目が覚めると、そこには何とも言えない光景が広がっていた。

「あーもう、一方通行のせいで起きちゃっただろ」
「…っ、…ンなころ、いわれれも…ォっ…」
「悪いな浜面、こいつ声大きくて」
確か今日は、男三人で上条の学生寮に泊まり込んでいた。
そして日付が変わる頃になって、三人仲良く寝付いたはずだ、と浜面は必死に記憶を辿っていた。
「(ていうかお前らナニしてんだよってまぁナニしてんだろうけどいつからそんな関係だったんだよ通りで何となく通じ合っちゃってる感じするわけだ!)」
悶々と、口に出したい言葉が脳の中に溜まっていく。
目の前では、家主の上条ともう一人の友人である一方通行が仲睦まじくコトに及んでいた。一方通行の細すぎる足は上条の腰の辺りに絡みついて、繋がっている部分部屋の照明が落とされているせいでよく見えなかった。
「ほら、浜面にごめんなさいは?」
「ァ、…はま、づら…」
上条に窘められた一方通行は、零れる喘ぎ声を噛み殺しながら途切れ途切れに名前を呼んでくる。
窓から入る微かな光を受け、彼の目に溜まっている涙が見えた。
「…ご、めン、…ふ、…なさ…っ」
突き上げられているからだろう。彼はまともに喋ることが出来ないようだった。
男二人分の体重を受けてギシギシと音を立てるベッドの揺れが、酷く生々しく浜面の耳に残る。
上条は素直に従った一方通行に満足らしく、チョーカーが取り付けられている首筋に舌を這わせてから、俺にも聞こえるような声で囁いた。
「よしよし、良く言えました。ご褒美に中にたくさん出すからなー」
「…〜、ァ…!!」
一際ベッドが大きく軋み始めたかと思うと、肌と肌がぶつかる音と水音が部屋に響き始めた。
どちらも、先程までは聞こえなかったものだ。
「…だめ、…こ、っわれ…ェ…」
一方通行は背中を反らせ、普段からは考えられないような甘えた声を上げて上条を受け入れていた。
中途半端に服を脱いでいて、確実に男だという部分が見えないからだろうか。
「(……やべぇ)」
二人の痴態から目が離せずにいると、浜面の、男の部分が首を擡げ始めていた。
「ほら、零すなよ。一方通行」
「…ァ…、〜っ…!!」
やがて限界を迎えたらしい上条が、一方通行の中に排泄する。
排泄された側はと言えば、脱力したように荒く呼吸をしていた。快楽の余韻なのか、たまに足がひくついていた。
薄い身体の横隔膜の上下がはっきりとわかるほど、一方通行は呼吸をしていた。
「…かみじょォ……」
「んー?」
少し落ち着いたのか、本日初めて浜面にきちんと聞こえる声が一方通行の喉から発された。
名前を呼ばれた上条の表情は部屋が暗いせいで読み取れなかったが、恐らく優しく笑っているのだろう。
声が、そう物語っている。
「…ォれ、…まだイッてねェンだけどよォ…」
少し恥じらいながら、と言った様子で酷く卑猥な言葉が漏れてくる。それを聴いた上条はまたさっきのような優しい声で、
「じゃあ、浜面に気持ちよくしてもらって来いよ。俺はここで見てるから」
浜面に取って爆弾発言を投げつけた。
「…ェ…?」
「ちょ…!上条!お前何言ってんだよ!」
