log | ナノ



「今日の晩ご飯昨日のカレーの残りだって」
「え、マジで…?」


わたしの隣を歩く和成は今日はグラタンの気分だったと言って不満げに口を尖らせた。わたしがカレーは2日目が美味しいんだよと諭すも、今日みたいに寒い日には絶対にグラタンだと言って譲らない。変に頑固なところは昔からは変わらないままだ。


「母さんどうせ作るのめんどくさいだけだろ」
「まあそうかもね」
「ってかそれしかねえし」
「お母さんも大変なんだよ」


今頃お母さんはくしゃみでもしているだろうか。その光景を想像するとなんだか可愛らしかった。お母さんは年齢の割りにすごく可愛い人だから。それからしばらくして、何の脈絡もなく和成がおずおずと口を開いた。


「姉ちゃんはさ、どうなの、勉強」
「…ちょっと、厳しいかな」
「あんな頭いいのに?」
「世の中にはわたしより頭のいい人なんていっぱいいるのよ」


ふとこの前返って来た模試の結果を思い出した。判定は決していいものとは言えなくて、担任の先生からも少しレベルを落としたらどうだと言われたばかりだ。そのときには首を横に振ったものの、もしかしたらそれは意地だったかもしれない。やっぱり先生の言うようにレベルを下げたほうがいいのかな…と悩んでいると、いつの間にか斜め前を歩いていた和成が突然振り返って立ち止まった。


「姉ちゃんなら絶対受かるって!俺姉ちゃんがどれだけ頑張ってるか知ってるし、俺が知ってる中じゃ姉ちゃんほど勉強してるやつなんかいねえよ。そんな姉ちゃんが受からねえで誰が受かるんだよ」
「…和成、」


目頭がじんわり熱くなって、涙がぼろぼろと零れ出した。まさか弟にこんなに泣かされるとは思いもしなかった。そういえば和成とは毎日一緒に登下校しているわけで、誰よりも長い時間一緒にいるのかもしれない。和成が朝練の間や放課後の練習の間にわたしがずっと勉強していたことを一番よく知っているのは他でもない和成だ。まだ結果には表れていないけど今までの努力を認めてもらえたことが嬉しくて、溜め込んでいた涙は留まることを知らない。他の誰にも見せられないような顔で嗚咽するわたしにそっと差し出されたのはハンカチ。それも、わたしが和成の入学祝にあげたものだった。ちゃんと使ってくれてたんだ。


「ほら、泣き止めって。早く帰って飯食おうぜ?」
「…ぐすっ、っ、…ん」
「今日せっかくだから晩飯カツカレーにしてもらおうぜ!カツ食って試験に勝つ!…なんつって」


寒いオヤジギャグで頑張ってわたしを泣き止ませようとしてくれる和成には申し訳ないけど、それじゃ笑えないよ。そんな優しくされたらまた泣いちゃうじゃない、ばか。

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -