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「…ローランサン、眠たい」

「……」

「凄く眠たい、…」

イヴェールが目を擦りながら眠たそうに呟いた。
眠たいと言っても、まだまだ日は高い所にある。
どうかしたのだろうか、とローランサンは思った。
こんな早い時間から眠たくなるなんて、どこか調子が悪いのではないか、とローランサンは推測する。
別に昨日夜更かしをして訳でも無ければ、特に疲れる様な大仕事等はしていない。

「ローランサン、」

イヴェールが寝ぼけながら、ローランサンの服の裾を引っ張っているのは多分無意識だろう。
とにかく、イヴェールは先程からこんな事を言ってばかりだ。ずっとローランサンに“眠たい”としか伝えていない。
眠たいとしか言わないので、特に何かを欲している訳では無さそうであるし、調子が悪い訳でも無いようだ。何がそんなに眠たいのかがさっぱり分からないけれど、とにかくイヴェールが眠たいらしいのは分かった。
イヴェールの目は目が霞んで焦点が上手く合わないのか虚ろとしており、瞳には薄い水の膜が貼ってある。

「…眠い、」

眠たいならば、寝てしまえば良いのに、とローランサンは思った。わざわざそれに逆らわずにそのまま素直に寝てしまえば良い。
もし仮に、今イヴェールが寝たとしても、別に誰もそれを咎める者はいないし、わざわざ眠気に逆う必要も無いのだ。
しかしイヴェールは何故か、寝ようとしない。現に今、必死に己の眠気と戦っている。
理由は分からないが、とにかくイヴェールは寝ることを良しとしなかった。

「眠たいなら寝ろよ」

ローランサンは眠たそうにしているイヴェールに声をかける。
素直にそのまま思ったことを伝えた。
特に今日はこれからどうとかするものも無いし、まだ昼間ではあるけど、寝かせても支障は無い。
それに今日は、せっかくの休みだ。
1日をどうするかなんて、自分で決めればいい。

「…眠たい、けど寝ない」

ローランサンは面喰らう。
分かったとか、じゃあ寝るとか、肯定した返事をしてくるものだとばかり思っていたのだけれど、まさかこんな返事をしてくるとは思っていなかった。
無理もない。イヴェールは明らかに“眠たいです”と主張しているのだ。
それであるのに、こんな返事を返してくるとは誰も思わなかっただろう。

「……寝たく、ない」

「は…?」

ローランサンから間抜けな声が出た。
今イヴェールが言った事は、先程呟いていた事と明らかに矛盾している。眠たいけれど、寝たくないとはどういう事なのだろうか。意味の分からない事を言うイヴェールにローランサンは怪訝そうな顔をする。
ローランサンも少しくらい理解しようと、考えてはみたものの、やはりさっぱり意味が分からない様だった。

「ロー、ランサン、と一緒…にいたい、から」

考えても答えを出せずにいたローランサンをみて、イヴェールは眠たそうにしながらもその答えを口にした。
それを聞いたローランサンは、その答えが解せぬと言ったように口を開閉させる。
てっきりイヴェールの事だから、もっと違う事を考えていると思っていた。意外な答えにローランサンは驚く。

「…せっかくの休日だから、君と一緒に過ごしたいと、思って…」

そうイヴェールは続ける。
相変わらずローランサンは口をパクパクさせているが、今度こそその意味を解ったようだ。ローランサンの頬が少し紅いのは、気のせいではないだろう。

「…ふふ、ローランサン、顔紅いよ?」

こういう人を、確信犯とでも言うのだろうか。まんまと不意打ちを食らわされてしまったローランサンを見て、イヴェールは嬉しげに目を細めた。

「チッ……」

その状況を理解したローランサンは、微笑む確信犯を見て舌打ちをする。
そんなローランサンを見たイヴェールから、また微笑みが溢れた。









「イヴェール、」

ローランサンはまだ頬を紅くしながらも、ぎこちなく微笑んで“ありがとう”と伝える。
そんな珍しい事を言う彼を見て、その確信犯が頬を紅く染めたのは言うまでもない。


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1771hitありがとうございました!
シチュ指定はされなかったのでこんな感じになりましたが…宜しかったでしょうか?
目指せサンイヴェでサンイヴェサンになりました…←ぇ
書き直しなら何度でもしますので、何なりとお申し付けください。
この度はキリ番,キリリクありがとうございました^^



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