ある日、彼女の元にとある人物が訪れる。
彼女は彼が求めるとある『薬品』を手渡すと、人知れずにんまりと口元を歪めて見せた。

「よ、お疲れ」
「ああ、ただいま」
日没後、しかし夜と言うにはまだ明るい時間帯。
今日も今日とて鋼鉄虫の殲滅ミッションに参加していたカミヤが駐屯地に帰還すると、中央の娯楽施設のソファにだらしなく寝転がっているクライブから労いの言葉が掛けられた。
着用しているのは胸元が大きく開いたセットアップジャージで、その無防備さとミッションでの疲れの両方でカミヤは頭を痛ませる。
カツカツとブーツの底を鳴らしながら近寄ると、無言のままにファスナーを引き上げた。
「っ、何すんだ」
「はしたない格好をするんじゃない。他の奴に見られたらどうするんだ」
「誰も見てねえっての。こんなまな板」
首元まで上げられたファスナーが窮屈だったようで、クライブはカミヤに反論しながら再びファスナーに手を掛けた。先程までの位置よりは高いものの、下着を着けていないことを察するには十分な下がり具合である。
「……」
男としての悲しい性に引きずられないよう、必死にその場所から視線を逸らしながら。カミヤはクライブの隣に腰を落ち着けると、スラックスのポケットに手を差し込み、ソファの背凭れに体重を預けた。
正直な話、ミッション後は精神が昂ぶっているため欲求不満のような状態になってしまう。人としての本能が仕事をしているだけなのだが、人としての理性が強い彼は足掻いてみせる。
「つーか、お前今日はもう終わりかよ」
「ああ。この後はレポートをまとめて終わりだ。……何かあったか?」
身体を起こしたクライブが少し背を丸めるだけでジャージの前身頃が撓み、隙間からは白い肌が覗く。
その肌に噛み付きたい。
その肌に痕を残したい。
物騒な欲求が脳裏を過っていることを見透かされることを恐れたカミヤが少しぶっきらぼうに訊ねるが、クライブは気にした素振りもなく。ジャージのポケットから小さなドリンク剤を取り出した。
「別になんもねぇけどよ。疲れてんだろ?やんよ」
「……」
手渡された小瓶のラベルにはS.I.V.Aのロゴが印刷されており、栄養成分なども表示されている。彼らの同僚にそう言った薬剤を作ることを得意としている人間がいた事を思い出しながら訝しんでいれば、その様子を眺めていたクライブが不満げに言葉を漏らす。
「なーに疑ってんだぁ?単なる栄養ドリンクだっての。ノアの奴から余ってた分貰ったんだがな、俺ぁそんな疲れることも最近してねーし」
「なるほど」
謎のドリンク剤の背景を知り納得したカミヤは、その蓋に手を掛けた。二人しかいない静かな空間の中でぱきり、と金属が割れる音が響く。
「じゃあ遠慮なく頂くとしよう。感謝する」
「へーへー。気にすんなよ」
クライブに対する情欲を紛らわすように小瓶に口をつけたカミヤは、そのままぐい、と呷り。その液体を飲み下す。数秒かからず全量を飲み干したカミヤが再びクライブに視線を向けた、その時だった。

ぐにゃり、と、視界が歪んでいく。

「……っ」
その直後、訪れたのは先程までとは比べ物にならない渇きと飢えだった。ミッションで疲弊しているはずの身体の奥からは嫌な温度が湧き上がり、目の前の恋人に発散しろと脳内で響き渡る。
まずい。と声を出すことも出来ないままに立ち上がろうと試みたカミヤだが、うまくバランスを保つことが出来ずにクライブへと倒れこむ形になってしまう。
「っ」
「っ、おい、どーした!」
どさ、と音を立ててソファに押し倒された彼だったが、今はそれに不満の声を漏らしている場合ではない。
どう考えても自分が渡した薬剤で恋人の様子が変わってしまったことに驚いたクライブは、倒れ込んだカミヤの肩を掴み声を掛けた。
「ヘイ、返事しな!カミヤ!」
「…………」
しかし カミヤにとってはそれどころではない。普段より強く感じる甘い香りや服越しに感じるクライブの身体が、彼の情欲に油を注ぎ続けているからだ。
柔らかな肌が上気すれば何色に染まるのか。
その時クライブはどんな顔で泣きじゃくるのか。
それら全てを覚えているし、また、まだ知らない表情を知りたいとも思う。
