて上半身を起こすと、腹の上に乗っていた女性は小さな悲鳴をあげて体を強張らせる。
そのせいで中の肉壁が俺の根元をきゅ、と締め上げながら絡み付いてきて、俺はまたベッドに倒れ悶絶した。
軍を退役してから、約○年が経過している。
その間に愛しい恋人と情事を重ねたのは数えるのも億劫になる回数だが、女性と関係を持ったことはない。
そのせいか、数年ぶりの柔らかくて甘い女性の身体に対し、俺は酷く興奮してしまっていた。
「……っ、…クス…」

頭の中身が全て煮えたぎっていて、理性と言う名前の最後の砦が崩壊しそうな頃に、小さくか細く快楽に苛まれているような声で、名前を呼ばれた。
その声もやはり身近な人物に良く似ていて、可愛らしい。
そうやって名前を呼ばれて、初めてまじまじと女性の顔を眺める。
青というよりも水色に近い瞳。
その瞳と同じ色のピアス。
白い肌を飾り付ける髪と同じ色のフェイスペイント。
その他に例を挙げていったらキリがないほど、その女性は

「……デュエル」

と瓜二つだった。
また、有り得ない、という感情が俺の中に沸き上がってくる。
デュエルは男だ。昨日の夜もきちんと確かめあったから、間違いない。
しかし、今目の前で喘いでいるのも、間違いなくデュエルだ。
どういうことなんだろう、と逆上せそうな脳を一生懸命働かせて結論を得ようとしたときに、不意に唇を柔らかくて熱くてぬるついているものに吸われた。
「…っ…!!」
「っ、…ん…」
快楽が強すぎて締まらなくなった口の端からは、だらしなく涎が垂れている。
最初に唇を重ねて、それから啄むようにキスを繰り返される。
俺が試しに誘うように口を開けると、柔らかく小さな舌が俺のした唇を舐め上げた後、おずおずと入ってきた。

「気持ち、…いいか?…ニク、……ふ」

十二分に舌を絡ませ合い、唇を離すと、透明な糸ができた。
滑舌の悪くなった口から紡ぎ出される甘えるような、縋るような甘い声で名前を呼ばれたとき、頭の中で結論が弾き出された。


これは夢であるから、
好きなようにデュエルを愛してあげようじゃないか、俺。



「…いいよ。…デュエル」

俺の言葉を聞いて、彼女は安堵したように優しく笑う。
身体を今度はゆっくり起こすと、デュエルの耳朶を舐める。
「ぅあっ!」
また細い身体が跳ね、中が絡み合う。
柔らかくなった背中に手を回すと、汗でしっとりとしていた。
「…悪かったな。…今度は俺がする」

白い肌はすっかり上気して、ほんのり桜色に染まっている。
デュエルは俺の言葉に頷いて、嬉しそうに少しだけ目を細めていた。
繋がったまま押し倒すと、たわわに実っていたデュエルの乳房がたぷんと揺れた。
その中心にある乳首も、すでに赤く充血し固くなり存在を主張している。
試しに舌で転がすように、擦り上げる。
試しに乳児のように口に含んで吸い上げる。
デュエルは正直に包み隠さず喘いでくれて、その度に繋がっているところが熱く締め付けられた。
いつもとはまた違うその悦楽の表情を見つめていると、どうしようもなく加虐心が煽られて、それまで緩やかだった腰の動きを性急にしたくなってしまった。
「あ、や、…ニク、っ、…そこ、っ…」
柔らかな肉壁を擦り上げながら1番奥にある子宮口を突き上げると、デュエルがその度に声を上げる。
奥に進む時は異物の侵入を拒むように肉壁を締め付けるくせに、引き抜くときは名残を惜しむように絡み付いてくる。

「ゃ、あ、頭、お、おか、…イカ、れる…っ…」

ただ肌がぶつかり合う音だけだったのに、今はそれに濡れた肉をかき混ぜる音が混ざっている。
デュエルは目を見開き、弱々しく頭を横に振っている。
その仕草と表情がまた可愛らしくて、喘ぐ唇を俺の唇で塞ぐと、細い腰を掴み、また腰を早く動かした。

「…っ!!!」

デュエルはもうこれ以上目を見開くことは出来ないくらい目を開けると、俺の背中に爪を立てて今までに無いほど背中を反らせた。
その途端に中が酷く締め付けられて、デュエルの中に白く濁った精液をたっぷりと放っていた。

「……すっ、…げ…」

唇を離すと、小さく声を漏らす。
汗が一滴、デュエルの身体に滴った。
デュエルは激しすぎる快楽の余韻にまだ浸っていて、光が宿っていない瞳で天井を見つめていた。
お互い荒い呼吸をしながら余韻に浸っていると、デュエルが俺の耳元で小さく呟いた。
俺はそれにまた小さく呟いて答えると、デュエルは微かに微笑んでそのまま眠ってしまった。
それに釣られて、俺もそのまま、意識を手放した。



という所で目が覚めた。
「………あれ」
身体を起こして周りを見渡すが、特に変わったことはない。
隣で眠っているデュエルは、昨夜と同じで、きちんと男だ。
「……夢だったのかよ……」
虚しい結論にたどり着いて、深い溜め息が出る。
それはそうだ、デュエルが女で、しかも俺の上で腰を振っているなんて、そんな美味しいシチュエーションがあるわけがない。
自分の出した結論に少し鬱になりながらも、タバコに火をつける。
一服しながら呆けていると、デュエルがもの凄い勢いで飛び起きて、布団の中を覗き込んで安堵していた。
「どーしたぁ?デュエル」
あまりにも挙動不審な行動に驚いていると、デュエルは俺の顔を見て、今度は顔を真っ赤にしてしまった。
顔だけではない。
耳や首まで真っ赤に染まっていっている。
「おい、デュエル?」
「…な、…なんでも…ねーよ。…朝飯、作ってくる」
デュエルはパンツだけを履いてさっさとベッドから出ると、キッチンへと行ってしまった。
俺は短くなったタバコを灰皿に押し潰すと、簡単に服を着てデュエルの後を追った。






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