2021/05/09

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「じゃあ本当に出掛けちゃうけど...大丈夫?」
「大丈夫だって。なァ?」
「うん!パパのめんどうはおれがみとくから、ママはおでかけしてきてくれよな!」
「ふはっ。だとよォ」
「ふふ。じゃあパパの事よろしくね」

愛息子の頭を撫で、実弥さんの方をちらりと見てから玄関を出た。昨晩息子から「ママはあしたおやすみなの!おでかけしてきて!」と言われて何事かと思ったが、どうやら母の日ということで束の間の休みをくれるらしい。
いつも休みの日は朝ご飯を実弥さんが作ってくれる。だが今日は簡単だけどとお昼にラーメンを作ってくれて、その上夕飯も私が出掛けている間に息子と作ってくれるそうだ。何を作ってくれるかは聞いていないが、予め実弥さんから家にあるこの食材を使っていいか打診されているので、なんとなくは察しがついている。久し振りにショッピングモールをブラブラしたら、帰りはジュースでも買って帰ろうと足取りも軽く進んでいった。

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「よぉし。じゃあ作るかァ」
「うん!こねるのはおれがやるからね」
「はいはい」

粉やドライイーストなどを入れたボウルに手を突っ込み、ひたすら捏ねていく。その間に俺は具材を切り小皿に載せていく。
4歳の息子のお手伝い心を満たし、かつ簡単に作れるピザを夕飯にするつもりだ。
粗方捏ねた生地を最後の仕上げにと俺が捏ねて伸ばせば、トッピング用の具材をあーだこうだと言いながら2人で載せていく。

帰りの連絡を受けたら焼き始めればいいので、あとは部屋の掃除と飾り付けをし、ママの似顔絵を描く息子を見ながら付け合わせのサラダを作りつつ後片付けをすれば、もう夕方である。
全てを終えると、タイミングを見計らったかのように、これから帰るとメッセージが届いた。飲み物とデザートを買ったという文面を見て、そういやデザートを用意するの忘れてたなと気が付いた。

帰宅したら満面の笑みを浮かべる自分の妻を思い浮かべれば、心が暖かくなる。1人の時間を作ってやらねばと思って送り出したが、やはり側にいないと寂しいと感じる。

「ママがもうすぐ帰ってくるってよォ」
「ほんと?パパよかったね!」
「ん?なんでだァ?」
「だって、ママがいなくなってからさみしそうなかおしてるんだもん」
「...そぉかィ」

子どもにまで言われるなんて、重症ではないか。自分が思っている以上にまだまだ妻のことが好きらしい。そういえば最近2人でゆっくり過ごす時間が取れていないな。近いうちに息子を玄弥達に預けて2人だけでデートをするのもいい。息子には悪いが、彼女はママでもあるが、俺の大事な妻なのだから、たまには俺が独占したいのだ。



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