心配そうに名前を呼び続けるクライブに対し、カミヤは返事の代わりに背中へと手を回した。
「……んだよ、心配させんなっつーの」
目の前の男が抱く熱など知らないクライブは、安堵の息を吐く。
そして、それが引き金だった。
「く、らいぶ」
「あ?疲れてんならさっさと部屋戻れっ、」
呼び掛けに対する答えが最後まで吐き出される前に、カミヤはジャージのファスナーを一気に引き下げた。
「っ、はぁ?!」
突然の行動の意図が理解出来ないクライブは当たり前のように混乱し、ジャージの前を直そうと手を伸ばす、が。
「クライブ」
静かに。しかし確実に何かを含んだ声色で恋人の名前を呼ぶカミヤの手がクライブの細い手首を掴みソファに押し付けた。
普段からは考えられないほどにその動きは乱暴で、クライブは思わず眉間に皺を寄せる。
「ふざけんじゃねぇ、何盛ってやがんだよ!さっさと退け!」
天井の照明を背負ったカミヤの表情はクライブから上手く読み取ることが出来ない。しかし、荒い呼吸と腿に当たる堅い感触が全てを物語っている。
呼吸の度にジャージが脇へと落ちて行き、白い肌の露出面積が上がってしまう。
緊張で強まる心拍をカミヤがどう受け取ったのかは解らなかったが、喉仏が上下したことだけは見て取れた。
「(やっべぇ。……どーにかして逃げねぇと……)」
金的を蹴り上げてやろうかと思ってみるものの、あの場所を強打した際の痛みを知っているクライブはどうしても躊躇してしまう。
必死に身動きをして自分から逃げ出そうとする彼の姿は、カミヤの雄を擽る材料でしかない。
ぱく、と口を開いた彼はそのまま。キスをする際と同じ様な動きでクライブの首筋に顔を埋め。
その白い肌に歯を立てた。
「ぃぎっ……!!」
突然の痛みにクライブは思わず歯を食いしばり、呻きを漏らす。皮膚が裂けるか裂けないかの瀬戸際まで圧力を掛けられた肌は、じわりと内出血を起こしてしまう。
「……はな、せっ、ての……っ!」
身を捩り、腕に力を込めて拘束から逃れようとしても、叶わない。カミヤが漸く口を離す頃には、クライブの肌は痛みから上気してしまっていた。
冷や汗で湿った肌からは雄を誘う匂いが上り、カミヤの理性を保つ紐には遠慮無しに刃が立てられる。
茹だった脳では既にクライブと繋がることしか考えられず、自らが付けた歯形を舌先で撫でながら。カミヤはクライブのなだらかな胸の肉を揉みしだく。
「っ、おい、マジ、で」
皮下脂肪が少ない分敏感なその場所は、既に明るい照明の下に晒されていた。柔らかな桃色の先端は荒々しい刺激のせいで既に充血しており、カミヤの指が擦れる度にひくりと背中が浮き上がる。
「(なんで、こいつ、いきなり)」
刺激のせいで散らばってしまう思考を何とか繋ぎ止めながら。クライブは目の前の男に恨みがましい視線を送ってみるものの、本人の動きが止まることはない。
ただ、なぜ愛しい恋人がそんな表情を浮かべているのだろうか。と、呑気な疑問を抱いたカミヤは、爪の先ほど残された理性の中で思考する。
「(……ああ、そうか)」
自分が相手をどう思っているのか。
ちゃんと口に出さないと伝わらないぞ。と、年上の同僚に言われた言葉を思い出したカミヤは、クライブの青い眼を一直線に射抜き言葉を零す。
「好きだ」
「……は、っ?」
「愛してる」
「…………っ!」
ストレートにも程がある愛の告白を受けた側は、羞恥から顔を真っ赤に染め上げた。
しかしカミヤは態度を変えることなく、クライブの身体を貪りながら言葉を吐き続けてしまう。
「好きだ。もうお前しか、見えない」
「……て、め」
耳元で。熱の籠もった呪文を呟かれたクライブにもその熱は移っていく。下腹部がぼてりと火照り、抵抗のために込めていた力はずるずると抜けていく。
「(……んな、欲求不満だったのかよ)」
カミヤの求めには応じ、自分からも進んで股を開いていたと思うのだが。と言う自責を感じてしまえば、後はもうおしまいだ。
抵抗が弱まったことを感じたカミヤはクライブのズボンに手を掛け、膝までずるりと引き下ろす。
