デモーニオが究極なんだぜえぇぇっくす!! | ナノ
私は今、ストーカーに悩まされています。いや別に被害妄想とか自意識過剰とかそんなんじゃなくて、これはマジな話です。ホントに。
……そしてこのストーカーさん、人間じゃないからさらに困ってるんです。
「ZZZ」
「うぎゃぁぁあっ!!」
「……お前、色気無ぇ声だなぁ」
健全な中学二年生から色気のある声を望む貴方がおかしいんです。……いや、冬花ちゃんとかなら「きゃーっ!」って悲鳴なんだろうな多分。考えてたらなんか切なくなってきた。
くそう。私の憂鬱の原因は全てこの人のせいだ。人じゃないけど。そして私の右腕を掴まないでいただきたい。すごく恐いんです。
ストーカー、もといデスタさんは最近イナズマジャパンが戦ったチームのキャプテンだ。魔界の民だかなんだかで人間じゃないらしい。見た目はまんま悪魔。
そして我らがイナズマジャパンに負けた彼は何を思ったのか、ずっと私を堂々とつけてくる。正直、これってこそこそされるより恐い事。復讐とかじゃなきゃいいんだけど、万が一そうだとしたら私は一溜まりもない。まぁこんなマネージャーを1人捕まえたところでどうにもならないだろうけど……。
「逃げんな」
「むっ……無理です」
「別にとって喰おうとかしてねぇから」
「……」
「何だよその目は」
ああ……なんでごめんなさいとか言ってんだよ私の根性無し!実際人間みたいな姿形だけどさ、人間じゃないって知ってるからもしかしたら食べられちゃうんじゃないかとか考えてしまうのはしょうがないと思うのよ?
でも彼は「食べない」と言っているので信じましょう。いえ、信じないといけないでしょう。
「で、なんなんですか?つけ回したりいきなり名前呼んだり捕まえたり」
「いや、なんか食うもん無いかと思って」
とんでもない言葉に、逃げようと右足を出したがぐんっと後ろに引っ張られた。
今さ、食うもんって言ったよね!食い物、食べ物ですよね!
「やっぱり私食べられるんだ!」
「食わねぇよ話聴けぇっ!」
「あだっ!!」
デスタさんの拳が脳天にクリティカルヒットしたので黙った。魔界では女の子の脳天に拳骨しても周りから怒られないんだろうか。人間界なら顰蹙ものですよこれ。
「あの、だな……飯作ってくれないか」
「……ご飯?」
「いつもマネージャーが飯作ってんだろ?」
まあ確かにそうなんだけど。でもなんでよりによって一番ちんちくりんな私を捕まえて飯作れって言ったんだろうか。というかなんでそんなに顔を赤くしているんだろうかこの人は。
でもいちいち言及できやしないビビりな私は、このよくわからない人を日本代表の宿舎に連れてきてしまったのだった。
「デスタさん、ご飯食べたら帰って下さいね」
「……わかったよ」
その間はなんだその間は、とはさすがに言えない。また脳天クリティカルヒットなんかしたら私は更にお馬鹿さんになってしまうだろう。
でも普段はイナズマジャパンのメンバーが座っている椅子に落ち着かなそうに腰を下ろしたデスタさんはちょっと可愛いと思ってしまった。
冷蔵庫にあった食材をちょっと使ってサンドイッチを作り、彼の前に置いた。そんなに大層なものを作った記憶はないんだけど、デスタさんの目はキラキラしている。
「うめぇな、お前の作ったヤツ」
「あ、有難うございます……」
正直まだ彼が恐くないわけじゃないんだけど、自分の作ったものを美味しいって食べてくれるのは嬉しいし、自然と頬が緩んでしまうのはしょうがないよね。
「あとさぁ」
「はい?」「さっき殴って悪かったなぁZZZ。ついクセでよ」
そう言って笑いながら私の頭に触れた手は、信じられないくらい優しかった。
予想に反した貴方の手
(私も謝らなきゃいけない)(デスタさんは優しい人だ)
//姫条さんにfor you !!