オレに乗れねー波はねぇええっくす!! | ナノ
買い物から帰るとガゼルがいなかった。みんなに聞いても知らないと言われて、慌てて外へ飛び出す。

「風介ー! 風介どこー!?」

走り回って走り回って、それでも見つからなくて。
もしかしたらすれ違いで風介はもう帰ってるかもしれない、そう思って帰ろうとしたときだった。

「パスパース!」
「そのままシュートだ!」
「よーし、来い!」

きゃっきゃと楽しそうな子供の声。声がした方を見ると、数人の子供が公園でサッカーをしていた。
そしてその近くのベンチに、見慣れた後ろ姿を見つける。

「…風介?」
「!」

風介がバッと振り返った。そして私の顔を見て、「…なんだ、名前か…」と言い、サッカーをする子供たちに視線を戻す。
これは帰ろうと言ったところでそう素直に帰りそうもないな、と思った私は、風介の隣に腰をおろした。

「………名前」
「なに?」
「……私も…あの子供たちのように…サッカーをしていたことが、あったか」

突然の風介の問いに、私は少しだけ目を丸くした。「当たり前でしょ」と答えると、風介は少しだけ黙ってまた口を開く。

「……もう一度…あの子供たちのようにサッカーができると、思うか…?」

ぎゅ、と風介が膝の上に乗せた拳を握りしめた。
しばらくの沈黙ののち、にっこり微笑んで風介を呼ぶ。

「できるよ、ぜったい」

「…そう、だな」風介がフッと笑った。そして立ち上がって「そろそろ夕食の時間だな」と言う。

「今日の晩ご飯はハンバーグらしいよ」
「晴矢が喜びそうだ」
「お子様舌だからね〜晴矢は」

そう言って笑うと、風介がおもむろに私の手を握った。びっくりして風介を見つめると、風介は優しい笑みを浮かべて「帰ろう、名前」と言った。






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dear.柚瀬さん