クライブの下腹を覆っている下着は、殆どが紐のようなデザインだ。本人は「楽だから」と言う理由だけでチョイスしたのだが、今のカミヤには通用しない。
余計な言葉を発することなくその下着に手を伸ばしたカミヤは、割れ目を隠している生地をずらし指で表面を撫で上げる。
「っ、ん!」
性急な愛撫に若干の痛みを感じるものの、直ぐに溢れ出した愛液が滑りを促し痛みを快楽へと作り替えた。
くち、と言う音が広い娯楽室内に響く度に、クライブの背中は浮き、細い脚はひくついてしまう。
「っ、ぅ、ぐ……、んんっ!」
行為への抵抗を無くしたとは言え、いつ誰が来るかもしれない場所である。ジャージの袖口を噛み、必死で声を押し殺そうとするクライブの努力を、カミヤは乱暴な愛撫で踏みにじる。
固くなった肉芽を親指でこりこりと潰しながら、濡れた腹の中を掻き混ぜられる、感覚。
幾度と無く身体を重ねている内に知った弱点は効率良くクライブを追い詰めた。
「オイ、っ、ミヤ……っ、そこばっ、……そこ、ばっか、やめろ、……って、っ」
溢れた液体はソファにまで垂れ落ち、クライブの胎内はカミヤの指に食らいついて離れない。
無論、カミヤがその制止の言葉に耳を傾けるはずも無く。
「ぁ、マジ、やべ、あ、イ、くっ!イッ……」
びく、とクライブの身体が一度大きく痙攣し、直後にだらりと弛緩した。しかし胎内は火照ったままひくつき、更なる刺激を求めているかのようで。
絶頂の余韻に浸り、髪を肌に貼り付かせながら必死に呼吸を整えるクライブの姿は、実に淫らだった。
カミヤは着用していた制服の前を開けると、ベルトを外し下肢を露出する。最早遠慮する必要もないと肌着もずり下ろし勃起した根を露出し、クライブの中から指を引き抜き代わりと言わんばかりにあてがった。
「オイ、待て!今イッたばっかなんだよ!もーちょい、……ん、ぅっ」
クライブの制止は虚しく、途中で遮られてしまった。堅く腫れた亀頭が火照った膣壁の肉を遠慮無く抉り、掻き混ぜたからだ。服を着たままの行為と言うのがどこか背徳的で、クライブの背筋には快楽と言う名前の電流が走る。
「……ま、てって、言ったじゃ、ねーかぁ……」
ずっぷりと根元まで埋め込まれたカミヤを感じながら、クライブははっはっと犬のように呼吸を整える。
敏感な肉壁がひくつく度に響く快感を逃がそうとするが、残念ながらその前にカミヤがずるりと腰を引いた。
「んあっ!?ぁ――……!」
せっかく身体の隙間を埋めていたモノが、無くなってしまう。根を逃がさないようにと肉壁が絡み付くが、それはクライブを追い詰めるだけだった。
カミヤは快楽に溺れる恋人の表情に満足げな笑みを浮かべると、再び最奥を突き上げる。
「――……っ?!」
子宮の入り口を亀頭で小突かれたクライブは大きく目を見開き、がくがくと腰を揺らす。
視界に火花が散るような感覚に声を出せずにいれば、カミヤが再び腰を引き、直後に突き上げる。単調なピストン運動だったが、それでもクライブを追い詰めるには十分すぎた。
ソファの軋む音と律動は同調しているようで、ぎっぎっぎっ、と途切れることなく響き続けている。乱暴に掻き混ぜられ過ぎた結合部は二人分の粘液で泡立ち、行為の激しさを物語っている。
「……ぁ、あ゛っ、あ、っく、イ、また、イッ……」
何度目かも分からない程に突き上げられながら、クライブは潤んだ瞳でカミヤに訴えた。
普段なら同じタイミングかカミヤの方が先に達してしまうことが多いのに、胎内に収まる肉塊は相も変わらずグロテスクに堅さを維持したままである。
カミヤに先に絶頂させられることに羞恥とほんの少しの屈辱を覚えながら、クライブは歯を立てている袖口で必死に声を殺し。
「っ、っう、……う゛……っ!!」
びくりと身体を戦慄かせながら、二度目の絶頂へと至ってしまった。胎内はすっかり蕩けてしまい、クライブの口の端からはだらしなく唾液が垂れる。
「……」
しかしカミヤは休憩を挟むことなくクライブの腰を掴むと、律動を再開した。身体の奥を抉る根の熱と体積に思わず本能的な恐怖を抱いた彼は力の入らない身体を叱咤し腕だけでカミヤから逃げようと試みたが。
「あ゛っ、ぁ、オイ、休ま、せ、ん、……っ、っ!」
