「えー?! それって最悪じゃない?!」
「ちょ、声大きいって!」

「んー……?」
ある冬の日の昼休み。上条当麻は姦しい声で睡眠を妨害された。机に突っ伏すような形で眠っていたため身体の節々が妙に重いが、学校の教室といった限られたスペースでこれ以上快適に過ごす方法というのも難しいので仕方がない。
どうやら声の主達は上条の席の近くでガールズトークに花を咲かせているようだった。盗み聞きをするつもりはないが、内容が嫌でも鼓膜に届いてしまう音量で会話をしているので、上条は狸寝入りを決めることにする。
「……会う度エッチって絶対おかしいって。絶対体目当てだよ」
「そ、そうかなー……」
「しかもそいつ超がっついてくるんでしょ? キモ……」
「うーん……。あたしも気持ちいいんだけどね、なんかちょっと触ってすぐ入れたがるから……」
「キモーーーーーーーー!!!」

彼女達の会話内容は心当たりしかない上条の心臓にざくざくと刺さり、彼は平静を装うために咳払いをして寝返りを打つフリをした。



「……という事があったんです」
「…………ほォ」
数日後、上条は宛てがわれている学生寮にある自室のベッドの上で、彼の恋人である一方通行と膝を突き合わせていた。
彼らがそういう関係にあると察している可愛らしい同居人はペットと共に、一方通行の家族である少女の元へと行っている。一方通行は目の前の男の思いつめた表情を、頭に疑問符を浮かべながら眺めていた。
男性と女性は脳の構造からして異なっている。よく聞くのが、『男性は肉体的な接触を好み、女性は精神的な接触を好む』と言う項目だろう。それが理性的に理解が出来ている一方通行が「そンなもンじゃねェの」と短く返答するものの、上条は首を横に振る。
「確かに、その、最近会う度そういうことばっかしてるなーって思ってな。もしかしたらお前に負担かけてんじゃねーかなって」
「負担、ねェ」
一方通行は静かな室内で、細い首を傾げて思考した。
上条当麻と一方通行はまず、体のつくりが違う。体力が違う。回復速度が違う。抱えている性的な欲求も違う。それらはほぼ全て上条の方が上回っていたので、確かに、ある意味では、『無理を強いられている』と言っても問題ではないかも知れない。
だが一方通行は上条以外との経験が無い。その為、もし上条以外の人間と関係を持ったとしても似たようなことになるのではないか。もしくは、更にその差は大きくなるのではないか。そもそも普通とはなんなのか。と言った思考にはまってしまうので、明確な返答をすることが出来なかった。
「……」
そしてそんな彼女の姿を上条は上から下までじっと眺めていた。何せ彼は現役高校生である。生物としての欲求が顕になる中学生に薄皮一枚載せた程度の理性しか持ち合わせていないので、好きな異性と同じ空間に居ればそう言った行為をしたいと思ってしまうのは仕方がないことなのだ。
一方通行が動く度に白く柔らかな髪がさらりと揺れて、その細い首を横切る黒い線が嫌に鮮やかに映えている。伏せられた赤い眼は白い睫毛に縁どられており、特に皮膚の薄い唇はほんのりと柔らかな肉の色を透かしていた。
ごくり、と思わず唾液を飲み込んだ音すら部屋に響き渡るような、沈黙。
やがて一方通行は大きく息を吐き、気怠げな仕草で白い髪を掻揚げた。
「……で、俺が負担だって言ったらどォすンだ。オマエ」
「え、あ、あー……。……頑張って、負担掛けないように、します」
「具体的には」
「……………………や、優しく、する」
「…………」
答えになってはいないが、彼なりに努力しようとしている姿勢は認めるべきなのだろう。怪訝な目つきを崩さないまま、一方通行は彼女が履いている濃い灰色のジーンズの、ポケットに入りっぱなしになっている携帯電話を取り出した。
上条は彼女の行動に疑問を抱きながらも、一部始終を見守っている。正座を崩した一方通行はそのままベッドに寝転ぶと、その脚で上条の膝を蹴った。
「なら、そォしてみろ。どっちが良いかは俺が決める」
「……っ!!」
