秋色ファンタジー




少し前まで残暑を感じてたはずなのに、秋のおとずれどころか冬をも感じさせる勢いに私は見事に風邪をひいた。テストが近いのに風邪をひくなんて本当に運が悪い。辺見のデコをいじった罰なのかもしれないからもうやめよう。
窓の外からは小学生へ帰宅の時刻を知らす音楽がなっていて時計を確認するともう4時半をまわっていた。お母さんさんも仕事にいっているらしく誰もいない家は不気味にシーンとしていた。


「ねえ、熱は下がったの?」


シーンとしていたはずの空間に突然響いた聞き覚えのある声にベッドから飛び起きると、ベッドのすぐ下に寝転び漫画を読んでいる幼なじみのヘッドフォンと目があった。


「な、るかみ?」


頭がぼーっとして確証が持てなく、一応疑問形で問い掛けてみるていきなり成神の腕がのびて私の額に触れた。もう片方の手は自分の額へとあてていて見慣れた不思議な眉毛にふいに笑いそうになった。


「まだ熱は結構あるみたいだね。」
「そうかな?」


でもそう言われてみれば朝より頭が重いかもしれない。それでも一応、成神はお見舞いに来てくれたわけだし、とお茶を出すために立ち上がると頭がぐらぐらと揺れた。


「危ないなあ、もう。病人なんだからさ、寝てなよ。」


倒れた体は床へと一直線だったのに、成神に抱きしめられるような形で支えられ、床との衝突は避けることができた。いつのまにか私より高くなった身長、厳しいサッカー部の練習のためか以外と大きい身体につい意識して顔に熱があつまった。


「も、もう大丈夫だから離してよ。」
「ほらほら、病人は暴れないで。」
「あ、暴れないから。」
「やだ。」


何言ってるのよ!とぺしぺし成神をたたくと宥めるように頭をぽんぽんと撫でられた。反論しようと顔を上げると、成神の顔は思ったよりずっと近くにあって、私は反射的に目をとじた。瞼にやわらかい感触があったあと成神はもう一度強く私を抱きしめた。


「好きな子の弱ってる姿ってけっこうくるもんだね。」




秋色ファンタジー
(風邪うつるから今日は瞼で我慢ね。)
(き、期待なんかしてません。)


  for くろたん






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