悪いことをしているという自覚はある。
ただ理性ではどうにも歯止めが利かない年頃なので、せめて周囲に露呈しないよう気を遣っていることだけは評価してもらいたい。
手配されたホテルの一室で、二台設置されているうち一台のベッドが、派手に軋んでいた。窓の外はまだ夜という時間には早く、西の空が綺麗な朱色に染まっている。
「ぁ、あ、っ! ぐ、んっ」
「……、……」
組み伏せられている少年は枕に顔を埋め何とか声を殺しながら、突き上げてくる熱量に耐えていた。乱れた銀髪の隙間から覗く耳朶が真っ赤に染まっていて、背筋の溝には汗が溜まってしまっている。
引き結んだ唇の隙間からは荒い呼吸と共に唾液が漏れて、本来の役目を果たす前の枕にはいくつものシミが出来た。
本日。彼らはドラマ撮影の為に地方へと出向いていた。
同ユニットの円城寺も含めればプロデューサーも入れて四人となるので、本来であれば出演者一人につき一部屋分の予算があてがわれ、番組側から四部屋手配されるのだが。
残念なことに彼らにはまだそれだけのネームバリューが無いために相部屋となったのだ。
それが普段、致す場所を見つけるのに苦労している年頃の青少年には、非常に都合が良かった。
「ぁ、ぐ、……、っ、はっ」
「……っ」
湿った身体同士のぶつかる音と、粘膜と空気の混ざる下品な音。猛った根を一番奥までねじ込み突き上げると、掠れた悲鳴が漏れる。
大河の腰の高さに合うようにと突き出された腰は律動に合わせて動き、強い快楽からだろう、太股はがくがくと今にも崩れそうなほどに震えていた。
一日分の仕事が終わり、部屋に入った直後に押し倒されたのは大河だが、今、身体を好き勝手にされているのは牙崎の方である。
仕事の関係でほんの一週間ほど間が空いただけでこの有様なので、出来るうちにやっておくべきという理論の元、こうなってしまうのは仕方がないことなのだ。
「ァ、く、ィく、あ、あ、……っ、!」
「……、ん、……」
ひくついている粘膜に締め上げられている根からは快楽がこみ上げて、大河の思考にも靄がかかる。牙崎の引き締まった腰を両手で掴み、最後の追い上げと言わんばかりに律動を激しくしようとした時の、ことだった。

「タケルくん、漣くん、いますかー?」

突然ドアの外から、プロデューサーに呼び掛けられた。
びくっ、と。思い切り身体を強ばらせた二人だが、中途半端に高ぶった熱は簡単に冷めてくれなかった。
ただ、無言のままでは怪しまれると判断した大河が、ぎこちなく言葉を返す。
「……、いるけど。なんか用か?」
「ああ、えーっと、これからの予定なんですけど。漣くんは?」
「…………ね、寝てる! 俺が、後から伝えとく」
実際のところ、牙崎は絶頂する寸前のところでお預けを食らってしまっていたので、それどころではない。
浅ましく腰をくねらせて大河からの熱を求めてきているが、彼はそれに応えない。牙崎の腹の中に収まっている肉塊は相変わらず体積を保ったままで、少し動くだけで良い場所を掠り彼の脳を痺れさせる。
だが決定的な刺激には至らないため、彼ははちきれそうな根から先走りを垂らしたまま、息を殺すだけで精一杯だった。
「そうですか。じゃあ、夕飯は午後七時から二階のレストランで、ビュッフェ形式になってます。八時半からは明日の打ち合わせがあるので、台本と筆記用具を持って三階の大広間に来てくださいね。と、漣くんにも伝えてくださいね」
「ああ、……わかっ、た」
大河の腹の下では、ひゅ、と喉を鳴らしながら快楽に溺れている牙崎がいる。浅く早い呼吸を繰り返している彼にはきっと、プロデューサーの言葉などまともに届いていないだろう。
ドアの前から人の気配が消えたことを察した大河はゆっくり腰を引き、突然の焦らしで熱が溜まりきった粘膜を根の径で散々に苛めぬく。
敏感になりすぎた粘膜で血管の凹凸すら感じられるほどに感度の良くなってしまった牙崎の背筋はびくんと跳ねて、掠れた悲鳴が再び漏れる。
そして暫く浅い抜き差しで戸惑うように戦慄く彼の入り口を弄んだ後、大河は一気に最奥を貫いた。
「……ィっ、……っ!!」
散々焦らされた後の刺激は、牙崎にとって強すぎた。腫れ上がった根からはゆるゆると白い粘液が止めどなく垂れ落ちて、金色の瞳は涙で濡れ、快楽で淀み、どこか遠い場所を眺めている。
張り詰めた糸が切れるように。白い身体はベッドに崩れ落ちて、唾液で濡れた唇からは荒く熱い息が吐き出され続けていた。
だが、思いがけないお預けを食らっていたのは牙崎だけではない。
繋がったまま、力無く横たわる牙崎の足を掴み股を開かせた大河は、再び律動を刻み始めた。
「は、……? ァ、おい」
「晩飯、七時からだって。時間、まだあるだろ」
「ふっざ、け、ン、ん、ぅ、あ、ーー、……っ」
一度絶頂し蕩けた腸壁を、大河の根が擦り上げる。
抗議の声を上げられたのはほんの数秒だけで、その後は甘い悲鳴が絶え間無く部屋の中に響きわたった。
少しの背徳感と大部分の快感が混じった行為の終わりは、まだまだ前のようである。
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