つまりは今すぐ抱いてもいいってことですか。余りに男らしい誘い文句に早速上条の理性が崩壊しかけるが、彼はぐっと堪え、添い寝をするように身体を横たえる。
二人分の体重を支えるには、この備え付けのベッドにはなかなか難しいようだ。少し身動きをするだけで軋み、その音が嫌でも情事を思い出させてしまう。
「じゃあ、お言葉に甘えて」
「ン」
一方通行は慣れた様子で身体の力を抜いており、上条がそっと抱き締めれば素直に身を寄せる。ここまで信頼を得られて嬉しい半面、そんな彼女を自分の欲で汚してしまっている現状に些か情けなさを抱く。
普段であればもうこの時点から彼女が着ている薄手のニットの中に手を差し込み、キスをしているのだが。『負担を掛けないよう優しくする』と宣言してしまっている以上、そんな性急な行為は許されない。
腕の中に収まってしまう、細い身体の感触を全身で味わうように。身体を密着させながら、彼女の髪に指を絡ませた。
「ン……」
肩につく程度に伸ばされている髪を、項から掬い上げるようにしてかき上げる。慣れない肌寒さに、一方通行が身を固くしたことが上条にも伝わった。
しかし上条は手を止めることなく、剥き出しになった白い肌を指の腹でなぞりながら柔らかな毛束に顔を埋め、香りを楽しむ。柔らかく、甘い香りがする。
擽ったさに悶えながら声を殺している一方通行がとても官能的で、もっともっと乱れる様をこの目に焼き付けたいとは思うが。
「(優しく、優しく)」
胸や足の間と言った直接的な部分を触るには、まだ早い。項を散々撫でながら、上気し始めた耳に息を吹き掛けて、耳朶を食む。
「ンっ、……っ!」
一方通行はびくりと一度大きく肩を跳ねさせて、不思議な感覚から逃れるために首を傾げる。反った細い喉が描く曲線がとても滑らかだったので、上条はそこに顔を埋めて皮膚の上を啄んだ。
ただでさえ子供のような柔らかな肌だというのに、もう汗ばみ始めている表面は、文字通り吸い付くような感触だ。彼女の生命線を支えているベルトに指を差し込みその隙間に舌を差し込んで。
横切るようになぞれば、乾いた悲鳴が上条の耳に届く。無意識に縋るものを探した彼女の白い手は上条の背に回り、着用していたカットソーをきつく握りこんだ。
慣れない場所を触れる、と言うのは、上条の予想以上に一方通行に作用しているらしい。薄い服越しに聞こえる彼女の鼓動は既に早鐘を打っており、低い体温が徐々に上がっているのが分かる。
「……」
しかし、まだまだ。上条は一方通行の背に腕を回すと、丸まっている背中を下からなぞり上げた。
「ひ、っ……!」
そう厚くない皮膚が貼られている面積が一番多い場所、と言うのは、見落としがちではあるが十分な性感帯である。背骨の凹凸を服の上から確かめるように。肩甲骨の張りを確かめるように。
体幹の緩やかなカーブに逆らわないように撫でていけば、心地よいのか、それとも何かがもどかしいのか。色づき始めた彼女の唇から漏れる息が、震え始めていた。
その甘やかな気配に、上条の下腹部もじんわりと温まる。
「……」
だが上条は其処から意識を離すように腹を決めると、ようやっと彼女の服の隙間に手を差し込んだ。
「ァ、っ」
既に感度が上がっている肌は侵入してきた外気と暖かな人肌に素直に反応してしまい、触れられた場所からはぴりぴりとした痺れが広がり始めている。
一方通行は上条とそう言った行為の際、自分が情けない姿を晒すことは自覚してはいたが、敏感な場所を探られているのだから仕方がないとどこかで自分に釈明を行っていた。
しかし今はどうだ。普段触れられている場所に、未だ上条は触れていない。だと言うのに全身がじんわりと火照り、足の間がずくりと疼いている。
「(ク、ソ……)」
どうにか切なさを収めようと内腿を擦り合わせるが、上条の指が滑っている背中から伝わる甘やかな刺激がどうにも強すぎた。上条の胸元に顔を埋めながら指を噛み声を殺している途中で、不意に彼の手が離れる。
