単純に、不幸だと思った。

まずなぜこのような事態に陥ったのかと言えば簡単で、鍵を掛け忘れてしまったからであり。
同居しているシスターが、諸事情により今日から一週間家を空けることになったので突然の自由な時間と空間を手に入れた俺は、溜まっていたものを解消しようと箱ティッシュとノートパソコンを用意した。
インターネットというものは酷く便利で、レンタルビデオ店では年齢的な事情で断られてしまう内容の作品も簡単に手に入れることが出来る。
そして居候であるインデックスは、電子機器の取り扱いが壊滅的に駄目だった。
ので。
デスクトップに堂々とそういった動画を置いていても、タイトルさえ変えておけば怪しまれることは無い。
久々に役目を果たすことになったその動画を再生し、ズボンと下着を少し下げ準備を整えると、自慰行為を開始した。
前回そう言ったことを行ってから大分時間が空いていたので、些細な刺激でも十分に興奮する。
柔らかく萎びていたそれは固くなり、先走りを先端から垂らし始めた。
動画内の展開も佳境に入り、さぁこれからフィニッシュを迎えましょうといったところで。

背後で足音がした。

「……何してンだ?」
「………ぁ」
もう一度言う。
単純に、不幸だと思った。
ぎぎぎ、と硬い動きで視線を後ろにやれば、友人である一方通行がコンビニ袋を左手に提げて立っている。
そして普段幻想を殺している俺の右手は、股間から溢れる自らの遺伝子を殺していた。
「……っ!!!!!」
俺はあまりの状況に頭が回らずに、ノートパソコンの電源を落とすと大慌てで下半身をコタツに潜り込ませた。
それから、臍に付きそうなほど反り返ったものを無理やり下着の中に押し込んで、熱が収まるのを待つ。
何となく事情を察したらしい彼は、少しだけ申し訳なさそうな声色で言葉を吐いた。
「…邪魔したな」
「いや、あの、…何か用か?」
「近く通りがかったからよォ、一緒に飲もォかと思って」
かさ、と音を鳴らしてノートパソコンの隣に置かれたコンビニ袋の中には、缶コーヒーが大量に詰め込まれていた。
ご丁寧に、各銘柄2本ずつ。
「と、とりあえず座れよ。立ってるの辛いだろ」
「あァ」
勧められるがままに腰を下ろした彼は、ベッド側に面しているコタツ布団の中に足を潜り込ませる。
外からの冷えた空気がコタツの中に入り込んだが、ずくずくと疼く下半身の熱を冷ましてくれそうには無い。
ほんの少しだけ心に余裕を取り戻すと、一気に羞恥心が燃え上がった。
なぜ彼は帰らないのだろうか。
あれか。一種の焦らしプレイなのか。というか俺の弱みを握って何かするつもりなのだろうか。
顔が熱くなり、まともに一方通行の顔を見ることが出来ない。
「………」
「…………」
部屋の中に、気まずい沈黙が訪れる。テレビは点いていないので、電化製品の静かなモーター音のみが部屋に響く。
一方通行は袋から缶コーヒーを一本取り出すと、タブを開けて静かに口に含み出した。
俺も一本貰い、タブを開ける。一口飲もうとしたところで、部屋に彼の声が響いた。
「…辛くねェ?」
「……そりゃあ、まぁ」
ただ、態々夜に尋ねてきてくれた友人をほったらかして自慰行為に耽るなどということが出来るわけがない。
「ほっといたら萎えるから、お前は気にすんなよ」
前屈みになりながら言われても説得力の欠片もない。
一方通行もそう感じたのだろう。
少し大きさを抑えた声で、静かに尋ねてきた。
「…手伝ってやろォか」
「え」
「オマエにはでけェ借りがあるンだよ。穴ァ貸してやるからさっさと脱げ」
「いや、えぇ?!」
飲み終わった缶をテーブルに置いた彼は、酷く男らしい発言をして俺を真っ直ぐに見据えてくる。
というか、穴を貸すだの手伝うだの、友人に言う言葉ではないと思う。
「いや、あのですね。お気持ちは嬉しいんですけど」
「ウジウジしてンなよ。うぜェ」
一方通行は立ち上がると、潔くジャケットとニットを脱ぎ捨てていく。
白い肌が否応なしに視界に飛び込んでくるので、同性とわかっていても目を背けてしまう。
そして見覚えのある縞柄の服の上に、見慣れないものがさらにぱさりと脱ぎ捨てられた。

