今日も今日とて、一方通行と浜面仕上の両名は上条当麻の学生寮に『作戦会議』と言う名目で泊まり込んでいた。

時刻は夜の8時頃。
テレビからバラエティ番組を垂れ流しながら、家主に食事の準備を任せた食客達はぐだぐだと雑談で時間を潰す。
ちょっとは手伝えよ、と言った家主の悲鳴は、「今日買い出した分の金全部俺だったよなァ?」「あのシスター一日の食費ってマジヤバいな。俺もう金欠だわ」と言う言葉の前に沈黙した。
「…なぁ、一方通行」
「ァン?」
食客の1人である浜面が、何の気負いもせずに尋ねてきた。
「お前いつもソレで何聴いてんの?」
「はァ?」
質問の意図が分からない、と言いたげな一方通行に対し、浜面は自らの首筋を指し示す。
白くて細い首筋に取り付けられている、真っ黒なチョーカー型の端末。
それらから延びているコードは一方通行の耳の辺りで途切れているため、確かに事情を知らない人間から見たら常に音楽を聴いている様に見えるのだろう。
そして意味を理解した一方通行はと言うと。
「(わざわざ弱点広める意味もねェ、か)」
と思考して、その場しのぎをする事にした。確かに浜面も上条も仲間ではあるが、まだ其処まで完璧に信用は出来ない。
「…何か、入ってるもン適当に」
「へぇー」
適当に濁して会話を逸らそうとしたが。
「ちなみにメーカーどこのだ?俺もプレーヤー欲しくってさ」
意外にも食いつかれてしまったので、さらに嘘で塗り固める必要が出来てしまった。
「…特注」
「…すげーな。あ、やっぱ第一位ともなれば試供品とか最新の奴とか貰えちゃったりすんだ」
「……まァ…」
余りの会話の弾みように、彼に対しての罪悪感が沸き上がってくる。良く見てみたい、と言う感情を隠すこともせずに一方通行の首筋に目線を向けてくる姿は、今現在自宅にいる打ち止めの姿を思い出させた。
「…下手に触らねェンなら、見ても良いけどよ」
「え、マジで!?」
四角い食卓の、ベッド側に浜面、キッチン側に一方通行が座っている状態だった。
浜面が許可を得たことで意気揚々と距離を詰めてきたので、微かに顎を上向かせ、首筋が良く見えるようにした。
「…へー、変わった奴だな…」
「………」
浜面の手が、一方通行の首筋に触れる。彼の体温も上条同様に高いらしい。
触れていなくても、手が近くに翳されているだけで暖かく感じられた。
「(……悪くは、ねェな)」
これまでは敵意以外で人に触れられるという体験がほぼ無かった一方通行にとって、触れたり触れられたりすることはまだ『特別』なことに位置している。
若干の心地よさを覚えながらキッチンを横目で見ると、上条が出来あがった料理の盛り付けを行っているのが見えた。
そろそろ手伝ってやってもいいかも知れない、と考えたところで。

「あ、このスイッチなんだ?」

脳天気な声で死刑宣告がなされた。
止めろ、と声を出す前に浜面の指がスイッチに触れ、演算能力の全てが奪われる。
上条を捉えていた視界は揺らぎ、重心さえ固定できない彼の身体はそのまま後頭部を強打するコースで床に倒れ込んだ。
「お、おい?!」
自分が犯してしまったことに気付かない浜面は、何とか間一髪で一方通行の身体を抱き留めた。
そして、ぐったりと人形のように脱力してしまった彼の身体を支え、声を掛ける。
「大丈夫か?どうした?」
一方通行の視界には、浜面が映っている。ただ何を喋っているかは解らないし、返事をすることなども出来ない。
今彼が感じていることと言えば。
「(あった、かい)」
自分の身体を抱き留めている浜面の体温が、心地いいことだった。
「(…きもち…いィ)」
肌と肌の触れあいは、暖かくて気持ちいい。
それを知った人間が次に取る行動はと言えば、一つしかない。
本能的な、人間の三大欲求の一つ。
「はま…づら?」
「…何だよ、驚かすなって」
浜面は一方通行から反応があったことで、思い切り安堵した。
そして支えている手を離そうとした瞬間、彼の視界は真っ白に染まる。
「はーい、お待たせしましたよ。上条さん特製肉野菜炒め……」
タイミングの悪いことは重なった。
今まで蚊帳の外だった上条が輪の中に入った瞬間眼にしたモノは、学園都市最強の超能力者が単なる無能力者にディープなキスをしている場面だった。
不幸中の幸いを強いて上げるとするならば、上条が持っていた皿を落とさなかったことくらいだろう。
「…ン、…っ…」
時々鼻にかかったような甘い声が漏れてくる。当事者である浜面すら、目の前の現実に付いていけていないようだった。
「…………」
「……………」
十秒程度の沈黙が、2人には永遠のように感じられた。たっぷり沈黙した後、漸く浜面の目が助けを訴えていることに気付く。
エプロンを外し、浜面に抱きついている一方通行の肩を掴む。
「あ、あ、一方通行さん!?ほら、浜面さんも困ってるし離れましょう、ね!?」
浜面も引き離そうと一方通行の服を掴んでいるが、びくりともしない。この細い身体の一体どこにそんな力があったというのだろうか。
す、と紅い眼が開き、上条を視界に捉える。ちゅ、と音を立てて唇が離れると、浜面との間に唾液の糸が引いた。
「…とォ、ま」
「うん?」
上条は一種の悪い予感を感じていた。そしてほんの数秒後にその予感は的中した。
凄まじい腕力で引き寄せられて、上条の唇は一方通行の唇と重なった。
既に唾液で濡れた唇は柔らかく滑っていて、初めての感触に上条は戸惑わざるを得ない。
「…っ、おい第一位!オマエふざけんなよ!」
酸欠状態になった浜面は袖で唇を拭きながら苦情を申し立てるが、本人には届かない。
上条の唇は一方通行の舌に舐められ、啄まれる。
「(…や、ヤバイヤバイヤバイヤバイ…!!)」
「おい上条!負けん…!」
浜面の言葉は、最後まで発音されなかった。目の前の真っ白な彼が、服を脱ぎ始めたからだ。
する、とニットがたくし上げられると、恐ろしいほど白く、中性的な身体のラインが視界に入る。
彼は一旦上条から唇を離しニットを脱ぎ捨てると、今度は浜面の服を脱がしに掛かった。
「ちょ!?」
上条にまた助けを求めようとしたものの、彼は顔を真っ赤にして座り込んでしまっていた。
そうしている間にパーカーも中のシャツも無理矢理脱がされて、お互い上半身裸の状態になる。
「…し…あ、げェ…?」
窺うように、とろけた紅い眼が浜面を見つめてくる。それから、まるで恋人にすがりつくようにして一方通行は浜面に抱き付いた。
「(…あったけ…)」
その体温を確かめるため、猫のように擦り寄る。
彼の身体が酷く華奢なこと、またその白い髪が肩につく辺りまで伸ばされているために、見方によれば女性に見えなくもないこと。
…最近、自家発電していないこと。
その三つの要因が重なり、不幸にも浜面の下半身は反応を示してしまった。
「……っ、…」
「…、ァ?」
その部分が膨張してしまったことに、一方通行も気付いたらしい。ただ、今の彼に意味を理解することは出来ない。
この、かたいものはなんだろう。
幼児のような単純な好奇心で浜面のジーンズの中に手を差し込んで、それを触った。
「…ヤバい!それはマジでヤバいって!…っ…」
細く、少し冷たい指が浜面自身に絡まる。刺激を受けた部分は喜んで先走りを垂らし、更なる刺激を求めて硬くなった。
「…ちょ、上条!…助けろって…」
「…すまん浜面。上条さん立てないです。寧ろトイレに行きたいというか…」