気付けば、視界が潤んでぼやけてしまっていた。そろそろと彼女が上を向けば、上条が眉尻を下げて彼女の口から指を離させた。
「痛いだろ」
「……っ、ふ、……ゥ」
上条は歯形のついた彼女の指にキスをして、愛撫を再開した。相変わらず、一方通行にはもどかしいとしか感じられない優しい触れ方で背や脇を撫でている。
じっとりとした感触から次の段階へと移ることを決意した彼はそっと彼女のジーンズのスナップを外し、ゆとりが出来たウエスト部から両手を侵入させた。
「(ァ)」
身体の入口に触れられる。そう察しただけで彼女の割れ目からはどろりと愛液が溢れて、下着にじんわりと染み込んでいく。しかし意に反し、上条の暖かな手は彼女の臀部の肉を優しく撫でるだけだった。
表面をまるで陶器を触るように優しく撫で、時折、少し強い力で握られる。それも直接ではなく、彼女の下腹を覆っている薄い布切れ越しに、だ。
「ゥ、ン、っ、っ」
上条が焦らしているという自覚はないのだろう。その刺激は本当に思いやりに満ちていて、触れられるだけで一方通行は安堵してしまう。
これが『もどかしい』と思うのは、一方通行の身体が浅ましい欲に染まってしまっているからだ。早く触れられたい。いつものように訳がわからなくなるまでめちゃくちゃにして欲しい。早く。
思わず口をついて出そうになる懇願に負けじと口を結びながら息を漏らし、徐々に徐々にと追い詰められていく。まるで水から煮込まれてしまった蛙のように、今の一方通行に逃れるだけの体力はない。
浮つき始めた意識の中、下腹から競り上がる熱に耐えながら浅く早い呼吸を繰り返していれば、ようやっと上条が彼女の衣服に手を掛けた。
「じゃ、ちょっと腕上げて」
「……、ン」
既に、顔面が。身体中が燃えるように熱い。縞柄のニットを脱がされた次はシンプルなデザインのブラジャーもあっさりと脱がされて、充血しきった乳首が上条の目の前に晒される。
そう。予想通り、触れられていないはずの場所は既に固く、色濃くなっていた。それだけでなく、一方通行の白い肌全体がほんのりとピンク色に染まり、白いシーツによく映えている。
「……」
今度は上条が押し黙る番だった。ごくりと唾液を飲み込んで、自身も着ていたカットソーを脱ぐ。彼女のジーンズも脱がせてしまうと、ちょうど入口の所に大きな染みを作った彼女のショーツが視界に入った。
触ってないのに、なんで。脳に浮かんだ疑問を思わず口に出してしまうところだったが、ぎりぎりの所で我慢する。上条が優しくしたことが、彼女にとってそれだけ心地良いものだったと知れただけで大きな収穫だったのだ。
一方通行の白い髪は所々で絡まりながら、肌にひたりと貼り付いてしまっている。上条はそれらを一房ずつ剥がしながら、彼女のなだらかな丘の間に顔を埋め、肋骨の上に乗っているささやかな胸の肉に触れた。
色素が常人より格段に薄い彼女の場合、皮膚が薄い場所の変色具合が顕著に現れる。今にも泣き出してしまいそうな悲痛な喘ぎを聴きながら、上条はツンと上向いている乳首の先端を。指の腹で撫でる。
「っ、ゥ、ゥ」
神経が敏感になっている場所はその本当に微かな刺激さえも捉え、一方通行の脳を痺れさせた。試すように上条が両胸の乳首を同じように触れれば、びくりと大きく背中が浮く。
上条はそのまま舌で彼女の腹筋から臍へのラインを辿りながら腰骨へと下り微かな塩味を味わいながら、震えている白く細い脚を広げさせた。更に彼の舌は下り太腿から膝、脹脛や踝までを嘗め回すと、次は来た道を戻っていく。
その往来の途中で、ぐっしょりと濡れきったショーツが視界に入らないはずがない。上条は脚の付け根まで舌を戻らせた後、既に役目を果たさなくなり始めているクロッチ部を舌で押し込んだ。
「――――――――っ!!」
突然の強い刺激に一方通行の眼は大きく見開き、食いしばっていた唇からは声にならない悲鳴が漏れる。腫れあがった肉芽が、充血した陰唇が、無遠慮に擦られたのだ。膣口からは待ちかねた快感に期待の涎が溢れ、上条が抑え込んでいる脚は電気刺激を受けたカエルの脚のようにひくついている。