左右で対になっていて、たしかその部分にはワイヤーが入っていて、というような下着。

「はぁ!?」
思わず視線を上にやると、本当に微かではあるが膨らんだ乳房をはっきりと目に焼き付けることが出来た。
それから彼?は細身のパンツにも手を掛けて、下着一枚になってしまう。
その最後の一枚もほぼ全て真っ白なレースで出来ている、卑猥且つ清純なものだった。
股間にあるべきの膨らみも、ない。
「…お前、女?」
「今更何言ってンだ」
一方通行は当たり前のような顔をして、首の電極を操作したかと思うと俺の左腕を思い切り掴む。
「え、あ、おい!!」
ずるずると、そのままコタツの中から引きずり出された。
そして俺をベッドの上に貼り付ける事で目的を達成したらしい彼女は、また電極を操作して俺の股間をその細い指で撫でていた。
突然の状況に脳の処理が追いつかないものの、下半身は素直に反応してしまう。
というか下着一枚の異性が馬乗りになっているという今の状況で、興奮しないわけがない。
「ガッチガチじゃねェか」
「…っ、…ちょ」
下着の上から、まるで形を確かめるように軽く押さえつけられる。他人に触られたことがないその場所は、素直に嬉し涙を流していた。
下着の中にするりと指が進入してくれば、粘液が彼女の指に絡みついて卑猥な音を立てる。
竿を根元から先端までゆっくりと扱き上げた後、先端を指の腹で撫でられた。
「…ぁ、う」
「……」
脳内で、理性と本能がぐるぐると駆け巡る。
目の前の彼女は確かに友人で、先ほどまで俺は同性だと思っていて。
いきなりそんな対象としては見られないはずなのに、下半身からの熱がそんな常識をぶち壊す。
相手が良いと言っているのだから、好きにしてしまえばいいじゃないか。と。
恐る恐る、腹の上に載っている彼女の太腿を触る。
吸い付くような肌、という形容詞がぴったりと当てはまるような触り心地だった。
少し、汗をかいているのだろうか。
「なぁ、…もっと触って、いいか?」
「どォぞ」
太腿を撫でていた手を、一方通行の腰へと伸ばす。折れてしまいそうな、最低限の肉しか付いていない細い腰だ。
そろそろと、手を上に上に伸ばしていくと彼女の身体が少し強張った。
それが更に俺の本能を刺激して、呼吸が荒くなるのを自覚する。
彼女の手は止まっていて、素直に俺の下手くそな愛撫に身を任せているような状態だ。
引き返すなら、今のうちだというのに。
「……ン、」
抑えたような彼女の喘ぎ声が耳に届いた瞬間、その華奢な体を抱き寄せてベッドに押し付けた。
細く柔らかい髪がはらりと俺の枕に落ち、少し驚いたように赤い眼が見開かれる。
相手が異性だとわかった瞬間にあっさりと友情をかなぐり捨ててしまった自分に対して嫌悪感が湧くが、身体の動きは止められない。
「…な、ホントに良いんだな?今更ダメとか、なしだからな」
きっと今の俺は、本当に醜い表情を浮かべているのだと思う。
恋愛感情という前段階をすっ飛ばして、ただ彼女の中で欲を発散したいとしか考えられないのだから。
「…別に」
低く落ち着いた声で、彼女は一度区切ってから言葉を続ける。
「オマエになら、何されても良ィ」
赤い眼がまっすぐに俺を貫いてくるので、それを正面から受け止めた。
ごくり、と音を鳴らして唾液を飲み込むと、彼女の胸に舌を這わせる。微かな汗の味が、舌に残った。
なぜ今まで気付かなかったのだろうか、と思う。
この汗の香りも、身体つきも、男性ではあり得る筈が無いというのに。
赤子のように胸の先端に吸い付いて微かに歯を立てると、一方通行が声を上げる。
「…悪い、痛かったか?」
口から離して彼女の顔を見ると、少し紅潮していた。
もともとの肌の色が白いため、微かな変化でもすぐにわかる。
「…良ィ。痛くは、ねェ」
彼女が首を横に振れば、ふわふわとした柔らかそうな髪も揺れた。
「そうか」