「ばっ!…おい第一位!これ以上ふざけてたらホントにやっちまうぞ!?」
楽しそうに指で愛撫をしている超能力者に向かって怒鳴ってみるものの、本人は全く気にしていない。
その間にも確実に浜面は追い詰められていき。
「……っ、…!」
とうとう、白い粘液を彼の手に放ってしまった。一気に疲労感が身体を襲い、理性というものを繋ぎ留めていた何かがぶちぶちと音を立てて切れていくのが解る。
「…ン…?」
原因を作った張本人は、浜面のジーンズから手を抜いて自らの手に絡みついた粘液を不思議そうに見つめる。
そしてまた単純な好奇心からそれに口を付け、音を立てて啜った。
「…はは。そうですか、第一位様はそんなことまでしちゃいますか」
もう、浜面からは乾いた笑いしか出なかった。
ちらりと上条を見ると、卑猥な姿の一方通行に釘付けになっていた。きっと彼の股間も大変なことになっているに違いない。
「…なぁ、上条」
「……なんでしょうか、浜面さん」
「ベッド借りるな」
短く持ち主に断ると、一方通行をベッドに組み敷いて、まるで犬の交尾のように尻を持ち上げた。
彼のパンツと下着を太ももの途中まで一気に下ろすと、白くて形の良い臀部が露出する。
「全部お前が悪いんだからな、第一位」
浜面はそう一言呟き、一方通行の性器に愛撫を加え始めた。
「ンっ!あ、ァあああ!」
「五月蠅いって」
「…ゥ、ぐ…!」
肌を密着させ、右手で刺激を与えながら左手で彼の口を塞ぐ。
我慢も羞恥も必要ない今の彼は、甘い声を上げてあっさりと達してしまった。
「ン、…ァ…は…っ」
浜面から顔は見えなかったが、耳は真っ赤に染まっているのが見えた。
そして上条からは、涙と唾液をはしたなく零している彼の顔が、よく見えた。
「(…き、もち…い…。…あたま…ぐちゃぐちゃ…)」
一方通行は、よく状況を理解できないまま腰を揺らした。正しく言えば刺激のせいで足が笑っていたのかも知れない。
浜面はそんな事情など関係なく、快楽のせいで朦朧としている彼の排泄器官にぬるつく指を挿入する。
「い!?…ン、ぎ…」
痛いようなくすぐったいような、今の彼には理解が出来ない刺激が襲う。
「慣らしてやるだけ感謝しろよ。ホントならいきなりぶち込んでやっても良かったんだからな」
浜面の中で、つい先日学園都市の刺客に行われた拷問が思い出された。
「(…あれも結構良かったよなぁ…)」
抵抗できない人間を無理矢理組み敷く性癖でもあるのだろうか、と自問するが、答えは出ない。
キツく締め上げてくる入り口さえクリアしてしまえば、中は比較的に自由に動かすことが出来た。
ぐり、と指で前立腺を圧迫すると、また一方通行の口から甘い声が漏れる。
「…おい上条。こいつの口塞いでやれよ」
「え…」
「お前だって勃ってんだろ?…こいつから誘ってきたんだし、望み通りにしてやろうぜ」
上条にとって、それは悪魔の囁きだった。
一方通行は知り合いだし、仲間だし、男だし。
いくらそう言う状況だと言っても、そんなことは出来ない。
しかし上条当麻15歳。
目の前に突っ込んで良い穴があるならば、我慢など出来るわけがない。
「…ま、来ないんなら先いくけど」
浜面も自らのジーンズと下着を下げると指を引き抜き、先走りを滴らせている性器をあてがった。
それから一度深呼吸をして、本来であれば排泄に使用される器官に無理矢理めり込ませた。
「…ゥ、あ…ああァァあッ!」
「静かにしろって」
浜面が再び一方通行の口を塞ぐ。
「ン、ェっ、あゥ?」
目一杯見開かれた紅い眼から、ぽたぽたと涙が溢れていく。
上条はその光景を見て、胸の奥のどこかで、汚い感情が溢れていくことを自覚した。
「(…一方通行から、誘ってきた…)」
浜面の言葉を脳の中で反芻し、若干前屈みになりながら立ち上がり、ベッドに座る。
ぎしぎしと言うベッドの悲鳴が尚更大きくなった。
「…と、…ま?…と…ォ、…わ…?」
上条の名前を繰り返しながら涙目のまま見上げてくる彼は、酷く嗜虐心を煽る。
ごく、と生唾を飲み込むと上条も性器を露出させ、唾液で滑っている一方通行の口の中に押し込んだ。
「ぶっ、…ぐっ、…!!」
「歯、立ててくれんなよ。最強」
既に汗で湿っている白い髪を撫でて、声を掛けた。
上からも下からも貫かれた超能力者はもう、与えられる刺激に身を任せることしかできない。
「(あちィ、くるしィ、きもちいィ、いてェ、あったけェ)」
上条は一方通行の喉をまるでそう言った器具のように扱い始めた。
奥まで挿入し、張り詰めた笠の括れまで引き抜く。