上半身だけが俯せという不自然な体勢は当たり前のように負担が掛かる。更に言えば先程までとは違う角度で敏感な胎内を抉られているので、奥を小突かれる度に脳が痺れて理性を崩壊させてしまう。
そんな、青い眼から幾つも涙の筋を作りながら喘いでいる途中で、不意にカミヤの動きが止まる。
「ぁ、……は」
助かった。と思いながら。クライブは必死に呼吸を整える。カミヤは根が抜けないように注意を払いながらクライブの脚を掴み上げ下半身も上半身に倣って俯せにさせ、膝を立たせた。
「は……?」
その体勢の意味を理解する前に。
無慈悲な律動が再開される。
「〜〜……っ!」
無遠慮に下肢を叩きつける音が粘膜を掻き混ぜる音と混ざり、その度にクライブの喉からは悲痛な喘ぎが漏れた。
逃げようにも彼の細い腰はカミヤがしっかと掴んでおり、そもそも身体が何の言うことも聞いてくれない。
カミヤも上体を倒しクライブの背中に密着すると、真っ赤に染まった耳元で久方ぶりの言葉を吐いた。
「中、とろとろだな。気持ちいいぞ」
「……ん、誰の、せいだ、と、ぁ、んぁ、ぁっ」
愛液は重力に従い、結合部からクライブの内股へと垂れている。まだ憎まれ口を叩く余裕があるらしい彼への悪戯として、カミヤはその結合部へと手を伸ばし、赤く腫れた肉芽を指の腹で押しつぶした。
「ひ、きっ?!」
ただそれだけだと言うのにクライブの腰は大きく跳ね、膣内は激しく収縮を繰り返す。面白い玩具を見つけた子供のようにカミヤが肉芽を指で弄びながら最奥を突けば、その刺激に耐えられないクライブはイヤイヤと首を横に振った。
しかしカミヤは酷く愉しげに口元を歪めるだけで、手と腰の動きが緩まることはなく。
ちゅ、ぐちゅ、と態と音が激しくなるようにと下腹を弄ばれたクライブは堪ったものではない。
「か、みゃ、だ、ぇ、それ、マジ、やぶぇ、ぁ、あ゛、イッ、イ……っ!」
肉芽を苛めているカミヤの手と自らの手を重ね制止を懇願した所で、それは彼の嗜虐心に脂を注ぐだけだった。
カミヤはふ、と頬を緩めると空いた手をクライブの脇へと差し込み。
ソファの生地に押し潰されているクライブの堅く尖った乳首を抓み上げた。
「イ゛……!」
一度達してしまえば、二度目三度目など簡単に達してしまう。だというのに必要以上執拗に弄ばれた彼は、それが限界だった。
感電した蛙のように身体をひくつかせながら、言葉を発する余裕もなく、数回目の絶頂の波に身体を委ねてしまっていた。
その目に光は宿っておらず、四肢からは力が抜けきっている。ただ、苛め抜かれた胎内だけは未だ与えられない熱に焦れる様に、きゅうきゅうとカミヤに吸い付いていた。
肩に付くまで伸ばされたオレンジ色の髪はすっかり汗で湿り、普段は低い肌の温度も湯気が立ち上りそうな程に上がっている。
どこから見ても限界であることは明白だったが、まだ熱を発散出来ていないカミヤは貪ることを止められない。
「クライブ。起きてるか?」
「る、……っせ……」
カミヤがまだ飢えていることを身を以て知っているクライブは震える腕で上体を起こし、口元を拭う。
「もう少しなんだがなぁ」
「そー、……かよ」
よたよたと四つん這いで前進しカミヤの根を自ら引き抜くと、クライブは正面に向き直り半端に脱がされていたズボンを床へと落とした。
これで、彼が服を身に着けているのは上半身だけである。
「座れ、よ。そこ」
「? ああ」
クライブに命令されるがままにカミヤはソファに腰を掛け、床に足を付けた。未だ熱を保ち反り返っている根は二人分の粘液で濡れ、ねとりと光を反射させている。その事実から目を逸らすように潤んだ瞳を伏せた彼は、カミヤの身体を跨ぐ。
「……っ」
一度受け入れていたモノを再び受け入れるのは容易いもので。クライブがカミヤの首に腕を回しながら腰を落とせば、根はぬるぬると飲み込まれていく。
敏感な肉を抉られ再び視界に火花が散るが、唇を噛みしめながらそろそろと続行する。
くちゅ、と音を立てながら根元まで受け入れた後、クライブは静かに息を吐いた。
「ほら、動け、よ」
「……ああ」