このままでは、まずい。辛うじて残った理性でそう判断した一方通行が上条の髪を掴んで股座から引き剥がそうと試みるも、当の本人は滅多に拝むことの出来ない無修正の入り口に釘付けになっている。
普段の交わりではここまで濡れそぼった状態を見たことが無かったので、それが更に火に油を注いでいるのだろう。上条は一方通行のショーツをゆっくりと引きおろし、ぬらりと濡れて部屋の照明を反射している陰唇にそっと指を這わせてみる。
くち、と微かな音を響かせて割り開けば、ひくついている膣穴から一筋、愛液が垂れ落ちた。
「……っ!」
どうしようもなく、エロい。上条は顔と股に血液が集まっていくことを実感する。何度も上条を受け入れているその場所は変わらず柔らかな肉の色をしていて、陰毛が生えていないせいもあって酷く幼い印象を受けた。
だが、上条はこの奥の感触を知っている。言い様のない背徳感を味わいながら、彼はひくついている陰唇に指を這わせ、硬くなっていた肉芽を包皮の上から優しく撫でる。
「ゥあ、あ、ァぎ、ゥくっ、っ!」
剥き出しになっている場所。皮一枚隔てている場所。それぞれが別の快楽を受け取り、一方通行の理性を崩壊させていく。もう限界だと思っていても、上条は更なる限界を一方通行に押し付けるのだ。
早く楽になりたい。過ぎた快楽のせいで切なさを抱えた彼女の身体は無意識を腰を揺らし、上条の指に自らの肉芽を擦り付けていた。静かな室内に濡れた肉の絡まる音が響くが、一方通行の耳には届かない。
「ン、ンン、っ、ン」
そうして上条の指で自慰の真似事をしている間も、膣口からの愛液は止まらない。臀部まで浅ましく濡らしながら腰を振り、もうあと少しで逆らえない波がくる、といった所で。
ぬるり、と。
上条の指が一本、一方通行の膣内に侵入した。
「あ」
「……ァ」
火照りきった膣内の肉は突然の刺激を受け止めきることが出来ず、反応が遅れる。
「ゥ、あ、ァ、あああああああ……っ」
自覚した直後、一方通行は一度目の絶頂を迎えてしまった。体内は濡れそぼっていると言うのにきつく指に絡み付き離さない。ようやく与えられた開放に一方通行の全身は震え、口からは情けない喘ぎが漏れて止まらなかった。
上条の指は丁度尿道裏に至っており、彼が少し意地悪として指を曲げれば失禁の可能性もある。だが今はそんなことを考える余裕すら、一方通行には与えられなかった。
「……すっげ。指入れただけなのに。……中も、ぬるっぬるだし」
ほんの少しの出し入れをするだけでも彼女の華奢な身体は波打ち、愛液が零れてシーツに染みを作る。数回の強張りの後、くたりと一方通行の身体から力が抜けた。
夢中になって呼吸を整えている彼女の顔は既に真っ赤に染まっており、瞳は濡れてきらきらと光っている。その様を可愛らしいと思いながらも、上条は非情にも再び指で濡れた奥を掻き混ぜた。
「っ?! ァ、ぎ、やっ!!」
一度絶頂に達した肉の過敏さは先程までとは比較にならない。一方通行は数度首を横に振り制止を求めるも、上条は止めることなく行為を続けていく。くちゅくちゅと肉が掻き混ぜられる音と一方通行の悲鳴が良く響いて彼の嗜虐心を刺激してしまうので、止める事が出来ないのだ。
「(もう一回見てえな)」
普段は隠れている、一方通行が欲に溺れると言う姿が可愛らしくて堪らない。すでに上条の根も下着の下で痛いほど存在を主張しているが、出番にはまだ早い。
しかし直後。上条が指の動きを早め、くにりと彼女の腹側に折り込んだ。
「―――――――――っ!!!」
一方通行の柔らかな感触の足指が内側に折れ曲がり、膣口のひくつきに合わせてこぷこぷと愛液が零れ落ちる。荒い呼吸の度にひゅうひゅうと音が鳴り、かたかたと全身の震えが止まらない。
上条はようやっと指を引き抜くと、ジーンズと肌着をずり下ろしてグロテスクな男根を露出させた。先端からは既に透明な液体が漏れており、幹には血管が幾筋も浮いている。
