※ノアにゃんはサイードおじさんに飼われている可愛いにゃんこです(外見とかはロ…くらいぶにゃんさんちの設定を踏襲)


「おーい、ノア。どうしたんだ」
「……」
中年の男サイードは、自らの飼い猫であるノアに対し声を掛けた。彼はなぜかここ数日サイードの傍に近寄りもせず、必要最低限の家事を行った後は毛布にくるまって横たわっている。
もともと頭の良い猫であったので、「体調が悪いのか」と問い掛ければぶんぶんと頭を振る。しかし彼が我慢強い性格であることを知っているサイードが近寄り触れて確認を取ろうとすると、蛹のように毛布で身を固めたり、酷い時にはちゃぶ台の下に潜り込んで数時間篭城してしまうのだ。
可愛らしい顔をして中々のヤキモチ妬きであることを踏まえながら。
「(最近他の奴とは遊んでねぇんだがなぁ……)」
胸に手を当てて記憶を探ってみるものの、心当たりは見つからない。
「ノア。ほら、お前の好きな虫のオモチャ買ってきたぞ。どうだ」
「……」
返事がない。強いて言うなら、耳がひくりと動いたくらいだ。
これが例えば隣家の少年であったなら一旦退いて様子を伺うという手段をとっただろう。しかしこの男はもうそこそこに人生経験も積んでいるので。また、飼い猫との体格差も非常に大きいため。
実力行使が可能なのだ。
「ノア。ノーア。……ほら!大人しくしろよ!」
「っ!!?」
歴戦の猛者。伝説の傭兵。彼を表す際に用いられる表現の基となる技術を無駄遣いした彼は、足音を殺しながら近付きノアを捕獲した。
突然動きを制限されたノアは緑色の目を驚きから大きく開きじたばたと暴れてみるものの、一切の抵抗は封じられてしまう。防具と化した毛布は一瞬で剥ぎ取られ、派手に体を動かすために付けられた首輪の鈴がチリチリと音を立てた。
「みゃ、あっ」
「こっち向きな」
柔らかな茶色の毛で覆われた耳元でサイードが命令を行えば、ノアは反射的に身体を強ばらせ抵抗をやめる。『あのこと』が未だ彼の心に傷を残していることを自覚しながらも、サイードは腕の中の猫の顔をまじまじと眺めた。
「……」
「みゃ、……みゃ、あ」
白い肌は火照り、全体的に桜色に染まってしまっている。何かを我慢するかのようにカチカチを歯を鳴らしながら。焦れったそうに太腿同士を擦り合わせながら、ノアはサイードからの視線を甘んじて受け入れる。
彼はここ数日、交尾のことしか考えられなかったのだ。サイードの横顔を見上げながら。年齢にそぐわない引き締まった体躯を眺めながら、思うことは『抱かれたい』ということばかり。
そもそもメスとの行為を知る前に彼に抱かれたノアにとって、交尾とは彼に抱かれることであって。生まれて初めて発情期を迎えた彼がそうなってしまうのも、仕方がないことなのだ。
『さいーど、さん』
せっかく我慢をしていたというのに、サイードの方から近づいてきてしまった。これではもう我慢など出来る訳もない。ふ、と熱の篭った息を吐いたノアは、全体重をかけてサイードを押し倒した。
「お、う…………っ!?」
いまいち状況を把握しきれていない状況で、サイードが何事かと声を出す前に。ノアの火照った柔らかな唇は、サイードの同じものへと吸い付いた。
角度を変えながら何度も触れるだけのキスを行った後は、ざらりとした触り心地の舌がサイードの唇を舐め上げる。ほんの一瞬でもリードされたことに不覚をとった彼が口を開きその舌を吸い上げれば、喜びからなのだろう。
彼の上に乗っている少年の体が震えた。
『ん、……、さいーどさん、……さいーど、さん』
彼が今着用しているのは、サイードから買い与えられたポロシャツとジーンズではなく。サイードが着用していたYシャツだった。下着は着用しているものの、ボクサーパンツの中心はすっかり膨らみ、染みを浮かばせている。
彼がこうなった原因はわからない。しかし確実に『欲情している』という情報を得たサイードも、スイッチを切り替えた。普段はここまで乱れることのない彼だ。このチャンスを逃すなどどいう愚行を犯すわけには行かないのだ。
「ノア」
切なく喘ぎながら鳴くノアの頬を舐め、顔の輪郭を舌で辿る。あまり室内から出ない彼の肌は紫外線によるダメージもなく、どこまでも柔らかで張りがある。
