第一話 ボブ、来日
たんっと空港からのタクシーから降りたボブは、宝物のいっぱい入ったリュックをぎゅっと握りしめ、これから住む自分のまちを見回した。
すると道の向こうからスキンヘッドの男が歩いてきた。
サムだ。
サムは、アメリカにいたころからの仲良しで、ボブよりも先に日本へ留学していたのだ。
「よぉボブ!」
親しげに片手をあげながらボブに話しかけた。
どうやら出迎えに来てくれたらしい。
「サム、久しぶり」とボブが口を開より早く、サムはこう言った。
「ジェニファー知らねえかい?」
…ボブは笑顔をひきつらせた。
どうやら出迎えに来てくれたわけではなかったようだ。
ちなみに、サムはいちごが大好物だ。
そしてジェニファーが作ったいちごが一番大好きなのだ。
この話はまたこんど、改めてするとしよう。
ジェニファーの居所を尋ねられたボブは、もちろん、今日本に着いたばかりなのだから知るはずがない。
答えようがないので、知らない、と首を横にふった。
「そうか、じゃあな」
サムはなんともなかったかのようにボブの脇を通り過ぎ、歩いていってしまった。
呆然と立ちすくむボブは、そのままサムの後ろ姿を見えなくなるまで見送った。
完
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