一方通行の言葉に安堵してから、また同じように胸を愛撫する。男性とは全く違う、壊してしまいそうなほど薄く柔らかい身体だ。
好きにしていい、なんて言われたら、我慢出来る自信がなくなってしまう。
触っても触っても、触り足りることは無い。
手の中に包み込むように。
かき集めるように。
上に。下に。
時々人差し指で胸の先端をぎゅ、と押し込むと、一方通行の背中が反った。
「(強くしすぎたかな)」
無駄な言葉を発する余裕も無く、脳内で結論付けて少し手の力を弱めた。
「は、…ァ…っ」
静かに息を吐く一方通行は、酷く淫らだった。
体温が先ほどより上がっていて、しっとりとしたなんともいえない甘い香りが鼻を擽る。
本当にそんな香りが存在しているのかはわからないけれど、それはただひたすらに俺を興奮させた。
胸の次は、と回転の鈍い頭を働かせると、彼女の下腹部へと手を伸ばす。
ひんやりとした肌が指に触れると、尚更に体温が上がる。
やがて下着に指が届いたので、中へとゆっくり侵入させた。
「…ァ、…っ!」
本当に小さな、声にならない悲鳴が一方通行の口から漏れる。
身体は少し強ばったものの、拒絶の意志は感じられない。
「…、」
出来るだけ優しく、と思いながらも、実践できる自信がない。
指をそっと這わせ、じっくりと感触を楽しんだ。
「(…てか、生えてねえ)」
先程触れた太股と同様に、局部付近の肌は滑らかで柔らかい。
それから。
彼女の、本当に身体の中心と言える場所に指を伸ばした。
その場所は、水気なんて無いベッドの上にも関わらず。
ぬるりとした何かで濡れていた。
「……!」
これが、そう言うことなのか、と。
頭の中で知識としてのみあったモノが現実と一致する。
指先に感じる濡れた肉の感触が愉しくて、態と空気を含ませるように指を動かした。
「ァ、う、っ、ひ」
一方通行は性器を好き勝手に弄ばれているというのに、相変わらず何の抵抗もしてこない。
白く細い喉から殺しきれない喘ぎを漏らしながら、枕を強く掴んでいた。
「…、」
ぬるついて指先に絡みついてくる肉の中に、確かに堅い感触が感じられる。
脳内のエロ知識を総動員してそれが何かを察すると、指の腹でなぞるように優しく触れた。
「…っ、ひ!!」
びく、と一方通行の背中が浮き、細い太腿が俺の手を挟み込む。
「ン、だ、…それ、ェ…っ!」
「…はは、すげー濡れてきた」
顔を真っ赤にして、赤い眼を涙で濡らしながらそんなことを言う癖に、抵抗はしてこない。
だから敢えて、羞恥心を煽るような言葉を使った。
「……っ、!!!」
案の定、こちらを射殺さんばかりの目つきで睨んできたが、恐怖は感じない。
むしろ、もっと下卑た感情が沸き上がってくる。
「すげぇな。ぐちゅぐちゅ言ってる」
指先を滅茶苦茶に動かして、その小さなシコリを散々に苛め抜くと。
一方通行の太腿が、ふるふると震えだした。
「…ゃ、はっ、ァっ、…〜っ!!」
切ない声が途切れ途切れに鼓膜に飛び込んでくる。それから数分もしないうちに一方通行の身体は大きく跳ねて、脱力した。
指先に感じていた滑りを、尚更に酷いモノにして。
「………」
「!?、だっ、今、ソコ、イッ…!!」
更に触ったらどうなるのかと言う単純な疑問から愛撫を続行しようとすると、初めて彼女から制止の声が発せられた。
枕を掴んでいた華奢な手が、俺の右手に重ねられる。
「アタマ、…おか、しく、なる、から」
最後まで言葉には出さなかったが、止めろと言うことで間違いないだろう。
ここは素直に従おうと思い下着から手を引くと、指先にはぬるりとした粘液が付着していた。
「……っ、…!」
僅かばかりに残っていた理性が、吹き飛ぶような気がする。
性欲というどうしようもない衝動に浮かされながら、乱暴と思われない程度の雑な動きで一方通行の下着を下ろすと、ぐ、と股をこじ開けた。それから直ぐに俺も下着を脱いで性器を露出させ、彼女の濡れている肉に擦り付ける。
「!!待、てっ!」