「浜面うるさい。上条さんちは壁が薄いから気をつけて欲しいんですけど」
上条は顔色一つ変えずに身体を離すと、また一方通行が微かに仰け反った。
それから脱力しっぱなしの彼の身体を腕を掴んで無理矢理起こさせると、浜面目掛けて投げつけるように寄越した。
ベッドから床に敷いている布団に投げ出された一方通行は、微かに震えている。
「…お、おい。大丈夫かよ」
掛け布団を隅へ追いやり、一方通行の様子を窺う。それまで俯いていた彼だが、浜面が肩に手を置いた瞬間に顔を上げた。
ベッドでは見えなかったが、外の照明が射す床ではよく見える。
一方通行の紅い眼は涙を溜めていて。
唇は唾液で濡れていて。
普段体温が低いはずなのに、熱を持ったように火照っていて。
「(うわあああ理性を保て俺えええ滝壺たすけてえええ!!)」
浜面は心の中で絶叫するが、誰にもそれは届かない。
一方通行はゆっくりとした動きで浜面の服を掴むと、そのまま唇を重ねた。
「(うっわ唇やわらけぇっ何か甘い匂いするし…てかごめん滝壺セカンドキスやれなかったよ…)」
「ン…、…〜…っ…」
小さな舌が浜面の唇を舐めて、口を開くように催促してくる。流石にディープキスは、と浜面が抗議しようと微かに口を離して開けた瞬間、押し倒すように倒れ込んできた一方通行に侵入を許してしまった。
「んーっ!んーっ!」
いきなり体重を掛けられたせいで、布団に背中から沈む。
浜面は一方通行の服を掴んで引き剥がそうと試みるが、どこにそんな力が残っていたのか。
一向に、彼と浜面の距離は開かなかった。
その間も一方通行の舌は浜面の口の中を丁寧に愛撫し続け、お互いの口の周りは唾液まみれになっていく。
「キス、上手だろ?俺が教えてやったんだ」
上条は満足そうな声でそんなコメントをすると、ぺちん、と一方通行の臀部を軽く叩いた。
「ほら、早くしないと前みたいにお仕置きするぞ?」
「ン、ァ…、おひおき…は…」
ようやっと唇を離した一方通行は、上条を見ながら切ない声を上げる。にちゃ、と唾液が糸を引いていた。
「だったら、」
「……ン」
唾液まみれの唇を舐めながら、上条へと送っていた視線を浜面に戻す。空いている方の手で浜面の下腹部を触ると、確かに勃起しているモノがあった。
「…な、ひでェ野郎だろォ?…でもよォ、こいつ俺のご主人様だから言うこと聞かなきゃなンねェンだよォ…」
言葉だけを捉えれば嫌々従っているというニュアンスだが、目の前にいる少年は愉しそうに、とろけそうな笑みを浮かべている。
その表情は酷く淫らで、綺麗であって。
浜面の理性の壁に、致命的な罅を入れた。
「いや、でも男同士だし…つか、俺彼女いるし!彼女ともまだなのにお前とそんなことできるかよ!」
此処までくると、行為を拒否する理由まで稚拙なものに聞こえる。
一方通行もそう感じ取ったのだろう。浜面の言葉を拾い上げ、問い返した。
「…彼女ともまだ…てことはオマエ…、どォてェかァ…?」
「…そうだよ!悪いか畜生!」
余計な情報を与えてしまった、と浜面は一瞬後悔する。
しかし忘れてはいけない。
相手は学園都市第一位。
一瞬の隙さえ、彼に与えてはいけなかったのだ。