いまだ快楽の余韻から抜け出せずにいる一方通行にそれらは酷く恐ろしいものに受け取られ、力が抜け切った身体でどうにか逃げようと足掻くものの。上条の温かな手が彼女の腰を捕まえたことで全てが無駄になった。
「っ、ま」
待て、と発音しようにも、快感で馬鹿になってしまったのか、舌が上手く回ってくれない。上条はそんな彼女の事情など気にも留めず、根の鈴口を蕩けきった膣口に押し当てる。
にゅるりとした感触と同時に走る快感に一方通行の身体が緩んだ瞬間を、上条は見逃さなかった。限界まで膨れた根はよく解された彼女の肉を掻き分けながら、酷くスムーズに。一気に最奥まで侵入した。
「…………っ!!」
「っあ、ヤバ……」
指とは比べ物にならない圧迫感と快感に、一方通行の視界には火花が散った。濡れた肉は上条の根の括れにしっかりと絡み付き、その形を記憶してしまっている。
限界の更に先へと続く強い快楽を受け止めきることが出来ない一方通行は、呼吸すらままならずにただただ身体を震わせるだけで精一杯だ。酸欠から意識を落としそうになった頃合に上条が身体を屈ませ、彼女の身体を覗き込む。
「一方通行」
「……っ、ゥあ、……ン……?」
「今のお前さ、すげー可愛いと思いますよ」
いつも可愛いけど。と付け足した言葉は一方通行の耳には届かなかった。代わりに優しく頬や額を啄ばまれ、くしゃりと頭を撫でられる。どうやら律動を始める前に一度休ませようと言う彼からの気遣いのようで、下半身は繋がったまま殆ど動いては居ない。
繋がっている場所からじんわりとした熱が沸き上がるのを感じながら、一方通行も弱々しく腕を伸ばし、彼の芯の通った黒い髪に指を絡ませた。涙ですっかり視界がぼやけてしまっているものの、間違いなくこの髪の持ち主は上条当麻である。
「ひ、ひ」
何が優しくするだ。普段よりも丁寧に乱暴しているだけだ。この馬鹿が。そう言ってやりたいところであったが、彼の髪の感触が心地良いので全てを許すことにした。
なぜ一方通行が笑っているのか理解出来ない上条が再び顔を覗き込んでくるので、ほんの少しの力を使って引き寄せる。ほんの少しずれた唇の触れ合いに、二度目は上条がしっかりと喰らいついた。
「ん、……」
「ン、っゥ」
桜色に染まった一方通行より、上条の体温は高かった。互いの鼻息が頬を擽りあっても気にならないほどに唇を擦り合わせ、舌を絡ませる。唾液で濡れた一方通行の唇はさらに柔らかくなり、その感触に上条の欲が更に燃え上がった。
ぐり、と腰を動かし胎内を抉りながら、真っ赤に腫れた唇を甘く食む。
「ン、ンンン、ンンンンっ!」
もうここまで高まってしまった彼の情欲は止まらない。ずるりと亀頭の括れまで引き抜かれた後に再び根元まで押し込まれ、ぬかるんだ肉はその体積を簡単に受け入れる。
雨上がりの砂地のように、上条が腰を叩き付ける度に奥から奥から愛液が溢れシーツに垂れ落ちていく。汗ばんだ肌同士のぶつかる音と上条の茎が一方通行の肉を掻き回す音と、二人分の荒い呼吸が部屋の中を満たしていく。
普段より大分潤滑の良い内壁は多少乱暴なピストンでもあっさりと快楽として受信して、彼女の胎内は否が応でも反応する。腫れ上がった亀頭が無遠慮に子宮口を叩き、その口を開かせた。
一方通行は疲労と快感から、視界から殆ど情報を収集できなくなっていた。突き上げられる度に世界が揺れて、目の前の男が獣のような視線を送ってくる。かと思えば唇が重なり、視界が彼一人で埋まってしまう。
押し広げられている入り口周辺も擦られる度に戦慄いて、痛いほどに充血した陰核は上条の下腹に擦られる度に強い刺激で一方通行の脳を責めた。
「(もォ、も、む、り)」
上条の身体とベッドに挟み込まれた彼女の身体は何度も波打つが、上条は律動を緩めない。平常時の心拍より少し早いくらいのリズムで最奥が何度も抉られる度に、愛液がびちゃりと上条の下腹を汚していった。
「あく、せら、れーた」
「ゥあ、あ、あっ、ァ、あ―――、ァ―――――……っ!」
久方に唇が離れたかと思えば、今度は今までほったらかしになっていた両の乳首を指先で捏ねられる。意地の悪いことに唇が離れていたので、涙の混じった甘い声は部屋中に響き渡ってしまった。
