昔からお互いに一歩も引かない。なんていうのかな、ライバルっていうにはそこまで熱血じゃないし
犬猿の仲っていうにはそこまで嫌ってはいない。だけど、いつからか知らない間に張り合うようにな
っていた。「なんでだっけ」と基山に聞いても涼野に聞いても答えは同じ「知らない」だ。どうしても知
りたい、けど南雲に聞くのはなんだか負けた気がして嫌だ。結局、張り合う理由は迷宮入りにするこ
とにした。


「なぁ、テスト何点だった」

「南雲は?」

「お前が言ってから言う。だから、さっさと言え」

「やだ、わたしも南雲が言ったら言う。だから、早くいいなさい」


テストの点数を聞く順番を決めるのですら、どっちもお互いに引かない。最終的には「よし、いっせーの
ーでで言おうぜ」「絶対だからね。嘘ついたらなにか奢ってもらうからね」「上等。いくぜ、いっせーのーで、」
「98点」「80点」わたしの点数を聞いたときの悔しそうな顔。これを見るのが大好きだ、決してSなのでは
ない、勝利した実感を味わえるからだ。現に今もその実感であり喜びであり勝利の余韻に浸っていて、
重大なことに気づくのが遅れた。気づいたのは南雲の馬鹿でかい声が誰もいない教室内に響いた時だ
った。


「なんで、テストの名前のところ苗字が『涼野』になってるんだよ!」

「それね、えーと、たまたまそのとき斜め前にいた涼野に見惚れて」

「俺だって、風介の隣にいただろう!?なのに、なんで風介なんだよ!」

「ごめん南雲、あんた涼野の隣だったの?てっきり、後ろの基山ら辺の隣かと思ってたわ」


未だぎゃーぎゃーと騒いでる南雲に一言「うるさいな。負けたらパシになるって約束でしょ。購買でカフォレ
買ってこい」と静かに言い放つと、今度はブツブツと涼野に対する恨みを言いながらしぶしぶと教室を出て
く、直前に負け犬のような口調で「今度からは俺の苗字書けよ、馬鹿」と捨て台詞を吐いて購買へとしぶし
ぶ向かっていった。


「馬鹿南雲。どうしてくれるのよ」


テストの答案に涼野の苗字を書いたのは、南雲にヤキモチ妬かせたかったからなんて意地でも言えなく
なっちゃったじゃない。それどころか、購買から帰ってきた南雲になんて言えばいいのか…いや、言うこと
は決まってる。果たして、どう格好良くいってやろうか…普通に返事したんじゃ負けたみたいだから嫌だ。
まぁ、南雲が購買から帰ってくるまでまだたっぷりとある。その間、じっくりと考えてあげるとするか。



(Dear.わかちゃんへ)



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