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「恥ずかしいっす日向キャプテン」
「んなこと言ってる場合かダァホ」


周りの視線はわたしと日向に痛いほど集まってくる。それもそのはず、わたしは今、日向におんぶされているのだ。もとはといえばバレーで足をひねったわたしが悪いのだが、隣でバスケをしていた日向が鬼のような形相で駆け寄ってきたときにはビビった。ありゃ完全にスイッチ入ってたな。とりあえず保健室に行くことになって立ち上がろうとしたら日向が背中をこっちに向けて乗れよとか言うもんだからわたしは硬直、友達は興奮していた。恥ずかしいから、自分で歩けるから、と何度も言ったけどスイッチの入った日向に負けて今に至る。お姫さま抱っことかされるよりマシだけど、この歳になっておんぶされると誰が予想しただろうか(いや、誰も予想しなかった)。体育館を出て人目から解放されると、改めて日向が男なんだということを実感した。日向の背中は思ったよりも広くて乗り心地?はなかなかいい。日向にそう言ってみたら、お前は重いと言われたので髪の毛をむしってやった。リコじゃなかったことを幸いに思え。


「いだだだだ!何すんだ!」
「…サイテー」
「バカ、冗談だっつーの!」


普通マジで重いヤツに重いとか言わねーから!ちょ、これマジな。自分の失言に気づいたのか日向は慌てて事態の収拾を始めた。顔が見えなくても相当慌てていることがわかる。ふふん、せっかくだから日向の弁解を聞いてやらんこともない。

しばらく日向の話を聞いていると、はじめのほうは重いと言ったことに対する弁解と謝罪が主だったが、途中から方向転換してあれよあれよという間に誉め殺し作戦に変わっていた。

ていうかみょうじ普通に細いし、ちゃんと食ってんのか心配になる。それに顔だって普通にかわいいし、部活もマネージャー頑張ってくれてるし。あ、あと勉強もそれなりにできるし。


「わたしはなんでも普通ってわけか」
「は?!そうじゃなくて…」
「別にいいし普通で、普通らぶー」
「拗ねんなって」


拗ねてないから。もう一回髪の毛をむしってやった。これでハゲたらお前のせいなとか言われたけど、ちょっとむしられただけでハゲるなら所詮その程度の髪だったってことで決してわたしのせいじゃない。というわけでハゲろハゲてしまえ。それが悔しかったらわかめでも食べてろ。


「なあお前今失礼なこと考えてないか?」
「べっつにー」


なんか面白くなってきた。ちょっと遠慮して肩を持っていた手を首に回して、顔を肩に埋めると、日向は一瞬びくっとした。足痛むか?と聞かれたので大丈夫と言って足をばたつかせると、捻挫なめんなと長々と捻挫の怖さについて語られた。ありがとう、よくわかったのでもういいです。そういえば体育館からここまでずっとおぶって来てもらったわけだけど、ほんとに重くなかったのだろうか。けっこう距離あるしな…まあいいや、筋トレ筋トレ。このお礼は昨日小金井からもらった飴で許して。というわけで、今はもうちょっとこの背中に身を委ねたいと思います。


「進め、日向号」
「お前降ろすぞ」

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