微かな塩気を味わいながら首筋を甘く食めば、「にゃ」と甘い声が溢れて落ちた。ノアがここまで出来上がっているのだから、普段のような優しい前戯もそう必要ではないだろう。
そう結論づけたサイードは彼が着用しているシャツの隙間から手を差し込んで、下着に手をかける。
「ぁ、にゃ、あっ!」
濡れた下着が腫れ上がった彼の根の先を軽く擦るだけで、全身に刺すような刺激が走った。大げさに身体を震わせたノアの大きな瞳からは、ぼろりと涙の粒が溢れて落ちる。
ふっふっと短い呼吸を繰り返しながらなんとか絶頂は耐えているようだが、限界が近いことは明白だ。ふと、悪戯心の芽生えたサイードは自らの髪を結ぶ小さな樹脂製のゴムを外すと。
ノアの腫れ上がった小さな根の元を締め上げた。
「ひぎゃっ!!?」
「おうおう、可愛いらしい顔するじゃねぇか」
突然の圧迫に再びノアの体は撓り、快楽を堪えていた彼の口元からは唾液が溢れる。細い太腿はガクガクと震え、腰と尻尾は切なげに揺れている。サイードはべろりと舌なめずりを行うと、上体を起こしノアを毛布の海へと沈めてしまう。
ちりん、と言う鈴の音と共に響くノアの喘ぎに、男の本能が刺激されてしまったのだ。
服を脱ぎ、スラックスのベルトを緩めたサイードは無遠慮にノアの足首を掴むと、そのままがばりと大きく開かせた。彼自身の先走りと汗でべとりと汚れた内腿の奥には、柔らかな肉の色をした粘膜が男を誘うようにひくついている。
「にゃ、みゃあ、にゃっ」
恥ずかしい。苦しい。そう言った意味合いの言葉を吐いているのだろうが、残念ながらサイードには伝わらない。解放されなかった熱が内側でこもり続けることの切なさに焦れたノアは、毛布に自らの髪を擦り付けた。
「悪いな。オジサン、今日はちょっと遠慮出来そうにねぇわ」
くしゃりと髪を掻き上げた男は酷く嗜虐的な形に口を歪めると、自らのスラックスのベルトを緩め、下肢を露わにする。臍に付きそうな程に反り返った根の先端からは多少の先走りが垂れているので、これを潤滑剤の代わりとすることにした。
汗でぬるつくノアの入り口に先端を当てれば、その熱に驚いた彼の腰が浮く。慣れない体勢での行為に彼がどのような表情を浮かべるのか。
それを愉しみに思いながら、サイードは勢いを付け。大きく開いた傘から脈打つ太い幹の根元までの全てで、ノアを貫いた。
「に…………っ!!!!」
普段であれば考えられないほど強引に与えられた快楽に、ノアの身体は痙攣する。普段の彼であればここで一度精を吐いて絶頂を迎えていただろうが、今その場所は戒められ溜まった熱は体内を責め立てるだけだ。
じぶんがこんなにくるしいげんいんはなんなのか。辛うじて残った理性で原因を探り当てたノアが自らの手でその戒めを解こうと試みるも、その手はサイードによって抑え込まれてしまう。
「まだまだ、始まった、ばっかり、じゃねぇか。なぁ?」
言葉の区切りと同じタイミングで腰を打ち付ければ、ノアも同じように甘い声を上げて刺激を受け入れる。待ち望んでいた熱がノアの子宮の名残を擦り上げれば、雄の自身では考えられない幻想を抱くほどに脳内が灼かれていく。
根元まで押し込まれ、傘の括れを感じさせるほどに引き抜かれる。単純な運動だが、その為に逃げる術など存在しない。
「ひっ、ひっ、ひっ、にゃ、あ、あっ!」
顔をこれ以上無い程に赤く染め上げながら。快楽を受け入れるだけで精一杯であったノアも、サイードの動きに対応するかのように腰を揺らし始める。サイードには突き上げる度に鳴る鈴の音が酷く淫猥な物に聞こえてしまった。
たん、ちりん、たん、ちりん。汗で濡れた肌のぶつかる音と鈴の音と、荒い呼吸。また、汗と粘液の混ざった欲を刺激する匂いが漂い、更にノアの脳内を麻痺させる。
汗と涙と唾液で汚れた可愛らしい顔に何度もキスをしながらも、サイードは腰の動きを止めることをしない。時折首筋に噛み跡を残しながら、一回り以上年の離れた少年の形をした猫の身体を余すことなく貪っていく。
「にゃ、ぁー……、にっ、みゃ、ぁっ、あっ、あっ……」
過度に与えられた熱で理性を灼き尽くされたノアの緑色の目は、ぐりりと上向き始めてしまう。締りのない、それでも艶やかな唇の端からは唾液が垂れ、毛布に大きな染みを作っていく。
