女子会しよ!(現パロ)
※格好いい実弥さんはいません。下ネタ要素あり。宇髄さんと煉獄さんがちょっぴり下品です。これら全てを踏まえた上で閲覧してくださるようお願いします。











リア充もすなるラブホ女子会といふものを、オタクの私もしてみむとてするなり。


きっかけは友人の「時間も騒音も気にせずお互いの推しをプレゼンして騒ぎたい」という一言だった。
採用!という言葉がグループトークにポコポコ上がってくる。勿論私も同じ返事をした。場所はどうするかという話題に移り、離れのある温泉宿、コテージと候補地が続々と挙がる。
温泉かぁ、広い湯船に足を伸ばして湯上がりにはコーヒー牛乳をグビッと一杯できたら最高だろうなぁ。などと妄想に耽っていると、「ラブホはどうか」という提案が出てきた。

ラブホ

まじまじとその文字を見つめる。
所謂大人の休憩所兼宿泊所だ。
何年も前に別れた彼氏とはお互いの家を行き来していたので、こういった場所には行ったことがなかった。だが興味がないといえば嘘である。話のタネにも1回位は入ってみたいな〜とは思っていた。
すると提案者からURLがポコンと送られてきたのでクリックしてみる。

ラブホ女子会はいかがですか?
という文字に続き、カラオケ設備有り、お風呂は天然温泉、美顔器やアイロンなどの美容家電貸出可能、有名化粧メーカーのアメニティ提供などなど魅惑の言葉が並んでいた。SNSなどで流行っていると見たことはあったが、ここまで至れり尽くせりだとは知らなかった。衛生面が気にならないと言えば嘘になるが、幸いにも口コミを見れば良さそうである。他の友人たちも興味をそそられたようで楽しそう!と興味津々の様子。
かくして、週末金曜日の仕事終わりにラブホ女子会をする運びとなった。

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女子会前日の木曜日、私は旅行バッグを前にして悩んでいる。
大体の物はホテル側の備品で賄えるから荷物は少なくて済むだろうと考えていた。だが、友人にプレゼンする推しジャンルの物を入れたらなかなかの量になってしまうのである。
とりあえずDVDは1巻だけにしよう。映画のDVDは、もし友人の誰かが食いついたらすぐ貸せるように持っていこう。こっちの漫画はどうしようかな、小説版もどうしようかとうんうん悩み、小一時間かけてなんとか荷物が纏まった。
「はー、いよいよ明日か。楽しみだなぁ」
ちょっとした高揚感を胸に布団に潜り込めば、すぐに夢の世界へと旅立った。


翌日、いつもの通勤鞄と旅行バッグを手に、私の勤務先であるキメツ学園へと出勤した。旅行バッグは駅のロッカーにでも入れようとしたが空きがなかったので断念した。他の人も仕事終わったらそのまま旅行なの〜と荷物を持ってきていた事があったし多分良いだろうと考え、更衣室の自分のロッカーにしまう。

事務として働く私は表立って生徒の前に立つことはないが、来客・電話対応や先生達に関する細々としたことを行っている。
パソコンに向かって書類を作成していると、横からひょいと宇髄先生が顔を覗かせてきた。
「美術室の修繕の件なんだけどよ」
宇髄先生は先日、芸術は爆発だと叫びながら美術室を本当に爆破した。突如響きわたる轟音に驚き急いで美術室へと向かえば、壁から天井にかけて大きく穴が空いているではないか。これは修繕費が幾らになるんだ工期はどれくらいか、修繕中は美術の授業はどこにすればいいんだ保護者からのクレームが来るぞと頭を抱えた苦々しい記憶が甦る。
工期についての簡単なやり取りをした後、宇髄先生は顔をニヤニヤさせた。

「で、どこ行くんだ?」
「はい?」
「旅行バッグ持ってたろ。何処に行くんだよ。場所によってはお土産リクエストしてぇ」
「あー...あれは旅行というか、なんというか...」

