真夏の水風船争




庭で本を読んでいたら、ばちゃり、という音がして背中がぐっしょり濡れるのを感じた。コントロールが良かったのか、その水が本にかかることはなく、少しほっとした。


「ああもう最低。」
「こっち向けよ。」
「びしょびしょになっちゃったんだけど。」
「見りゃわかる。」


つか、びしょびしょにさせたの俺だからな。と背後でけらけら笑うやつの方を振り向くと水かけ犯もとい晴矢は得意そうににやりと口元をあげた。


「水風船とかあんた何歳?」
「中2だけど?」


てか、早く本退かせよ、水かかっちまうぜ。と、そもそも水をかけなければいいのに、変なところでいい奴な晴矢は忠告してくれた。


「お前ってトロいよな。」


否定は出来ない。本を退かしたらすぐ投げてくることくらいわかってたのに、身体が反応せずに晴矢が投げた黄色い水風船は見事に私の顔面に当たり、破裂した。水風船って肌で破裂すると案外痛いものだと知っているんだろうか。


「晴矢ほんと最低。」
「避けられないお前が悪いだろ。」


そんな横暴な!って言おうとしたらまた水風船を投げられ私の服は水を吸った。


「おい、お前っ」
「何よ」


さっきまで爆笑しながら水風船を投げてきた奴が、急に挙動不審に慌てだしたので視線をそっちへ向けると、顔を真っ赤にした晴矢と目が合った。


「お前‥その、す、透けて、る」
「はあ?自分でかけたくせになに照れてんのよ、てか見ないでよこのムッツリ!」
「むムッツリじゃねえよ!」


焦る晴矢の声を背中で聞いて、はいはい。と家のなかへ戻ろうとしたら、ちょっと待てよ!と腕を強く引っ張られ危うく後ろに転びそうになった。


「どこ行くんだよ」
「風介のとこ、タオル貰ってくる。」


そう、ちゃんと答えたのにいっこうに離そうとしない晴矢に、まだ何か?という意味を込めて首を傾げたら、さっきと同じくらい真っ赤な顔で叫ばれた。


「そんなエロい格好他の奴に見せたくねえ!」真夏の水風船争
(なにそれ、告白のつもり?)
(ばばばかじゃねえのか、う自惚れんな!)


  for わかめさん





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