その度に一方通行の意識は飛びかけるが、下腹部へ断続的に与えられる刺激がそれを許さない。
ピストン運動を繰り返す度に、その場所は浜面を絞り上げた。
「…あ、も、出そう…」
一方通行の細く括れた腰を掴み、更に激しい抜き差しを繰り返す。
「ン、うっ、ぶ、!」
喉の奥まで異物を挿入されている超能力者は、まともに喘ぐことさえ出来なかった。
ほんの数分後に浜面の動きは止まり、結合している場所から泡立った粘液がどろりと溢れた。
ぶる、と浜面が身震いをしたので、最後まで注ぎ込んでいるのだと上条は認識する。
「…俺も出すから、…飲んでくれ。一方通行」
子供を扱うような優しさで声を掛け、彼の頭が動かないようにがっちりと両手で固定する。
そして、勢い良く粘液が喉の奥へとぶちまけられた。
「…ン、…っ、…ぐェ…!」
喉仏を触り、確かに飲み下されていることを確認してから、性器を引き抜く。
精液と彼の唾液でぬめぬめと光っているその様は、上条自身から見てもグロテスクだった。
「…っ、ぷェ…」
一方通行は俯き、口の中に残っていたモノを全て吐き出した。
と言うよりは、呼吸を整えるために口を開けたらぼたぼたと垂れ流してしまったという方が正しいだろう。
肩で呼吸をする一方通行を尻目に、浜面は上条に更なる提案を行う。
「…次、こっち来るか?」
「お、う」
上条は、友人の口の中に射精してしまったという背徳感と罪悪感と快感に苛まれながら、浜面の横に移動する。
押し込まれていたものが引き抜かれると、粘液がとろりと筋を作って一方通行の白く細い太腿へと伝っていった。
「…ァ、…う…」
微かに呻きながら脱力しているその姿は、思春期の少年には刺激が強すぎた。
ぶちり、と理性の紐が切れたような音が聞こえた気がした後。
萎えるという単語を忘れた上条は、既に意識を手放し掛けている一方通行を掻き抱いた。