一方通行の言葉に従いたいのに、身体が言うことを聴いてくれない。
半ば無理矢理に狭い入り口に押し当てると、そのまま一気に腰を押し進めた。
「ヒ…っ、…!!!」
部屋の照明を落とさなかったせいで、いきなりの挿入に戸惑う一方通行の表情が良くわかった。
表面が充分過ぎるほど濡れているからと言って中もそうだとは限らない、と言うことを身を以て実感する。
「…ィ、て…っ、いだ、…ァ…」
「も、ちょ…力抜けって」
茎を半分ほど飲み込ませところで、中の締め付けがキツくなり行為を続行することが困難になった。
本能的に痛みから逃げようとする一方通行の腰を掴んでほぼ無理矢理ねじ込むと、彼女の紅い眼から涙が溢れる。
「ぎっ!?」
「…っ、はー…」
根元までしっかりと結合すると、一度大きく息を吐いた。
ひくひくと、一方通行の中が締め付けてくる。異物を排除しようとしているのか、それとも孕ませろと懇願しているのかは、判らないけれども。
「(…すっげー気持ちいい…)」
自らの右手以外で刺激を与えられたことの無い性器は、早く欲を発散させたいとひくつく。
が、流石に、まだ早い。
ず、と腰を退くと、腹の下で一方通行が仰け反った。
「…っ、か…み……じょ」
「んー?」
一方通行は枕を握り締めていた手を離し、その代わり弱々しく俺のTシャツを握り締めた。
ふるふると、震えているのが判る。
「…っ、だ、…動くンじゃねェぞ」
短く浅い呼吸を繰り返しながら、彼女は痛みに耐えているようだった。
流石にいきなり挿入するのは無謀だったか、と目線を結合している下腹部に向けると。

