じーっと、道端に咲いていた花をしゃがみこんで見つめる。この行動は、数十分も前から続いている。ただ、
見つめてるわけじゃない。ここ最近、風が強かったからその影響で飛ばされたのだろう。いかにも重そうな物
が花の上に乗っかっていたのだ。どかそうにもわたしの力じゃ持ち上がらない。どこかに隙間がないかな、と
か花だけ動かせないかな、とかいろいろ見ていたのだ。


「お嬢さん、どうかしたのですか?」

「えっ?あ、」


そこに居たのは、イギリス代表のナイツオブクイーンのキャプテン・エドガーバルチナスさんだった。水色の長
髪に長身は噂で聞いたよりもとても綺麗な人に見える。「花を、助けてあげたいんです」「おや、花があるのです
か?」「はい。この下に埋もれていて…わたしの力じゃ持ち上がらないんです」「そういうことなら、私に任せて下
さい」ちょっと、どいててもらえますか?素直にエドガーさんの言うことを聞いて、数歩後ろに下がる。大丈夫かな?
と多少の不安を抱きつつその様子を見守る。すると、あっさりとあんなに重かった物を持ち上げて違う場所に運ん
でるではないか。


「すごいんですね、エドガーさん」

「私のことをご存知でしたか」

「すごく有名ですから。近くの店でブロマイドも売ってましたし」

「そうでしたか」


そういうとエドガーさんは苦笑してみせた。紳士的な態度にナイーブな性格、それにすごく、優しい。思わず
ぽーっと見つめてると不思議そうに「お嬢さん、どうかしましたか?」と訊かれ「い、いえ。大丈夫です、ありが
とうございました」少し不自然だったかな。重たい物もどかされて改めて花を見てみると、


「茎が…折れてる」


根元からだったら、茎を補強してもう一度植えなおせばなんとかなったかもしれないけど、花びらのほんのちょ
っと下となるとそうもいかない。どうしようと考えていると、隣にいたエドガーさんが茎が折れてしまった花を手に
取りなにか考えてるような素振りを取る。「あの、エドガーさん」「なんでしょう?」「その花…どうするんですか?」
「そうですね、こうしてみてはどうでしょう?」すっと、エドガーさんはわたしのほうに手を伸ばすから思わず目を
瞑ってしまう。おそるおそる目を開けてみると、「やはり、お譲さんに似合いましたね」と微笑んでるエドガーさん。


「花をどうしたんですか?」

「この手鏡を見れば分かりますよ」


差し出された手鏡を覗くと、わたしの髪に花が飾られているではないか。どうやったのかは分からないけど、簡
単には落ちないようになってるみたいだった。「花がこんなに綺麗に見えるなんて、すごいです!」「ありがとうご
ざいます。ですが、」そこで一旦、言葉を区切るとわたしの前で跪くとそっと手の甲に口付けを落とす。


「お嬢さんの美しさには適いませんよ」



(Dear.ろんさんへ)



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