「あー、つっかれたぁ…」
時間は少しばかり経過して。
少年二人は一方通行の身体を余すとこ無く堪能した後、少しばかりの休憩を取っていた。
「…おーい、一方通行さーん。大丈夫かー?」
散々身体を貪られた彼の意識はもう、無かった。
眼はうっすらと開いているものの、上条の呼び掛けにも全く応じない。口の周りや下半身には誰のものか判らない精液がこびり付いていて、白く斑に汚れていた。
「…失神してんな」
「取り敢えず、上条さんはお風呂の準備を…」
気怠い疲労感に襲われながら上条がベッドから降りた瞬間、携帯電話の着信音がけたたましく鳴り響いた。
ふと見れば、一方通行のパンツのポケットから滑り落ちた携帯電話が、カーペットの上に転がっている。
本人は出ることが出来ないので、仕方なく上条が拾い上げて通話ボタンを押した。
「…はい、もしもし」
『はーい!よい子はもう寝る時間ですよーって、ミサカはミサカは愛しの貴方にグッドナイトコールをしてみたりー!…て、あれ?どうしてあの人の携帯に上条当麻が出るの?ってミサカはミサカは疑問を口にしてみる』
「ら、打ち止め?」
す、と上条から血の気が引く。
彼女は、まさか自分の保護者が友人達に犯されて気絶しているなんて夢にも思わないだろう。
「…い、いやー、なんか夕飯食べたら眠くなったみたいで。一方通行さん、もう寝てるんですよー…」
苦笑しながら、酷く苦しい言い訳をする。しかし打ち止めは疑問に思うことはなかったらしく、話題は移り変わっていく。
『そっか、とミサカはミサカは少し残念に思いながら納得してみる。あの人に伝言もあったんだけどなーってミサカはミサカは迷ってみたり』
「…簡単なことなら、上条さんが承りますよ」
『ホント?じゃあお願いしますってミサカはミサカは上条当麻に協力をお願いしてみたり』
上条と打ち止めが会話をしている最中、浜面はすっかり気絶してしまった一方通行の様子を窺っていた。
「(…こいつ、素っ裸になってもこれ付けてんのか)」
気になったのは、首に取り付けられているプレイヤー。そう言えば、これを触ってから彼の様子が変わってしまったのでは無かろうか。
『えっと、冥土返しからの伝言!ミサカネットワーク接続用電極のメンテナンスをしたいから、明日病院に来て欲しい、だって』
「電極?」
上条は打ち止めの言葉尻を捉え、訊ねる。
『あれ、もしかして聞いてないのかなってミサカはミサカは疑問を抱いてみたり。話せば長くなるんだけれど、あの人の首に取り付けられているあのチョーカーは』
打ち止めの説明を要約すると、あのチョーカーは損傷を負った彼の脳を補助する器具らしい。
ちら、と浜面を見ると、今まさにチョーカーに触れようとしていた。
「浜面、ダメだ!」
とっさに声を上げ、浜面の動きを制した。
何となく。
嫌な予感がしたからだ。
『?』
「いや、こっちの話。…ちなみに、もし触ってスイッチが切れたりしたらどうなるんだ?」
上条の頬に、冷や汗が一筋垂れる。よくよく考えれば、『あの』超能力者がこうも易々と他人に身を任せる訳がない。
『うーん…あの人が充電を切らしている場面を見たことがないから予測になるんだけど、思考できない人間って言ったら通じるかなって、ミサカはミサカは確認してみる』
思考が出来ない人間。
つまりは生まれたての赤ん坊のように、本能的な行動しか取ることが出来ないという、人間。
『と言うわけで、あまりチョーカーに触ったりしないでねってミサカはミサカは念を押してみる!じゃあ、お休みなさーいってミサカはミサカは通話を終了してみたり』
ぷつ、と通話が途切れると、上条は携帯電話を無言で携帯を閉じた。
「…なぁ浜面」
「んー?」
「…お前、もしかして…一方通行のチョーカーとか…触って、無いよな…?」
「…………」
恐々としながら上条は尋ねるが、浜面は無言だった。
今この状況で無言と言うのは、肯定として捉えても問題ないだろう。
つまり一方通行は別に誘ったわけではなく、ただ服を脱いでくっついて来ただけ。
2人がその事実に気付くのは、あまりにも遅かった。
部屋の中に、気まずい沈黙が訪れる。
「バレたら…」
上条は幻想殺しで。
浜面は単純なフィジカルで彼に勝てるとしても、超能力者が全力を出せば周囲に甚大な被害が及ぶことは想像に難くない。
「「…………」」
ある意味血よりも濃い絆で結ばれた2人は、今この瞬間から共闘関係を結ぶことにした。


