部活が終わって大我くんとわたしのふたりきりで帰ることになった。いつも一緒に帰っている黒子くんはなんでも用事があるとか。気を利かせてくれた彼に明日それとなくお礼を言っておこう。そして今現在のわたしはというと慣れないふたりきりに緊張しっぱなしでいつもみたいに話せなくて自己嫌悪に陥っている。と、少し先の信号が赤になった。あの信号長いんだよね。案の定わたしたちが信号にたどり着いてもまだ赤のままでわたしたちの後ろにもたくさんの人が並んだ。すると隣にいた大我くんの手が突然おでこに触れた。
「っわ!な、なに?」 「なまえ今日変だから熱でもあんのかと思って」 「へっ?!いやいやなにも!」 「熱はないみてーだけどあんま無理すんなよ」 「あ、ありがと…」
すごく自然にこういうことをするあたり、大我くんは天然タラシだと思う。他の人にもこんなことしてるんじゃないかと思うと焼きもち妬きのわたしとしては気が気じゃない。っていうのを前にちらっと大我くんに言ったら悪い、俺無意識にしてるかも…なんて真剣に悩んじゃってあのときはほんとかわいかったなあ。ふふふ。べしっ、あ、痛。「なに笑ってんだコラ」ちょっとむすっとした大我くんと目が合った。笑ってごまかすと、大我くんは溜め息をひとつ吐いてまあいいけどよと少し笑って、丁度青になった信号を渡り始めた。わたしは遅れないように着いていく。そうしたら偶然触れた手を大我くんがぎゅっと握ってくれた。心臓はばくばくだけど、なんだかこの音も大我くんと手を繋げたことを喜んでるみたい。
しばらくそのまま特に何を話すでもなく歩いていた。何も話さなくても気まずくもないし、むしろ心地よかった。あ、大きな木が見えた。うちはもうすぐ。言うなら今しかない。「た、大我くん!」突然声をあげたわたしに驚いたのか大我くんは少しつまりながらどうした?と優しく聞いてくれた。そんな大我くんがどうしようもなくいとおしくて、気付いたら大我くんに抱きついていた。
「わたし今すっごく幸せです。いつもありがとう」 「、おー…」
大我くんは照れているのかいつもよりそっけない返事だった。顔は見えないけどきっと照れ屋な大我くんのことだから真っ赤なんだろうな。
「大我くん誕生日おめでとう。生まれてきてくれてありがとう」
ここ最近ずっと考えていたお祝いの言葉は蓋を開けてみれば何一つ入ってなくて、今思ったことを正直に言葉にしたものはあまりにもありきたりで、いろんな人に使い古されてきただろう台詞だけど、それでもやっぱりこれがいちばんぴったりだと思った。大我くんがわたしをぐっと抱き寄せた。
「…サンキュ。なまえに出会えたことが最高のプレゼントだな」
ああ、わたしすごく幸せ。
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火神くん誕生日おめでとう!
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