※43話ネタ(救護室とか行ってないけど)
「ばか」 「バカで悪かったな」
倉間くんは優しい。いつも憎まれ口を叩くけど、ほんとはそんなこと思ってないことも知ってる。最初は天馬くんに反発したりもしたけど、今は仲間として革命を成功させるために一緒に戦ってる。神童くんが離脱して天馬くんがキャプテンになってからも、キャプテンに不慣れな天馬くんをちゃんと支えているのも知ってる。だから今だって天馬くんを庇って怪我して救護室にいる。倉間くんは優しい。優しすぎる。
「化身のシュートを生身で受けるなんてほんとばか」 「しょーがねーだろ」
なにがしょうがないよ。ばか。倉間くんのばか。怪我したじゃない。天馬くんを守るために体張って、怪我したじゃない。無茶しないでって言ったじゃない。倉間くんが倒れたとき、心臓がすごく早く動いて、鳥肌が立って、冷や汗が背中を伝った。すぐにでもフィールドに行きたかった。手をぎゅっと握り締めたときに食い込んだ爪の後が今でもくっきり残ってる。倉間くんは何もわかってない。倉間くんが無茶をするたびにわたしがどれだけ心配してるかなんて何も知らないんだ。ああもうわたしって倉間くんの何なんだろう。鼻がつんとして泣きたくもないのに涙がぼろぼろ溢れてきた。
「…な、泣くなよ」 「うるさい。倉間くんのばか」 「バカバカ言うな」 「人のことばっかり考えて、いっつも自分のことは後回しにする倉間くんはばかだよ!その度にわたしがどれだけ心配してるか知らないで!」
倉間くんはぎょっとして、何も話さなくなった。わたしは無言で倉間くんの手当てを続ける。沈黙が重い。しばらくして倉間くんがようやく口を開いた。
「俺だって無茶したくてしてるわけじゃねぇ」 「ならなんで無茶なんてするの」 「お、お前の前で格好悪いとこ見せらんねーだろ」
倉間くんは口元を右手で隠した。頬っぺたは色黒の倉間くんでもわかるくらい真っ赤。いつも言わないようなこと言うからだよ。ほんとはね、わたし倉間くんが自分のこと後回しにしてまで他の人のために頑張るところ、すごく好きだよ。優しい倉間くんが大好き。もしかしたらわたしじゃない誰かが倉間くんに優しくされたり守られたりすることに嫉妬してるのかもしれない。そう考えたら途端に恥ずかしくなった。
「ごめんなまえ、もう無茶しねーから」
カーテンに隠れてひとつ、小さなキスをした。
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