翌朝、一方通行は規則正しくまな板を叩く音と、肉の焼ける香ばしい香りで目が覚めた。
「…ン」
「お、おはよ。一方通行」
声の方を見れば、上条が昨夜と同じ様にエプロンをして台所に立っている。
「……上条?…いつ寝たンだよ俺」
自らの記憶が、酷く曖昧だった。
先に起きて上条の手伝いをしていた浜面が、補足するように声を掛けてくる。
「いやー、晩飯食ったらすぐだったぞ?超爆睡」
「…チッ……」
一方通行は一度舌打ちをしてから、布団から杖を使って起きあがる。
「(気、許しすぎだろ)」
幾ら数少ない仲間だからと言って、丸々10時間以上も無防備な姿を晒してしまっていたことに少しの気恥ずかしさがあった。
昨夜夕飯を食べてすぐ眠ってしまったという事は、風呂にも入っていないし歯も磨いていないという事だ。
潔癖症ではないが、一度汗を流して身体をすっきりとさせたかった。
「風呂借りるぞ」
「あぁ。段差あるから気を付けろよ」
「ン」
杖をつきながら浴室に入り、ばさばさと服を脱ぐ。さっさと済ませてしまおうと、少し熱めのシャワーを浴び、シャンプーで髪を洗っている途中。
「……ンっ…?」
ぞく、と悪寒がして、何かが自分の太股に伝っていく感触があった。
視線を落とせば、その何かが自らの何処からか止め処なく溢れ出ているのが見える。
足元に、白く濁った水滴が落ちていた。
「…………………」
一方通行は、本当に。
恐る恐ると言った静かな手付きで、その粘液の筋道を辿っていく。
そして自らの解析能力を使用して、その液体の正体を突き止めた。
「……!!!!」




ゴン、と凄まじい音がして、風呂場のドアが開く。
思わず上条と浜面は目を合わせ、迎撃体勢を取った。そして中から出て来たのは、真っ白い髪から滴を垂らしたまま、いつもの縞柄服を着用している学園都市第一位。
濡れた髪が貼り付いていて表情が判りにくいものの、隙間からは紅い眼がこちらを睨んでいるのが見える。
「…上条くンに浜面くンよォ。…昨日は爆睡した俺のお世話してくれたみてェじゃねェか…」
その言葉で、名前を呼ばれた両名は昨夜の件がバレてしまったことを理解した。
命の危険を察知した浜面が、慌てて弁解に入る。
「い、いや第一位!そもそもお前から誘ってきたんだからな?て言うか、その電極そんなに大事なものなら教えてくれよ!俺たち仲間じゃねぇか!」
彼の言葉は酷く正論で、一方通行は一度眼を閉じて溜息を吐いた。
「……そォだな。弱点の情報ってのァ共有すべきもンだ。今回の件でよくわかった」
昨夜のダメージが残っているのだろうか。彼は自らの腰を無意識にさすりながら言葉を吐く。
自分の非を認めた彼の発言に、上条と浜面は一瞬だけ警戒心を緩めた。
が。
「だがなァ」

一方通行の口元が、美しい弧を描く。
彼の細い指が首筋の電極に触れ、スイッチを切り替えた。

「それじゃあ意識のねェ仲間のケツの穴好き勝手掘った挙げ句、汚ねェもン垂れ流していい理由にはならねェよなァあああ!!?」


とある日の爽やかな朝。
無能力者二人の断末魔が学生寮に木霊した。








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スン↓マセーン↑企画
『3主人公で一方さん総受』
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