「あんま目立つとこに残すなよ」
いつものゲーセンの、いつものベンチ。
隣に座った士朗から、諌めるような言葉が漏れた。
「…デュエル、恥ずかしがってたぞ」
「マジで?見たかったな」
「ふざけるな」
「ふざけてねぇし」
士朗の声に少し怒気が含まれていたので、こちらからも同じように返す。
「痕残すのがダメなら、名前でも書きゃいいのか?全身。油性で」
「名前って、…モノじゃないんだぞ。お前のそう言う処、可笑しいよ。歪んでる」
士朗はもう、遠慮無しに酷いことを言ってくる。
「うっせぇな。勝手だろ」
正論を吐かせたとき、士朗の右に出るものは居ない。でもこんな関係に、正論なんて存在しない。
スタートラインからして、正論から外れてしまっているのだから。
「お前の答えを、俺に押し付けんじゃねぇよ」
正論と言う定規が無ければ、歪んで当たり前だ。
俺はその、歪な愛情しか持ち合わせていないのに、どうやって真っ当に愛せと言うのだろう。
ポケットからキャンディを1つ取り出すと、口に含む。
士朗は横で小さく、溜め息を吐いていた。



ニクス×デュエル
『rule』

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