オレに乗れねー波はねぇええっくす!! | ナノ
「お前、サッカー好きなのか?」

始まりはその一言だった。
私が一人でサッカーの練習をしていたら、そいつは突然現れてそう言ったのだ。とても綺麗な目をしている少年だった。
私はボールを蹴るのをやめて少年を見つめ返す。

「好きだよ、もちろん」

「じゃあ、俺と一緒だな」そう笑った少年の顔はとても輝いていて、ああこの人も私と同じでサッカーが大好きなんだと思った。
それからその少年はデモーニオと名乗り、よかったら今度一緒にサッカーしないかと言った。びっくりして少年ことデモーニオを見つめる。

「見てたんでしょ? わたしサッカー上手くないよ」
「上手い下手は関係ない。俺はお前とやりたいと思ったんだ」

デモーニオは首をかしげて「それでもダメか?」と聞いた。ぶんぶん首を振って「ううん」と言う。

「わたし、名前」
「そうか。じゃあ、明日の十二時に仲間たちとここに来るから」

「また明日な! 名前!」デモーニオが手を振って走り去った。
どきんどきん、心臓がはやくなる。

「…また、明日」

翌日、デモーニオは本当に仲間たちをつれてやって来た。私は初めて誰かと一緒にサッカーをした。
楽しかった。

「ああ、もう日が暮れるな」
「そろそろ帰らないと…」
「そうだな。それじゃあみんな帰るか」

デモーニオの一声でみんなが帰る準備をし始める。
ああ、これでもうさよならなんだ。そう思ってうつむいていたら、デモーニオが「よし、じゃあ帰ろう名前」と言った。
「…え?」びっくりして目を丸くする。

「え、なんでそんな驚くんだ?」
「デモーニオに襲われるとでも思ってんだよ」
「襲っ…!? 誰かそんなことするか!」

デモーニオが真っ赤な顔で反論すると、仲間たちが楽しそうに笑う。

「も、もうサッカーしないん、だよね…?」
「え?」
「どういう意味?」
「だって一緒にサッカーするの、今日だけ、でしょ?」

デモーニオたちが顔をみあわせた。そして、ぶふっと噴き出す。

「そんなこと心配してたのか!」
「それでそんな暗い顔してたんだ」
「え、え…?」

ち、違うの? そう聞くと、デモーニオたちは笑ってうなずいた。

「明日も明後日も、俺はずーっと一緒に名前とサッカーしたいよ」

デモーニオはそう言って、昨日さよならしたときみたいな顔で笑った。
どきんどきん、心臓がはやくなる。






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dear.鶯さん