ほんの、些細な一言だった。
「お前が髪の色抜いたら、どうなるんだろうな」
ほんの思い付きであり、強制力など何もない言葉なのに。
翌日、彼は鮮やかな緑色だった髪を惜しげもなく真っ白にした。
それから数日後のことだ。
「このピアス、お前に似合いそうだな」
指された先にあったのは、酷く太いピアスだった。
今、俺の耳に開いている穴には到底入りそうにない。
恐らく彼は先日の俺がそうであったように、ほんの思い付きで口走ったのだろう。
強制力など何もないその言葉に俺は反応して、彼が違うものを見ている隙に件のピアスを購入し、穴の拡張に勤しんでいた。
その数日後、やっと入るようになったピアスを耳に取り付けて、逢う。
「なぁニクス、そのピアス」
驚きを隠せない様子のデュエルの言葉を遮って、笑う。
「勘違いすんなよ。コレ、俺も気に入っただけだ」
無理矢理拡張した穴から伝わってくる鈍い痛みに耐えながら、指先でピアスを揺らした。
恐らくは数日前の彼と同じ様に。
好きな奴の為に、多少の無理をしてみたい年頃なのだ。
ニクス×デュエル
「愛の賛歌」