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「あーおーみーねー」


目の前で腰を下ろして壁にもたれている黒焦げを見下ろしてやった。当の本人は練習で相当疲れているらしく、あァ?と少し不機嫌に聞き返してきた。なんだい、せっかくの一年に一度の大事な日なんだから今日くらい機嫌よく過ごしたらどうだ。


「誕生日なんでしょ、今日」
「お前なんで知ってんだよ」
「さつきに聞いたんでーす」
「ふーん、で、プレゼントは」
「はい、ボール」
「これそこに転がってたやつだろ!」


よくわかったねーと少し屈んで頭を撫でてやると、俺はガキじゃねえ!とまた怒りだした。そういう風にムキになるところがガキなんだよ。それを言ってしまうとさらに機嫌が悪くなるだろうことは容易に想像できるので言わないでおく。


「…おめでと」
「ん、おお。サンキュ」
「プレゼントあげないこともないよ」
「どうせまたそのへんのボールだろ」
「ケーキあげようと思ったけどやっぱやめた」
「は?!おま、それ先に言えよな!」


青峰は俄然焦りだした。青峰がそんな反応をするとは思ってなくて、嬉しい反面面白くてつい吹き出してしまった。すると「笑うな」とでこピンをくらった。うう、痛い。


「お前今日ケーキ持ってきてんのか」
「一応マネ室に置いてある」
「っし、今日一緒に帰んぞ」
「なに言ってんの、いつも一緒じゃん」
「バァカ、二人っきりに決まってんだろ」


予想外の展開に頭が着いていかない。わたしの頭の中ではかるーいノリで青峰のついでにみんなにあげるつもりだったのに。そりゃ一応青峰のやつは他のみんなよりも少し豪華にはしてあるけど、そんなわざわざ二人っきりになってあげるようなものじゃない。対応に困っていると「紫原が見たら間違いなく食われるからな」と補足が。なんだ、そういうこと。みんなの分もあると言うと、途端に青峰は大きなため息を吐いた。


「そういうのは普通主役の俺だけに作ってくるもんだろ」
「だってみんなにもいつもお世話になってるし、ついでだよついで」
「ふーん、まあいいけどよ。とにかく帰りはあいつらと別な」


これは青峰のなかで決定事項らしい。ここは素直に言うことを聞いてあげようと思う。けど実際青峰に恋をしている女子は多いし、キセキのみんなだって青峰と帰りたいに決まってる。わたしなんかがケーキひとつで青峰を釣っていいんだろうかと思ってしまう。けど。欲張りなわたしはもう少しだけこの優越感に素直に浸りたいと思う。


「わかった。その代わりわたしの誕生日にもプレゼントちょうだい」


それであわよくば一緒に帰ってほしいなあ、とか。



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青峰くん誕生日おめでとう!

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