全身。身体中の全てが、快楽を訴えている。がくがくと震えながら、ただ与えられるがままに快楽を貪っていれば、上条が不意に腰の動きを早め始めた。
とっとっとっ、と休み無く小刻みに突き上げられているのは、彼女の最奥である。
「ァ、あ、あ、あ……」
既に叫び声を上げる体力すら、一方通行には残されていなかった。ざりざりと髪がシーツに擦れる音をどこか遠い世界のように聞き取りながら脳まで突き上げられているような連続的な絶頂感に身を委ねるだけが精一杯だ。
細やかな絶頂が止まらない。こんな浅ましく淫らな自分はきっと、このまま地獄に落ちてしまうに違いない。繋がっている部分は相変わらず淫らな音と匂いを発しており、それが自分の身体であると認めたく、無い。
だが現実は非情で、ずるりと引き抜かれた上条の根が再び勢い良く捻じ込まれ最奥を突き上げた途端、一方通行は本日数度目の絶頂を迎えてしまった。
彼女の肢体と同じように強い強張りが一度あった後、ひくひくと不規則な痙攣が続いていく。
「っ」
その肉壁の喰らい付きに思わず上条も息を呑み、ようやく白く濁った遺伝子を叩き付けた。数回の強張りから吐き出された精液は熱く、一方通行の肉壁に染み渡る。
「……、……ァ……」
下腹部が律動から開放されたせいなのか、じんじんとした疼きだけが余韻として残っていた。弱々しい手付きで自らの下腹部を撫でた彼女は、胎内に広がる熱にぞくりと鳥肌を立てる。
これで一応一通りの行為は終わった訳なのだが、限界以上に熱せられた一方通行の身体は中々冷めることがなく。くしゃくしゃになった髪を直すこともせずに、ただただ心地よい温度に浸っていた。
上条も頬を伝っていた汗を一度拭うと彼女の上に伸し掛かり、甘くしっとりとした彼女の首筋に顔を埋める。一度精を吐き出した根は勢いを失っているものの、どうにかせずとももう一度位は役目を果たせそうだ。
ただ、普段より乱れに乱れた一方通行はそういう訳には行かないだろう。ならばせめてと、彼女が呆然としている内にチョーカーベルトをずらしその下の皮膚に吸い付き鮮やかな痕を残してやる。
互いに言葉を交わすこともなく暫く皮膚の重ね合いを楽しんだ後、先に口を開いたのは一方通行だった。
「……疲れた……」
「…………うん、ごめん」
まさかの発言に少し心を折られそうになりながら、上条は素直に謝りの言葉を口にする。優しくすると言っておきながら、結局はいつものように彼女を散々に追い詰めてしまった。
自分の辛抱の足りなさを情けなく思いながらすっかり絡まってしまった彼女の白い髪を手櫛で整えて、ぐっしょりと濡れた額にキスをする。すっかり眉尻が下がって今にも眠りに着いてしまいそうな一方通行の表情は、とても可愛らしくで無邪気で、淫らである。
「……が、」
「ん?」
二人しかいない室内では吐息のような音量の問いかけでも十分だった。真っ赤に晴れた唇から発せられる声に上条が耳を傾けると、彼女は何やら口をまごつかせた後に、首を曲げて彼と顔を合わせないようにしながら言葉の続きを吐いていく。
「…………良かった」
「……」
滅多に聞くことの出来ないお褒めの言葉に、上条は理解が遅れてしまった。直後、無事に情報を受信できた彼はぱっと表情を明るくし、必死に背けようとする彼女の顔を両手で掴む。
「なあ、もっかい言って。な? もう一回」
「言、わねェ! ンっ、な、動、くなっ、ン……ンっ」
ばたばたとした戯れあいの途中で萎えた根が再び熱を持ち始め、一方通行の蕩けた肉壁を掻き混ぜる。再び走る快感に彼女が身を竦め息を震わせた瞬間、上条の理性の紐がブチ切れた。
「良いぜ。お前がそんなこと言うんだったら、もう一回同じことするからな」
「っ、はァ?! や、めっ」


静止の言葉は、上条の唇によって塞がれる。
緩やかかつ甘やかな交わりは、まだ終わらない。

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