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授業中に抜け出すというのは理由はどうあれなんとも罪悪感がある。誰も居ない廊下の端のほうをこそこそと歩いてようやく保健室に辿り着いた。ここまでくるのに何分かかったんだろうってくらいものすごく長かった。精神的なものもあるけど、実際距離的にも長かった。これだから私立は困る。


「失礼しまーす…」


返事はない。先生トイレにでも行ってるのかな?うーんどうしよう。とりあえず熱測って待ってよう。そしたら先生戻ってくるだろうし。あ、でも体温計の場所知らないや。いろいろあさっちゃおう。

えーっと、………ない。体温計ってよく使うから割とわかりやすいところにあるはずなんだけどなぁ。真帝国になってから初めて保健室に来たけど、帝国のときとこんなに変わってるとは。うう、なんか立ってるのも辛くなってきた。だめだこれ、やばい。遂に立っていることも出来なくなってその場にへたり込んだ。


「こんなとこで何してんのなまえチャン」
「え、…不動くん?」


あれ、なんで不動くんがここにいるんだろう。もう授業終わったのかな?チャイム聞こえなかったと思うんだけど、あ。保健室だから寝てる人を起こさないようにここだけチャイム鳴らさないのかも。なんて思ったけど時計を見るとまだ思いっきり授業中。ちなみに不動くんとわたしは選手とマネージャーという関係である。ただしどこぞのマネージャーみたいに好意を寄せてる訳じゃないけど。


「不動くんしんどいの?大丈夫?」
「それがへたり込んでる奴の言うことかよ」


ごもっともです。にしても不動くんどうして保健室にいるんだろう。見る限り元気そうだけど怪我したのかな。でも体操服を着てるわけでもないから体育の授業中ってわけでもなささそうだ。不動くんになんで保健室にいるのか聞いてみたら授業がだるかったから、とさも当然のように言われた。不動くんサボっちゃだめって前に言ったでしょうに。

突然おでこに不動くんの細い指が伸びてくる。


「…ったく無理しすぎだっての。こんなになる前に来いバーカ」


立てるか?なんて聞きながら、へたり込んだわたしの手を取ってベッドまで案内してくれた。あれれ不動くんってこんなに優しかったっけ。ベッドに横になるとさっきの不動くんの手よりも冷たいものがおでこに触れる。どうやら冷えピタらしい。わたしは体温計すら見つけられなかったのに、どうやら不動くんはよく保健室でサボっているらしい。行きつけのサボり場もわかったところで今はその優しさを素直に受け取っておこう。


「ありがとう」
「別に。まあ、あれだ、早く治せよ」


ふいっとそっぽをむいてしまったけど、ぶっきらぼうな物言いのところどころに優しさが見えてつい笑ってしまった。


「素直じゃないね」
「素直だなんて言われたことねーよ」


不動くんは無駄口叩いてねぇでさっさと寝ろと一言言うと、カーテンを閉めてしまった。それから足音がどんどん遠くなって保健室のドアが開く音がした。

あれれ、わたしちょっとさみしい。

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