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ああもう、お昼休みってなんでこんなに短いんだろう。同じ時間でも退屈な授業を聞いているのと比べるとうんとうんと短く感じる。お母さんのおいしいお弁当をつつきながら友達と会話に花を咲かせていると、時間なんてあっという間に経ってしまう。最近の話題は専ら"恋バナ"で、今日も中庭でわいわいと楽しい時間が過ぎていく。

最近まで恋バナを聞く専門だったわたしが、まさか話す方になるとは思いもしなかったが、一度好きになるとその人しか見えなくなる猪突猛進なわたしは、今とある人のことで頭がいっぱいなのである。


「ね、菅原なまえって似合うと思わない?」
「あ〜似合うんじゃない?」
「だよね、自分でもそう思う」
「なまえって最高にポジティブだよね」
「当ったり前!あ、安心して、澤村結も似合うよ」
「さっ…?!恥ずかしいからやめて!」


結の強烈なビンタを肩にくらう。バレー部のビンタは手首のスナップが利いていてかなりのダメージだけど、可愛いから許せてしまう。きゃっきゃと女子トークに花を咲かせて、気付けば昼休みもほとんど終わりである。お弁当を置きに教室へ帰ることになり、ハイテンションのまま移動する。自然と声が大きくなるのは許してほしい。だって青春真っ只中、ちょっとぐらい羽目を外したっていいじゃないか。


「やっぱりこれは運命だなあ」
「はいはい、運命運命」
「軽っ!だってぴったりじゃない?」
「確かに合ってると思うよ」
「でしょ!さっすが結!」
「こら、調子に乗らせない。ちょっとなまえ落ち着きな、そこ角危ないよ」
「はあ、ほんとに菅原なまえに「ん?俺?」




ヤバい


さあっと血の気が引いていくのが分かった。廊下の角から現れたのはスガくんでした。今よりによってスガくん張本人に聞かれるってもう、神様わたしなにかいたしましたか。いや!この話をスガくんが聞いていなければ


「今菅原って言ってなかった?」


ばっちり聞かれてた!もう気のせいとかのレベル越えてる!脳内でエマージェンシーコールが鳴り響く。必死に結たちに目線で助けを求めるも「宿題するの忘れてたから先に行ってるよ」と本当に行ってしまった。なんて無情な。緊急事態、なんとかこの場を取り繕え!


「いっ今自分に似合う苗字探してて、いろんな苗字試してたんだ、あはは」
「いろんな苗字?」
「田中とか山田とかね!田中なまえ、どう?」
「んー…あんまりかなあ」
「だよね!わたしもそう思う!」


あっなんとかなりそう!うまくごまかせたみたいでよかった。本当にヤバいと思った…あんなの好きですって言っているようなものだ。内心ほっとしていたのも束の間、満面の笑みでスガくんが口を開いた。


「で、菅原なまえはどうだった?」


突然の本人からのカウンターに硬直。だって、スガくんが菅原なまえって、いやそれ旦那さん…!やばい嬉しすぎて顔ニヤける!って喜んでいいのかこれ!これはたぶんそういうノリなんだ、マジに受け取ったら気まずい空気になるやつだ…!


「ぴ、ぴったりじゃない?!」
「よし。じゃあ菅原なまえになるか」
「は、…?」
「あはは、冗談!」
「あ、ああ、冗談ね!あはは…」


そんなタチの悪い冗談があるかああああ!!!!と心の中で叫ぶ。あげて落とすやつ!一番だめやなやつそれ!だいたいスガくんそんなにグイグイくる人だった?!ああでも好き!これが惚れた弱みってやつか、はああ、こんなに話せて今日は最高にしあわ「まあそれも冗談……って言ったらどうする?」






プルルルル…………


ガチャッ
「はい、もしもし菅原です」


こうなりました。


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