赤い液体が一方通行の愛液と混ざり、ベッドに垂れていた。

「ぇ、あ、もしかして」
「…それ、以上ォ、言った、ら…殺す…っ」
ぎちぎちと彼女の爪が背中に食い込んだので、反射的に背中が反る。
「っ、ひ」
不意の動きで一方通行の中を刺激してしまい、また悲鳴が零れた。
まさか、処女だとは思わなかった。
「(だって穴貸すとか服脱ぎ出すとかいきなりそんなことする奴が処女だなんて思うわけねえしってか俺何言い訳してんだよおおおお!)」
無言のまま脳内で色々と葛藤をしていると、またTシャツが引っ張られる。
目線をやれば、先程よりは呼吸を落ち着かせた彼女と目があった。
「…も、…動いて、いィ」
その、細く柔らかい髪を汗で額に貼り付かせながら訴えてくる一方通行は、酷く可愛らしく見えた。
「ん」
短く返事をしてから、ゆっくりと腰を退いた。
彼女の中に収まっていた茎が、ずりずりと内側を擦り上げながら露出する。
「ァ、ひ、――――っ」
抜かないで、とでも言いたげに内側の肉が絡みついてくる。
性器の、一番括れている場所まで引き抜くと、また一気に根元まで飲み込ませた。
「ンっ!?」
ゆっくり優しく抜いて、早く乱暴に突き上げる。この動きには別に彼女を気遣う意図などは含まれていない。
結合しているという実感を、俺が得るためだけの、動き。
「う、ァ、あっ」
律動のコツを何となく掴むと、一連の動きのスピードを上げた。
結合部分の濡れた音と、二人分の体重で悲鳴を上げるベッドの軋む音が、部屋に響く。
「………っ、…」
「や、ゥ、はや、も、っと、ゆっ…―!」
彼女の言葉に応える余裕が、今の俺には存在しない。ただ本能に従って、彼女の身体を貪っていく。
「ィ、ひ、…!!」
何度目か判らなくなるほど一番奥を突き上げたとき、一方通行は一際大きく身体を震わせた。
きゅ、と、中の締め付けがキツくなり、射精が誘発される。
「……、く…!」
白く、粘ついた遺伝子の塊が一方通行の中を侵していく。体中の熱を注ぎ込んだ気分だった。
「……っ、ふ、はァ」
色気のある息を吐いた一方通行の髪を撫で、思い切りのし掛かる。
全身を、心地よい疲労感が包んでいた。
「…さっさと、抜け。…っの、クソ、野郎…」
少し呼吸が落ち着いたところで、彼女から恨めしげにそのような言葉が投げ掛けられた。
「あ、あぁ」
言われるが侭に身体を起こして腰を退くと、またあの脳を痺れさせる快感が背筋を走る。
流石に自重しようと考えては見たのだが。
俺と同じようにまだ冷め切らない快感の為に身を捩らせた一方通行の表情を見て、そんな考えは吹き飛んだ。
「…いや、まだ」
「……は?」
繋がったまま彼女を俯せにさせると、抜きかけていた肉の茎を再び根元まで押し込んだ。
「ひ、ぎっ!!」
ぶぢゅ、と。色々な粘液と空気が混ざった下品な音が部屋に響く。
先程より随分と動きやすくなった一方通行の中を擦り上げながら、その白い背中を撫でた。
「はは、すっげ。さっきと、全然、違う」
体位が変わることで、締め付けも亀頭に当たる肉の感触も、全て変わる。
「ァ、あ"、ァ、っ?!」
悲鳴のような一方通行の喘ぎ声を聞くと、更に下半身に血が集まるような気がした。
そっと彼女の股間に手を伸ばし、先程まで愛撫していた肉芽を指で転がすと、更に卑猥な声が漏れる。
「…ほら、あんま声でかいと、隣に聞こえるぞ?」
変なエロ漫画であるようなセリフを、まさかこの口から発することになろうとは。
身体を密着させ、耳元で囁くと一方通行は震える手で口を塞ぐ。
きゅう、と、中の締め付けが強くなったので、此方も興奮してしまう。
先程と同じように突き上げながら肉芽を触れば、細い腰がガクガクと揺れ、繋がっている場所から粘液が垂れる。
表情こそ見えなかったが、きっと可愛らしい顔をしているに違いない。
真っ赤になっている耳を舐めれば、更に甘い声が漏れた。