まさかラブホ女子会するんです〜なんて言えずに、はぐらかしたくてしどろもどろしてしまう。なんと言って誤魔化そうか。

「え、まさかお前、男のとこにお泊まりデートなの?」
「なっ...」

ガタンッ
違いますよ!と続けようとした時、何かが床に落ちる音がした。音の出た方向へ目を向けると、数学教師の不死川先生が電卓を落としたようで「失礼」と言いながら拾いパソコンに向かい始めた。

「で、どうなのよ」
「宇髄先生には関係ないじゃないですか」
「俺には関係ないんだけどさぁ〜...」
「とにかく!今は勤務時間中ですので、仕事以外の事にはお答えしません!」

何か言いたげな宇髄先生をシャットアウトし、パソコンに視線を向けてタイピングを再開する。これ以上話しかけないでくださいオーラを発したため、諦めたのか宇髄先生はいなくなった。



「で!名字先生、どうなんだ!」
「さっさと吐いちまえよ〜」

これは一体何の拷問だろうか。
昼休みのチャイムが鳴ったと同時に「今は一応勤務時間中じゃねぇからいいよな」と宇髄先生がやってきた。さらに煉獄先生までやってきて、美術室に強制連行されてしまったのである。
何処に行くのか相手は誰ださぁさぁ吐け吐けと双方からの圧がすごい。
「食が進まなくなるのでせめて食後にしてもらえませんか...」
もそもそとサンドイッチを食べるが、買った時は美味しそう!と思ったのに、今は何だか味がよくわからない。間違いなくこの場の威圧感のせいだ。

「だってさー、お前ずっと彼氏いなかったじゃん」
「それがいつの間にか泊まる間柄の男性ができるとは!よもやよもやだ!」
「いや、相手は友達ですから。ていうか、私に彼氏ができないことが当たり前って思われてたのがなんか悔しいんですけど」
「いや、当たり前っていうかさぁ」

なぁ?と意味ありげに宇髄先生と煉獄先生は頷きあう。
「で、その友達って男?」
まだこの会話が続くのかとウンザリしかけた時、私を探しに来た生徒が美術室に入ってきた。

「名字先生、ご飯中にごめんなさい。公欠についての用紙が欲しくて」
「全然大丈夫!むしろナイスタイミングだよ。行こっか!」
「あ、おい待てよ」

宇髄先生が止めようとするが、こちらは仕事なのだ。ささっと荷物を纏め、生徒を連れて美術室を後にした。


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おかしい。もうすぐ定時という時間なのだが、仕事が終わらない。むしろ増えていくのは何故なのだろうか。

宇髄先生からは美術室修繕の工期をもっと短くなるように交渉しろだの言われ、煉獄先生からは今度の授業で騎馬戦やろうと思うがどうだろうかと聞かれたので、社会の先生同士で話し合ってくださいとお願いした。
胡蝶先生には今度の授業で急遽必要な教材が出てきたのだけど、予算はまだあるか、納期はいつになるかしらと聞かれた。勿論これについてはしっかり調べた上で発注まで行えば、ありがとうと微笑まれたので見惚れてしまった。美人って凄いなぁ。

そして珍しく不死川先生からも仕事を頼まれた。もう定時はとっくに過ぎて待ち合わせ時間が迫っていたが、いつもは頼みごとをしない不死川先生が申し訳なさそうにしながら言うので快諾した。
「遅くまで悪かった。...予定あったんだろ、今日」
頼まれ事を終えた後、不死川先生からお礼を言われた。日中の宇髄先生との会話を聞かれていたようだ。恥ずかしい。
「いえ、気にしないでください。それに時間はたっぷりありますし」
そう、なんせ今日は夜通し語り明かそうと皆燃えているのだ。多少遅く合流しても問題ない。

まだ何か言いたそうな不死川先生に、では!と別れを告げて更衣室へと急ぐ。今から着替えて電車に乗ってホテルまでは...あと30分後くらいには着けると計算して既に中に入っているという友人たちへ連絡する。
[OK!居心地最高!]
[待ってるよ。気をつけて]
[受付の人に声掛けて来て。お金はもう払ったから]
ポコポコと上がる文面を見て、期待が膨らんでいく。足取りも軽く職場を出た私はホテルへと向かうのだった。