声にも覇気はなく、今の彼に残っているのは浅ましい肉欲だけなのだろう。
普段の理性的な表情がここまで崩れるものなのか、と背徳感に似た興奮を覚えながら、勢いを落とすことなくサイードが突き上げて居れば。
びくん、と一度大きくノアの身体が跳ねた。
直後、華奢な体躯からは力が抜け、かたかたと小刻みな痙攣を始めてしまう。
サイードはノアの変化の意味に気がつくと、一度息を吐いてから彼の根を戒めている輪ゴムを外した。すると先端の鈴口からはゆるゆると精液が垂れ落ち、止めど無く彼の下腹を汚していく。
「……出さねぇイキ方覚えたのか。オジサン、お前がそんなにエロいこと知ってたなんて知らなかったぜ」
くっくっと喉奥で笑いながら意地悪く声を掛ければ、声にならない鳴き声が返事のように発される。気付けば眼鏡はとっくに毛布の上へと転がり落ちており、涙と相まって彼の見える世界の輪郭を曖昧にしてしまった。
『おなか、きもち、……いいです……おなかのなか、さいーどさんで、いっぱいで……』
みゃあ、にゃあ、と力無く鳴き、意識を保つことすら限界を迎えていながらも。ノアの腰はゆらゆらと揺れ、快楽を貪ることを止めようとはしない。男はその様に再び興奮を抱くと、繋がったままに彼を俯せにさせた。
正真正銘、動物の交尾の際にされる体勢を初めて取らされたノアは、その被支配感にぞくぞくと身体を戦慄かせる。サイードの大きな両手はがっちりとノアの腰を掴んでいるので、自分の思う通りに動くことができない。
顔を見ることはできないが、体内に収まる熱や背中に感じる気配は間違いなくサイードのものだ。ノアは彼しか知らない為に、逆を言えば彼以外の者に対しては過敏に反応をする。
「俺はまだだからよ、途中で寝るんじゃねぇぞ。最後まで起きてたら、ちゃんとご褒美やるからな」
「にゃ……ぁ、ぅ」
状態を床に預け、尻だけを持ち上げるような形で貫かれながら、ノアは微かに首を縦に動かした。彼の長く柔らかい毛が生えた尻尾は既に二人分の粘液が絡みついてぬらりと部屋の照明を照り返しているが、その卑猥な様を見ているのはサイードだけだ。
了承を得られ気分を良くしたサイードはゆるゆると腰を引き、一度達し敏感になったノアの体内を責め始める。
「ひっ、ぎ……っ、にゃ……!!」
せっかく体の中を埋めていたものが、いなくなってしまう。爪の先ほどの心細さを感じたノアが首を左右に振り腰を振って追いかけようと試みるも、男の手はそれを許さない。
直後、絡みついてきていた肉壁を割り開くように根を潜り込ませれば、喜びの声を上げながら彼は全てを受け入れた。擦られすぎて赤く腫れた後孔は限界まで広がっており、サイードに食いついて離れない。
この調子なら気遣いは不要だろう、と。男はノアの両腕を掴むと、リアカーのように自らの方へを引き上げた。
「っ、!?」
突如状態を反らされ、不安定な体勢で行為に及ばなくてはならなくなったノアの身体は緊張し、腸内が安定を求めて食らいつく。頭の中は蕩けているくせにしっかりと快感は貪りながら、ちりちりと鳴る鈴の音を環境音として受け取っている。
その鈴も今ではノアが零した唾液でぺったりと濡れ、揺れる度に毛布へと飛沫が散った。
「ぁ、ぁー……、あっ、にゃっ、みゃぁ、あっ!」
悲痛な、しかし確実の喜びの混ざっている声に気を良くしたサイードは、再び激しい律動を開始する。ノアの根の先端から垂れた精液は彼の太腿に垂れ、律動と同じリズムではたはたと揺れていた。
「ほら、ちゃんと、後ろ、締めねぇと、終わらねぇ、ぞ?」
凹んだ背筋に汗が溜まる様を眺めながら意地悪く耳元で囁けば、汗で湿った毛深い耳がひくひくと動く。意味を理解しているかはさておいて、きゅう、と後孔の締りは強くなり、ノアの体全体が再びかたかたと震え始める。
『もう、サイードさ、むり、むり、ぜったい、むりで、す、はやく、は……っ!』
不規則に痙攣を始める体内に、サイードの欲も競り上がる。もしノアが人語を話していれば彼の言葉は男の嗜虐心を煽るだけであったので、普段であれば壁を感じるものだが、今は不幸中の幸いだろう。