『ねェはまづら。はまづらのどォてェ、私にくれる?』

不意に、今この場にいない恋人の声が部屋に響いた。
「…〜〜〜!!!」
そして浜面は理解した。
目の前にいる少年は、ベクトルを操作して彼女と同じ声を作り上げたのだ。
「あ、一方通行!!」
『はまづらのここ、もォ固くなってる』
白く細い指が、服の上から浜面を愛撫する。それからすぐに、彼は視界を奪われた。顔の鼻から上に、端に寄せていた掛け布団を被せられたらしい。
「…ちょっ!!」
『気持ち良くしてやるから、中にいっぱい出してね、はまづら』
口調は若干違うものの、声は滝壺そのものだ。
こんな空間は異常だ。
こんな行為は異常だ。
だというのに浜面の性器は確かに反応して、早く遺伝子を誰かの中に注ぎ込みたいと主張していた。
ずる、と服と下着をずらされた後、少しの肌寒さが浜面を襲う。
『…ははっ、…すっげェ……』
衣服の拘束から解放された其れは、持ち主の臍にくっついてしまいそうなほどに反り返っていた。
先端からは、透明な先走りが垂れている。
「良かったな。俺のとどっちが大きい?」
上条は優しい声で、下衆な質問をする。
尋ねられた一方通行は、
『ンなもン、入れてみねェとわかンねェよ』
と下品な返答をした。
浜面はもう、抵抗するだけの精神力を失っていた。
滝壺の声であんなことを言われて、視界を塞がれては、本当に彼女と行為に及んでいると誤解するしか進む道が見つからなかったのだ。
しかしこのままでは、彼女を汚すことにもなる。
『…じゃあ、いただきまァす…』
一方通行は浜面に跨がったまま、ゆっくりと腰を沈めていく。先程まで上条を受け入れていた部分は、少しの抵抗を見せながら浜面を飲み込んでいった。
「……〜、…!!!」
手やそういった玩具とは全く違う感触が浜面を襲う。
暖かくてぬるついていて、微かな動きで締め付けてくる。
『…っ、…すっげェ』
笠の一番広い部分を通過した後は、円筒形のものをひたすら飲み込むだけだ。だというのに、一方通行の腰はなかなか進まなかった。
『…っ、はまづらの…カリ、…ゴリゴリっ…てェ…ンっ!?』
「どした?」
突然甘い声を上げた彼の様子を上条が窺うと、彼の腰をがっちりと掴んでいる浜面の手があった。
「…どうだよ、第一位。いきなり根元までねじ込まれた気分は!」
浜面は繋がったまま身体を起こす。布団は被せていただけだったので、いとも簡単に浜面から滑り落ちた。
「…んっ!?…、あ…!」
「声、元に戻ったじゃねぇか。ケツの中掻き回されちゃ演算も出来ないってか!?」
身体のバランスを崩した彼は、先程の浜面のように背中から布団に沈む。
「…上条。お前は絶対後からぶっとばす。…あとこいつのこと、泣くまでやるからな」
「困ったな、上条さんちは入院費でカツカツなんですが。…良かったな一方通行、締まらなくなったら一緒に病院行こうな」
上条は余裕と言った態度を崩さないまま、にこにこと笑っていた。そして浜面は一方通行の細い足を掴んで無理矢理股を開かせると、無遠慮に突き上げた。
「う、ァっ!」
「悪いな一方通行。俺童貞だから力加減とか何にも知らねぇんだわ」
逃げられないように腰を押さえているせいで、一方通行は与えられる快楽をそのまま受け入れるしかない。
「あ、ンな、強くし、たら、ァ!」
途切れさせながら、首を横に振っている彼の姿からは先程の余裕ぶった雰囲気は感じられない。
「強くしたら何だよ」
「かみ、じょォの、かたち、わかンなく、な、ァ…!」
「そうかよ」
ちら、と上条の様子を窺うと、何やら満足そうな顔をしている。
「ならさっさと忘れちまえ」
「…や、…だめ、っあ…!」
突き上げる速度を速め、彼の性器を指で愛撫する。上条から与えられていた刺激もあったからだろう。
「あ、ァ、…〜〜っ……!!」
ものの数分で一方通行は絶頂に達してしまい、浜面の手には白い粘液が付着した。
「…きったねぇな。ほら、綺麗にしろよ」
粘液が付着した手は、そのまますぐ彼の口の中に突っ込まれた。
「ンぐ、…ふ、」
「あと、俺まだイッてないからな。練習台くらいにはなってくれよ、一方通行」







「…何時まで寝てンだこの三下がァ!」
「ぶっ!?」
突然の衝撃で浜面の目が覚めた。
衝撃というか、布団を凄い勢いで捲られたことによるショックの方が正しいだろう。
「え?あれ?一方通行?お前、俺とエッチしてたんじゃ…」
まだ夢の世界に片足を突っ込んでいる状態だからだろう。浜面は恐ろしい言葉を口走る。
「…誰が、オマエと、ナニしたってェェェえ!?」
鼓膜でしっかりと言葉を受け取った一方通行は、首筋に取り付けられた電極を切り替える。
「勝手に人のことオカズにしてくれてンじゃねェぞ腐れ野郎!!!!」
死なない程度にタコ殴りにしてやろうと言う意識からだろう。彼は浜面の上に馬乗りになり、座って体重を掛ける。
「ばっ!今はヤバいって!」
「…はァ?命乞いなら聴か」
一方通行の、尻の辺り。夢と違って今の彼はトレードマークである縞柄のニットと白いパンツを着用していたが、其れ越しでも確実に伝わる、固く熱い感触。
「…殺す」
「はいはい、上条さんちで刃傷沙汰はやめてください」
浜面の命が消えかかった瞬間、上条がエプロンを付けたまま、右手で一方通行の右腕を掴む。
「…か、上条。…助かった…」
「朝飯出来たから食べようぜ。ほら、一方通行も食器出すの手伝ってくれよ」
「……チッ」
上条の依頼に、一方通行は素直に舌打ちをして立ち上がる。
浜面の意識はようやく覚醒して、先程までの現実が夢であることを認識した。
ただ。
「(…暫くあいつらのことマトモに見れないな…)」
浜面は一人、溜め息を吐いた。






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