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「ありゃ絶対男だ」
「よもやよもやだ!」
「だからフリーのうちにガンガンいけって言っただろうが」
「うむ!不死川は押しが足りない」
「うっせェ...」

ただでさえ気分最悪なのに、2人の男に詰られ気分はドン底だ。
数学教師である不死川実弥は、同じ学園で働く事務の名字名前に想いを寄せていた。その事を知るのは彼と仲がよい一部の教師陣だけであり、恋愛に関してちょっぴり不器用で兄弟大好きなこの男が、一人の女性に惚れている様を時に煽りながら(主に宇髄が)も暖かく見守っていた。

のだったのだが。

突如として湧いた、名字に彼氏出来たかも疑惑に職員室の片隅で小声による緊急の会議が開かれた。

「さっさと告っちまえば良かったのに。お前嫌われてなさそうだし、あいつ押しに弱そうだから押せ押せでいいんだよ」
「それが出来ねぇから苦労してんだろォが」
「仕方ねぇな。この俺が一肌脱いでやっか」
「具体的には?」
「仕事押し付けて、残業沢山させて今日の約束ポシャらせる」
「なんと!」

仕事させまくるのはかわいそうだろ。と思わないでもなかったが、今日の予定が流れてくれたらいいなと我ながら最低な事を思った。最も、例え今日の予定が流れたとしても問題の解決を先送りにしているだけとはわかっている。


だが名字は仕事が早く、頼まれ事を次々と捌いていった。勿論それは一同僚とすれば頼もしい事この上ないのだが。結局胡蝶をも巻き込んだこの策は失敗に終わった。
頼む仕事も尽き、機嫌よく退勤する名字をただ見送っていると、ガシリと肩を回された。宇髄だ。隣には煉獄もいる。

「おら、後をつけるぞ」
「はァ!?」
「どんなやつが相手か知りたくねぇか?住んでる所とか、名字に相応しいのかとかよ」
「...気になる」
「決まりだな!」

ニヤリと笑う宇髄に、コイツ楽しんでるなと思わなくもないが、こうして話をしているだけでも多少なりとも気分が救われる思いも確かにある。心の中で名字に謝りながら後をつけるため続いた。もしアイツに相応しくない、チャラチャラしたような男なら今度こそ俺が...という思いを胸に抱きながら。


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「マジか。ラブホか」

飲み屋がひしめく繁華街に着いた時、ご飯を食べてから家に行くなら長期戦になるな。と考えたが、飲み屋街を素通りしたかと思えば路地裏に入っていくではないか。
ん?と3人が思いながら路地裏を覗くと、名字がネオンの眩いホテルへと入っていった。
宇髄はあちゃーという顔をし、煉獄はよもや...と絶句した。対して俺は自分でも顔が真っ青になっているのがわかる。

「でも一人で入って行ったぞ!?」
「ロビーで待ち合わせでもしてんのか?」

などと2人の会話は最早不死川の頭に入ってこない。あの時、勇気を出していたら、今日の別れ際、行くなお前が好きなんだと言えていたらとタラレバばがりが頭の中を渦巻く。

「まずは2人で風呂だな!」
「いや、付き合いたての勢いで風呂の前に一回だろ。んで風呂でもう一回だな」

自分が固まっていると、いつの間にか下世話な話題に変わっていた。

「うっせェ...聞きたくねぇわァ...」
「でももう10分以上経つしな〜どっちにしろお楽しみ中だろ」
「宿泊なら朝起きてからも1、2回できるな!」
「なんなら夜通しできるぜ」
「あ″ー!!うっせェうっせェ!」

自分以外の男とナニしてるなんて想像もしたくねぇ。これ以上煉獄や宇髄が何か言うなら本当にブチ切れてしまいそうだ。

「不死川先生?」
「だっから!うっせェて言ってん...」

顔に青筋を立てながら振り返れば、いつの間にホテルから出てきたのか、名字が財布片手にそこに立っていた。
「煉獄先生と宇髄先生も。3人で呑み会ですか?」
まさか自分を尾行していたなんて思わないであろう名字は笑顔で聞いてくる。
「あー、うんそうそう。華金だからなー。で、名字、お前ナニしてんの?」
固まる俺を余所に、宇髄がズバリと本質を突いた。

