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「ぶえっくしょい!」


あまりと言っちゃあ、あんまりなくしゃみ。わたしはオッサンか。隣にいる晴矢もお前オッサンかよなんてつっこんでくる。いやいや、わたしは列記とした女子高生のはずだ。少なくとも、年齢上では。


「煩いチューリッぶえっくしょい」
「誰がチューリップだコラァ」
「お前だよ、南ぶえっくしょい雲晴矢」


こんな短時間にくしゃみ出すぎでしょうよ。しかもオッサンの。わたしが悪いんじゃない。外が寒いのが悪いんだ。これマイナス10度とかあるんじゃないの。なんて思ってたら晴矢が自分が着てたコートを貸してくれた。優男。


「風邪引いたんじゃねーの」
「そうね、わたしか弱い乙女だから」
「いや、やっぱバカは風邪引かねーな」
「誰がバカだこんちくしょう」
「お前だよ、みょうじぶえっくしょいなまえ」


ごめん晴矢。いくらバカでも寒いものは寒いよね。ちらっと晴矢を見たら目が合って、ちょっと気まずそうに逸らされた。コート貸してくれたときの君はかっこよかったよ。


「ごめんこれ返すわ」
「いや別に俺寒いのとか慣れてぶえっくしょい」
「…一緒に入る?」
「…だな」


二人羽織も出来ないし一緒に着ることも出来ない。考えた挙句晴矢がコートを着てわたしが抱きつくっていう物凄い恥ずかしい感じになってます。歩きにくい。


「寒くないか?」
「うん、あったかい」


おお、なんか今付き合ってるっぽい。顔を合わせればいつも喧嘩ばっかりだし、学校じゃ恥ずかしくて全然話せないし、カップルっぽいことと言ったらたまに一緒に帰ったりするだけっていう付き合ってるのかどうか分からない状態が続いてるわたしにとってこの状況は恥ずかしくも嬉しいわけで。心なしか晴矢もいつもより優しい気がする。


「なあ、」


「やっぱ俺お前好ぶえっくしょい」
「空気読めやバカチューリップ」

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