「あ、ァ、い、もォ、…っ、く」
彼女の首が弱々しく左右に振られるが、ペースダウンをする気など起きない。
単調な動きで一方通行は追い詰められ、
「…っ、ふ…ぐ、!!」
声をかみ殺して達した。
じわ、と指と下半身に感じる水分に興奮を覚え、絶頂の締め付けでは欲を吐き出さなかった肉茎を更に深くへと潜り込ませる。
「ンっ、ひ、なん、れ」
「ごめん、俺も、もーちょい、だから」
「ゥ、あ、〜〜〜っ!」
ぐりぐりと一番奥へねじ込めば、肉壁とはまた違う感触が亀頭を襲う。
敢えてその場所を突き上げれば、一方通行からまた声が漏れ、肉壁がきつく締め上げてくる。
その刺激が余りにも強すぎて、我慢が出来そうにない。
「……っ、!」
下半身にせり上がってきた粘液を、躊躇うことなく一方通行の中に吐き出す。
「ァ、…っ、…」
俺の律動が止まったことの意味を、彼女は理解したらしい。
口から手を離し、微かな音を立てて枕に頭を投げ出した。
やがて長い射精が止まると、俺はぬるりと茎を引き抜く。抑えていた栓を失った精液は、静かに逆流して一方通行の内股を汚していた。
そして、その淫ら過ぎる光景を見て今更気付く。
「(…お、思いっきり、中に……)」
性的な行為をするなら責任の取れる人間にならなければいけないのですよー、と、担任が言っていた言葉を思い出す。
そんな俺の焦りを知ってか知らずか。
「…終、わっ、た…か?」
枕に顔を埋め、今にも眠りに落ちてしまいそうなほどの弱々しい声が部屋に響く。
「お、おう」
「……そォ、か」
俺の言葉を聞いた一方通行は弱々しく手を突いて身体を起こすと、「帰る」とだけ呟いた。
「え?!無理すんなって、泊まってけよ」
「…うるせェ。帰るっつったら帰るンだよ。風呂貸せ」
「あ、歩けるか?風呂場まで抱えて…」
「必要ねェ」
俺からの申し出を一切拒否した一方通行は、杖を突いてよろつきながら浴室へと消え。
きっかり15分後にこびり付いた汚れを綺麗サッパリ落とした状態で浴室から戻ってきた。
「…………」
「………」
無言。
ひたすら無言のまま、一方通行は脱ぎ散らかした服を着込んでいく。
処女をこんな形で奪ってしまったこと。
中に大量に射精してしまったこと。
体力の無い彼女に色々無理強いさせてしまったこと。
額を床に擦り付けて謝らなければならないことを山ほどしてしまった訳なのだが、一方通行は何も責めてこない。
やがて訪ねてきた時と同じ服装になった彼女は、何の惜しげもなさそうに玄関まで歩いていく。
「お、おい!」
慌ててジャージを履き一方通行を追いかけると、その細い腕を掴む。
彼女はこちらを振り向くこともなく腕を振り解くと、静かな声で呟いた。

「…良ィか。これだけは覚えとけ」
す、と。静かな呼吸が一つ。

「今日のことは誰にも言わねェし、明日から俺達の何かが変わるわけでもねェ」

勘違いするなよ、と言わんばかりの。
心臓に釘を打つような、距離のある言葉を残した彼女は、そのまま玄関のドアを開けて去ってしまった。
「………」
部屋に残っている彼女の名残と言えば、缶コーヒーとベッドの上の血痕くらいだろうか。
明日洗濯しなきゃな、等という所帯じみたことを考えながらベッドに横になる。
ついさっきまでこのスペースを二人で共有していたからだろう、やたらと広く感じられた。
そして感じる、自分以外の身体のニオイ。
「(……甘い)」
すぐに脳内で情事が再生されて、身体もそれに反応する。
全く無関係な数式を頭の中に並べ熱を冷まそうと努力をしてみるが、効果は見られない。
不幸だ、と言うか。

「…最悪だ」

勘違いなんて、しない訳がない。
今までと同じ通りになんて、出来るわけがない。

静かな部屋で、1人。
彼女への想いを馳せた。







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