たとえ50過ぎてたって総帥を愛してる | ナノ
「…あー、む!」


がぶり、


「ぎゃーっ!」


誰かが私の首筋に噛みついた。背後から。あまりに脈絡のない事で、女らしかなる叫び声を発してしまった。恥ずかしい。恥ずかしいけどそれよりも現在進行形で噛みついているのは誰だ。歯形がついてしまう!


「てい!」

「痛っ!」


噛みついている人向かってでこぴん。したらその人が離れたから急いで振り返る。見慣れたピンクの髪がそこにいた。


「…つ、綱海?」

「なんだよ痛ぇなー」

「あ、ごめん…じゃない!綱海が悪いんでしょ、何してんの!」

「何って…噛み付いたんだよな?」

「何で疑問形!?」


あっさりと答えた…というか聞いてきた綱海に突っ込む。頭上にハテナマークを浮かべて、「え?俺なんか悪い事した?」とでも言ってきそうな顔をしている。何をそんなぬけぬけと!若干ムカついてきた私は綱海の背後に回り、膝カックンをしてバランスを崩させた。綱海が驚いた様な声をあげたけど、あえてスルーする。バランスが崩れた為身長差がなくなる。その隙を狙い、綱海の首を思いっ切り締め上げた。


「ぐえーっ!ちょ、名字離せ!」

「誰が離すか!何で当たり前みたいな顔しての、ちゃんと謝りなさい!」

「いやっ…だってしょうがねぇだろうが!」

「何がしょうがないの!」

「だってよ、」

「だって何!?」

「だって名字が美味そうだったんだよ!」


は?
締め上げていた腕を緩めてしまい、綱海がむせながら解放された。と、そんな事より、今こいつ何て言った?美味そう?私が?

その意味が本当に分かった時、顔に熱が一気に集中するのが分かった。綱海に「何言ってんの!」と言ってしまいたいが、口が上手く動かない。どうしよう、このままはさっきよりもスゴく…恥ずかしい。するといきなり綱海が私を指差した。


「!?」

「それ!」

「、は、はぁ?」

「名字のそういう所が可愛くて、すげー食べちまいたくなるんだ!」


ニカッ、と綱海が快活に笑った。



あくじき


口は言う事を聞かないけれど、身体は大丈夫だったらしい。
綱海の頭を叩いた腕は、は自分でも思った以上に鈍い音を発した。






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