涼野だって長袖着れるもん☆ | ナノ
いつかの約束



「イタリアの街並みってさみんながみんなこんな感じなのかな」

突然ぽつりとそうこぼした名字をちらりとゴーグルごしの視界からとらえると彼女はぼんやりという言葉があてはまるような横顔で建物を見上げていた。
イタリアエリアのここは日本エリア同様その国のような建物のつくりをしている。夕焼けに縁取られた複雑な模様をほどこしているレンガの建物は日本にはない奥深い何かがあった。その建物らを名字と同じように見上げて「そうなんじゃないか」と呟いた。すると今まで建物を見ていた名字がふいにこちらに顔を向けた。「ねえ鬼道くん」「なんだ」ちかちかと夕日にあてられて眩しそうに目を細めながら名字が小さく笑みを作っていた口を開く。

「いつかさ、いつかでいいんだけどね、イタリアに行ってみたいな」

「一緒に、か?」

「うん。一緒に」

するりと細いひんやりした指がからめられる。その自然な動作に気づかれないように口元をほころばし可愛らしい指を強く握った。「いろんなところに行こうな」俺とお前がずっといられるように。可愛いお前を手放すことがないように。

「約束ね」

名字がふんわり笑った。その俺がたまらなく好きな顔に腕が知らぬ間に彼女をとらえていた。





ちいちゃんへ!