「風丸くんはいいなぁ」
突然、隣にいたなまえがぽつりと呟いた。なまえは不思議なやつだ。みんなからはよく天然だとか言われているけど、俺は天然ともちょっと違う気がする。なまえのまわりだけなんだか他とは違う空気が流れているような気がする。俺はその空気が好きなのだ。
何がいいのか聞いてみると、俺の髪の毛を手にとって微笑みながら、サラサラでうらやましいと答えた。そもそもこの髪の毛は今となってはなんで伸ばしだしたのかも分からないし、俺のトレードマークみたいなものになってしまっている以上、下手にばっさり切れないからこのままの長さを維持しているというだけのことだ。特にといったケアをしているわけじゃないし、うらやましいと言われてもどうすることもできない。
「あの子はいいなぁ」
またぽつりと呟いた。今度は何が?とは聞かなかった。なまえが何を言いたいのかわかったから。誤魔化すように笑うと、髪を撫でるなまえの手が止まった。いや、正確に言うと絡まった俺の髪がなまえの手を止めた。
「ね、どうしてわたしじゃだめなの?」
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