普段であれば彼に合わせて律動のペース配分を行うのだが、今日はとにかく、男自身が満足するように動くことにした。ノアが息継ぎさえ行えないほど激しく根で体内を抉り、その形を刻み付ける。
「っ、……、っ、ノア、……っ!」
「にゃ、にゃあ、みゃぁ、ぁっ、ぅ、ふ、んに、……っ!」
もはや自分が声を上げていることすら、ノアには理解できない。サイードに与えられるがままに快楽を貪るが、小さな体には当たり前のように限界がある。
数度。数十度、弱い場所を突き上げられたノアは、再び身体を大きくびくつかせる。
『さいーどさ、も、も……っ、――――っ!!』
訴えの言葉が最後まで紡がれる前に、ノアの視界が白く染まる。視界に世界を捉えていても、それを認識はしていない。薄く細い体を反らせたまま絶頂を迎えたノアは目から光を消し、ぐたりと脱力した。
だらしなく惚けた顔はどこか目覚めたばかりのようで、満足げに目は細められている。サイードが腕を離すと、柔らかな毛布の海に沈み込んだ。
「ぁ、ぁ、……にゃ、あ」
絶頂を迎えたものの、未だにノアの体内には男がしっかと根付いている。律動は止まっているが、じんじんと痺れるような快楽が波紋のようにノアの全身を犯すことには何ら変わることがない。
それは行為がまだ終わっていないことを意味しており。ノアが火照った脳で理解する前に、再びサイードは腰を叩きつけた。
「ぁ」
再び、ノアの全てを掻き乱す強い快楽が下腹部からずしりと響くが、反応できるほどの体力は既に無い。ひたすら男の欲を受け止めるだけの存在と化した少年は吐息混じりの声を上げながら、その快楽に溺れていく。
熱を十分すぎるほどに溜め込んだ男の根はグロテスクに血管が浮いており、早く欲を発散させろと数度の強張りを繰り返す。すっかりノアの体内は解れてしまい締りなどあったものではないが、その分蕩けた肉が絡みつくので結果、男には都合がいい。
たんたん、と。心臓の鼓動より速いリズムで何度となくノアの最奥を抉り抜いた男は、漸くその場所へと辿り着く。
「……っ!」
ぐ、と。顳かみから汗を一筋垂らし、口の中に溜まった唾液を飲み込んで。男は熱の全てをノアの中に注ぎ込んだ。
「ぅ、ぁ、にゃ、あ……、ん……っ」
どろどろと熱い粘液の感触に、ノアは身を震わせる。三度目の絶頂こそ無かったものの、急激に味あわされた熱は彼の体力をこそぎ落とすには十分だった。
膝で支えることすら出来なくなったノアの下半身はずるりと毛布の上に落ち、ぽっかりと空いた穴からは今注ぎ込まれたばかりの遺伝子が泡立ちながら逆流する。
「……ノア」
「…………みゃ、あ」
「よしよし。……ちょいと無理させすぎちまったな」
疲れ切ったノアの頭を男が撫でれば、せめてもの抗議となのか。ぱたぱたと尻尾が毛布を叩いた。男は苦笑を浮かべると、部屋の隅にあるティッシュ箱へと手を伸ばす。



「発情期?」
行為の後、サイードとノアは仲良く入浴し、今ノアは男の膝の上で本を開いている。それは男がノアを飼い始めた頃に買った初心者向け飼育方法のテキストで、この仕草がどんな意味を為すのか。与えてはいけない食事など、細やかに記載されている。
その中にある『発情期』と言う項目をノアは指差し、石鹸の香りがする白い肌を再び赤く染め上げた。どれどれ、と男が見出しの下記載されている文章に目をやれば、なるほど確かに。普段のノアからは考えられない程に乱れた理由が納得できる。
恥ずかしそうに尻尾をそわそわと動かしながら、ノアは男へと身体を摺り寄せた。いくら激しい行為を行ったとで、どうしてもこの期間は常に欲求不満のような状態になってしまうらしい。
「つうことは、だ。お前さんが俺を避けてたのは……」
「みゃあ……」
まるで、ごめんなさい、と謝るかのように鳴き声を上げる彼に対し、サイードはよしよしと頭を撫でて宥めてやる。横目で情報の詳細を確認する限り、どうやら発情期は個体差はあれど最低一週間はあるようだ。
という事は、と男の脳内が言葉にすることも躊躇われるような桃色に染まる。
ノアは自らの危機に気づかないまま、久しぶりに感じるサイードの暖かな掌の感触を楽しんでいた。









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