可愛い恋人に強請られたカミヤは、彼の背中に手を回して抱き締める。クライブの体力が限界であることは見て解るので、これ以上行為に付き合わせるのは難しいだろう。
「クライブ」
囁くように名前を呼べば濡れた青い眼と焦茶色の目が交わり、当たり前のようにどちらとも無く唇を近付けてキスをする。
思えばこれが、今日初めてのキスだった。
「ん、……く、っ」
「……ん、……」
今までの律動よりは大分穏やかに、腰を揺らしながら舌と唇を絡め、互いの境界線を曖昧にさせる。
カミヤの腰に脚を絡ませたクライブは弱々しく腰を揺らし、少しずつ与えられる快楽を貪った。
密着しているおかげで心音が互いに響き、固い乳首がカミヤの身体に押し潰される。膣内の柔らかな肉を抉られる度にクライブは甘い悲鳴を上げながら、カミヤの舌に吸い付いた。
「ん、ぅぃ、んっ、う」
「っ、……ぅ、……」
唇の角度を変えながら、啄むように、擦り会わせるように飽きることなくキスを繰り返し、快楽を共有する。
酸欠と快楽のせいで先に限界を迎えたのはクライブだ。全身をがくがくと震わせながら下腹からの快楽を受け止め、カミヤにすがりつく腕に力を込める。
「……イク、ときゃ、テメーも、道連れ、だから、……な」
「……」
何度も自分だけ気持ち良くなっては申し訳ないという事なのだろう。カミヤもぞわりとせり上がる熱を感じながら、律動に激しさを織り交ぜた。
「ああ。……今日も、一緒に、行こう、な?」
「あ、ぁ、ぅ、……ぁ――……っ!」
極まった場所を激しく突き上げられたクライブは、直後に当たり前のように絶頂した。カミヤの熱も漸く弾け、蕩けきった膣の肉は一滴残さずそれを受け入れる。
腹の中で根が脈打つどうしようも無い多幸感に満たされながら、カミヤに全てを預け。クライブは全身から力を抜いた。
目を開けていることすらとっくに限界で、疲労と余韻に包まれながら彼は静かに瞼を閉じた。
「かみ、やぁ」
「ん?」
「あい、ひて、る、ぜぇ」
最早呂律の回らない言葉だったが、カミヤはそれに抱き締める腕に力を込める形で返答する。
クライブは満足げに笑みを浮かべると、そのまま眠りの世界へと旅立ってしまった。

「………………あれ。俺は一体」
カミヤが正気に戻ったのは、その直後のことだった。
クライブから栄養剤を貰って、飲んだ途端身体が燃えるように熱くなって、クライブのことを独占したくて堪らなくなって。
記憶を遡っている途中で恋人のことを思い出した彼が周囲から情報を集めようと視線を動かせば。
脱ぎ散らかした服。
ソファに残る体液。
極めつけに、繋がったまま意識を失っている、恋人。
彼の首筋には赤黒い点線で描かれた楕円があり、それが何かと感づいたカミヤは自己嫌悪に陥ってしまう。
「(……女子に乱暴を働くとは……)」
クライブの性格であれば「気にするな」とフォローもしてくれるだろうが、そう言う問題でもないのだ。
兎に角、彼が意識を取り戻したら謝ろうと心に決めたカミヤは、そっとクライブの腕を外させ根を引き抜くと、ソファに横たえさせた。
塞いでいた詮が無くなったことで、すっかり弛緩してしまったクライブの中からは精液が垂れ落ちる。
「……!」
その淫らさに思わず勃起してしまいそうにもなったが、今はそんなことをしている場合ではないと首を振る。
彼の乱れた服を直し、ハンカチでソファを拭き、行為があったと言う痕跡を消すと、意識を失ったままのクライブを横に抱き抱えた。
その身体の軽さに驚きながら、自室に着いた後どうクライブに謝るかと脳内でシミュレートをしてみるが、いまいち頭が働かない。
溜め息を吐きながら娯楽室の引き戸を開けたところで、こつりと靴にぶつかる固い物に気が付いた。
「……?」
足下を確認しては見たが、クライブを抱えているため自分が何を蹴ってしまったのかが判らない。
安全の為に周囲を見渡してみたが、やはり何も見当たらない。
「??」
頭上に疑問符を浮かべたカミヤであったが、今はそれよりクライブを休ませる方が得策だと判断し。
気怠い疲労感を覚えながら、自室へと向かった。





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