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今日は2月14日、バレンタインデー。わたしの手には本命チョコ。なんだかんだで寝たのは3時ごろになっちゃったけど幸い目の下にクマは出来なかった。もうほんと神様ありがとう。


「おはよー剣城くん!」
「はよ。朝から元気だな」
「うん、元気だけが取り柄だから」


剣城くんとの待ち合わせ場所にも遅れずに着いた。手に持った紙袋の中にはリボンをかけた箱。このリボンに時間が掛かったんだよなぁ。心をこめたチョコを剣城くんに何も言わず差し出した。


「これは…」
「チョコ。今日はバレンタインデーだからね」
「…ああ」
「これ、今食べてよ」


剣城くんは明らかに顔を曇らせた。そりゃそうだ。だって剣城くんは甘いもの苦手なんだもんね。そこはみょうじなまえ、ちゃあんと考えております。ふふふ、剣城くんてば眉間に皺寄ってる。


「今感想聞きたいの。お願い」


剣城くんが「お願い」に弱いこともちゃんと把握済み。私はそんじょそこらの純粋な女の子とは違うんだよ。案の定剣城くんはわかった、と半ば諦めてラッピングのリボンを解きだした。しめしめ、狙いどおり。


「…いただきます」


ぱくり。もぐもぐ…

あれ?剣城くん普通に食べてる?…あ、眉間に皺寄せたまま固まった。


「っ!?…げっほ、げほっ…っ…」


ありゃま、剣城くんったら豪快にむせちゃった。それに心なしか顔色が悪くなったような気がするな。いや、気がするじゃなくてそうだ。こうなると思って用意しておいたペットボトルの水を渡したらものすごい勢いで半分まで飲んでしまった。水を飲んで落ち着いたのか、剣城くんは物凄い形相でわたしを睨んでいる。うう視線が痛い。


「お前はこれに一体何を入れたんだ」
「剣城くん甘いもの苦手って聞いたから、ハバネロを」
「どれだけ入れた」
「乾燥したのを3つくらい…かな?」


やばい、眉間の皺が深まってしまった。明らかに怒りが増幅してるよ助けて神様ヘルプミー。


「ごめん、剣城くん甘いもの嫌いって聞いたから」
「俺の為に辛くした、と?」


そうです!と言わんばかりにぶんぶんと首を縦に振る。「〜の為に」っていいよね、それっぽく聞こえて。


「…ありがとう」
「……へ?」


今剣城くんありがとうって言った?うそん。あのツンデレ剣城くんがわたしにありがとうだって?夢かこれは。頬をつねってみたけどやっぱり痛い。いや逆に痛くなかったらものすごいショックだけど。


「何か貰ったら礼を言うのは当然だろう」
「あー…そういうこと」


剣城くんはふっと笑って学校へ向かって歩き出した。わたしも置いていかれないように小走りで駆け寄った。そうしたらちょっとゆっくり歩いてくれた。剣城くんやっぱり優しい。なんて思ってたら突然耳元に剣城くんの気配を感じた。


「来月、期待しとけ」


剣城くんの意味深な発言に嫌な予感しかしなかったことは言うまでもない。

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