「なぁ、背伸びたか?」
ある晴れた秋の昼下がり。
不意に、そんなことを尋ねられた。
「うん。伸びてるよ。順調に」
「へぇ」
「だって俺、鉄火と同い年だし」
当たり前のように言った言葉で、空気が凍る。
デュエルは空き缶を捨てて、早足で歩いていってしまう。俺も慌てて歩くが、歩幅のせいで差は拡がるばかりだ。
「ねぇ、デュエル」
声を掛けても、速度は落ちない。
俺は少し走って、デュエルの前に出る。
「…言ってなかったっけ」
「あぁ、聞いてないな」
「……怒ってる?」
「別に」
見上げて表情を確認するが、明らかに不機嫌だ。
「あのさ」
「?」
デュエルの顎を掴んで、引き寄せる。
俺は少しだけ、踵を浮かせた。
「あと七センチで追い付くから、待っててね」
思い切り不意をついたからか、デュエルは顔まで真っ赤にする。
出逢ってから、五センチ伸びた。
あと七センチなんてちょろいと思う。
多分。
というか、伸びて貰わないと、困る。
エレキ×デュエル
『第三次性徴期』