「私はコンタクトの洗浄液を買いに」
「こんな場所で?」
「あ、いや、その...」

顔を赤らめてモゴモゴする名字。
「名前待ってー!私も一緒に行くー!」
すると、ホテルから出てきた女性が名字に向かって走って来るではないか。突如登場した女性に、俺達は思わず鳩が豆鉄砲をくらったかのような顔になった。

え、名字ってそっち?
女性もイケるクチ?
対象が女性なら俺は最初から論外じゃねぇか!?

俺達の混乱をよそに、その女性は名字にイケメン!誰!?知り合いなら紹介して!と興奮している。

「同じ学校で働いている先生たちだよ」
「えー!こんなイケメンな先生達がいたら私勉強に手がつかないよー!」
「嬉しいこといってくれるねぇ。どう、俺と連絡先交換しない?」

真っ先に気を取り直した宇髄が、その女性とトークアプリの連絡先を交換しつつ聞く。

「で、お姉さん達何やってんの?」
「私達は友人4人でラブホ女子会中です!名前にお使い頼もうと思ったんだけど、スマホ置いてったでしょ〜」
「あ、本当だ」

女子会という言葉に自分も正気に戻って復活した。

「ンだ女子会かよ!しっかしおもしれぇ所でやるんだな」
「防音バッチリだから騒いでも苦情来ないですし。アメニティとか女子会プランも充実してるんですよ」
「へぇ〜」と感心したように聞いていた。

「名前ったら、ラブホに入ったことなかったみたいで、色んな所を探検してて面白かった〜」
「なっ!そういうことは言わないでよ!」

恥ずかしい〜と言いながら頬に手を添えたり真っ赤になった顔を手で煽って静めようとする名字の姿に、クッソ可愛い!付き合ったらいつでも何回でも連れてきてやるからなと心に決めた。

もう行くよ!私ご飯食べてないからお腹ペコペコだもん!と強引に友人の手を取り、俺達に挨拶をして買い物に行ってしまった。

「まぁなんだ、首の皮一枚繋がった感じ?」
「うむ!良かったな不死川!所で俺も腹が減ったんだが!」
「俺もー」
「...そこの居酒屋でいいか?驕るわァ」

飲み屋に入り、恋愛に奥手すぎるだの中学生かよだの弄られながら呑んでいれば、ポコポコと宇髄に連絡通知が来た。
「おー、良かったな、不死川。本当に女子会中だわ」
ホレと言われて差し出されたスマホを覗き込むと、先程とは別の友人とマリカーに勤しむパジャマ姿の名字がいた。続いて先程の服装でピザを頬張る姿、マッサージチェアで寛いでいる姿などがポコポコと送られてきた。

「あ?なんでお前の所に名字の写真が送られてきてンだよ」
「さっき連絡先交換してたろ。この子に、不死川が名字のこと好きだから協力してくれって送ったのよ」
「はぁ!?」

何を勝手に言ってくれてんだ。巡りに巡って名字の耳に入って距離を詰める前に距離を取られたらどうしてくれるんだと言いたくなったが、ポコンという音に遮られてしまう。

「お、なになに。『不死川さんについて聞いてみたら、ちょっと顔は怖いけど家族想いで優しい人だよ。料理もするみたいだしああいう人と結婚できたら幸せになりそうだよね。って言ってました!』だとよ」
「希望があるぞ!良かったな不死川!!」
「...とりあえず写真、全部俺にも送ってくれやァ」

そこまで酒を煽っていないはずなのに、酔いが一気に回ったような感覚がして、顔が熱い。


半年後なんやかんやで双方の合意の元、不死川は名前と本来の使用目的でホテルを利用したらしい。



「おっっっそ!俺があんだけ協力してやったのに、半年掛かってんのかよ!」
「っせぇな!感謝してるわァ!」




20210410


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