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「姉ちゃん、風呂まだー?」


愛しの弟の呼び掛けではっと眠りから覚めた。お風呂で寝てただなんてなんて危ない!わたしの危険を察知して起こしてくれたのね、流石わたしの弟!


「今上がるからちょっと待って!」
「はいはい」


ざばっと勢いよく立つと立ち眩みが激しい。だけど真一に一秒でも早く会うためにそんなことに構っていられないの。ふらふらしながらもなんとか浴室を出て手際よくタオルで体を拭いた。うん、これでよし。

ドアを開けてリビングへと向かうとそこには愛しの弟、真一がドライヤーを片手にスタンバイしていた。なんて要領のいい子。


「遅い」
「ごめんごめん」


ソファーに腰を降ろすと、いつものように髪を乾かし始めた。その手つきの優しいことと言ったら。ちなみにこれはわたしと真一の日課なのである。


「姉ちゃんシャンプー変えた?」


やはり分かったか弟よ。昨日テレビで見て買ってきた新商品。君なら分かると思っていたよ。


「そうなの。真一はどっちの方が好き?」
「俺は…前の方が好き」
「えー、何でよ」
「だって、前のシャンプー姉ちゃんにと思って俺が買って来たのに」


もうなにこの子可愛すぎる。明日からシャンプー前のに戻そう。で、今日買ったシャンプーは…お父さんにでもあげよう。


「じゃあもう1回お姉ちゃんのために買ってきてよ」
「俺部活で忙しいから無理」


拗ねたところも可愛いなオイ。だけどお姉ちゃんは素直な真一が好きなの。真一が機嫌直してくれないならわたしが魔法をかけてあげよう。


「買ってきてくれたらちゅーしてあげるのになあ」
「はあ!?っな、何考えてんだよ!」


焦ってる焦ってる。だけど「姉ちゃんほんとにちゅーしてくれるんじゃないか?」なんてちょっと期待してる。ふはは、お姉ちゃんにはなんでもお見通しよ。


「…今回だけだからな!」


その台詞をもう何回聞いたんだろうね。聞くたびに悶えてますわたし。魅惑の台詞に浸っていると、はい終わり。と頭の上から声がした。上を向くと真一の顔。可もなく不可もない。だけどそんな真一がものすっごく可愛いと思うのはお姉ちゃんだからかな。


「可愛い子にはちゅーのご褒美!」


ちゅっ。

あらら、真っ赤になっちゃった。

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