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最近ずっと同じ夢を見る。綺麗な女の人が泣いてる夢。俺はその人に膝枕されてて、その人の涙を拭ってあげたいんだけど、身体中が痛くて言うことを利かないんだ。段々視界もぼやけてきて、ああ俺死ぬんだな、ってなんか妙に冷静に悟っちゃって。でもまあそれもいいかな、なんて。なんていうか、自分が死ぬってわかってんのに俺すっげー幸せなんだ。けどどんどん息苦しくなって、もうヤバいと思ったらその人が俺の顔にかかった髪を払って、ぼんやりした視界のなかめちゃくちゃ綺麗に笑って、それから俺に言うんだ。


「必ずまた会いに行くから、そのときまでゆっくりおやすみ」



* * *



「今日も同じ夢か…」


今日も全く同じ夢だった。かれこれ1週間同じ夢だ。これはやっぱりおかしい。今まで俺の中になぜかあの夢を独り占めしたいっていう思いがあって誰にも話さなかったんだけど、今考えたらこれってもしかして霊に取り憑かれてたりする?なんか急に寒気がした。とりあえず千鶴に相談してみよう。そう決めた途端電話が鳴って、「もしもし?」「あ、もしもし平助くん、わたし今日熱が出ちゃって…学校休むね。ごめんね、明日は行くから」とりあえず相談は明日に延期。



* * *



学校に着いて教室に入ると、なんだかいつもよりザワザワしていた。しきりに転校生って言葉が繰り返されてるから、たぶん転校生がうちのクラスに来るんだろう。そういえば先週担任がそんなこと言ってたな。いつもなら俺もみんなの輪のなかで同じように喋ってるんだろうけど、生憎今の俺は夢のことで頭がいっぱいでそんな気になれない。


チャイムが鳴って、担任が教室に入ってきた。教室中から歓声が上がる。担任の後ろには転校生らしき女子がいた。俯いてるせいで顔はわからないけど、綺麗な黒髪だと素直に思った。担任が黒板に転校生の名前を書き出した。みょうじなまえ。初めて見るはずの名前にどこか懐かしさを感じた。俺は、こいつを知ってる。担任に自己紹介をするよう促された彼女は、今まで附せていた顔を上げた。


「みょうじなまえです」


その顔、その声、全部思い出した。俺が夢で会ったのはなまえだ。結っていた髪を下ろしていても、質素な着物を着ていなくても、なまえだ。けどあれは夢じゃなくて俺の前世の記憶…俺はあのとき死んだんだ。そして、なまえは俺の、そうだ、なまえだ。なまえと目が合って一瞬時間が止まった。するとなまえは優しく微笑んだ。


「大切な人を起こしてあげるために来ました」

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