オレに乗れねー波はねぇええっくす!! | ナノ
「ああアキオ、どうしてあなたはバナナなの?
それはこんな髪型だからさ、名前エット…」
「喧嘩売ってんのかお前」
「っうわ、アキオ!」

振り返ると明王が鬼の顔をして後ろに立っていた。わー、見事な青筋だー。
…じゃなかった。わたしいま相当やばい状況だった。人形のアキオと名前エットを明王から守るように抱きしめる。

「ったく、いい年こいて人形遊びなんざしやがって…」
「これけっこう楽しいんだよ。明王もやろうよ」
「断る」

どかっと床に座り込んで、ベッドにもたれてそのへんに置いてあった雑誌を読み始める明王。
フーン…そんな態度とるんだ。

「じゃあ鬼道でも誘おうかなー」
「…なんだと?」
「鬼道なら喜んで一緒にやってくれるもん」

「ちょっと鬼道の部屋いってく」がしっ、立とうとした私の腕を明王がつかんだ。

「…つきあってやるから鬼道はやめろ」

なんて簡単なんだろうこの彼氏は。

「じゃあ私が名前エットやるから、明王はアキオやってね!」
「どう違うんだよ」
「漢字かカタカナか。あともうロミジュリ関係なくていいから。
はい、それじゃーはじめ!」

明王がため息をついた。そして人形を動かし、「こんにちは名前」と言う。
エットぬけてる…!
そう思いながらも「こんにちはアキオ」と返して人形をとことこ動かす。

「今日はいい天気ですね」
「あー…そうですね」
「アキオは今日は何をしてたんですか?」
「…サッカーです。名前は?」
「寝てました」
「オイ」

明王が「やめだ、やめ。くだらねェ」と言って人形を放り投げた。あわててそれをキャッチする。

「明王、部屋帰らないの?」
「めんどくせぇ」
「じゃあどうすんの」
「ここで寝る」
「はぁ!?」
「お前ももう寝ろよ」

ぐい、と明王が私の腕を引っ張った。
「わ、ぶふっ」「色気のねー声…」「うるさい!」思いきりベッドにダイブした私は、呆れたような目でこっちを見る明王を睨む。
と、そこで明王がいきなり私の隣に寝転がった。

「あ、あき、お?」
「なんだ」
「あの、どいて欲し」
「おやすみー」
「オイ!」

私のツッコミも待たず、明王はスースーと寝息をたてて寝始めた。
し、信じられない…!




この心臓をどうしてくれるんだ。



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dear.来莉さん