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「まず聞こう。何があったのだよ」
おはようございますみょうじなまえです。今日の訪問者はまさかの緑間くんでした。こんな秀才が学校休んでいいのこれ。こんなバカ二人のために時間を割いてもらっていいの。ほら、手土産とかさ、ご丁寧に焼き菓子の詰め合わせを持ってきてくれてさ。あれ?焼き菓子?緑間くんっておしるこ好きだしてっきり和菓子だと思ってたよーってなるじゃん。いや、緑間くんのことだから持ってきてくれるのは前提としてだよ?聞いて驚くな、焼き菓子を選んだ理由は「お前たちなら和菓子より洋菓子を好むと思ったのだよ」ってもう尊敬に値するよね。それから、わたしたちを見ても笑わないところとかもう感動の涙で前が見えません。
そんな緑間くんを困惑させているのがこの雰囲気。大輝は昨日からずーっとやきもちを焼いているのだ。もう焦げろよ。いつもなら一日経てばころっと忘れているのに、なぜ今回に限ってこんなにもしつこいのか。昨日の晩ご飯が悪かったのか。カレーライスのどこが悪かったというのか。結局昨日はあれから会話という会話をせずに眠ったのであった。
「別になにもねえよ」 「……そうか」 「わざわざ来てくれたのにごめんね緑間くん。気にしないで」 「……おは朝占いは本当によく当たるのだよ」 「え、ごめん何の話?」
突然どうした。今までベタ褒めしてきたじゃないか。いつもどおり変なラッキーアイテムを持っていることにも触れずにきたじゃないか。それなのにどうしてその話になる。
「はっきり言おう。お前たちの星座は今日のおは朝占い11位と12位なのだよ」 「……あ、はい」 「青峰、お前は11位だ。素直になれなくて相手を傷つけてしまうかもしれない」 「おお…」 「みょうじ、お前は12位だ。大切な人との関係が悪くなってしまうかもしれない」 「あー…はい」 「どうだ、当たっているだろう」
緑間くんはドヤ顔でメガネのブリッジをくいっとあげた。確かに思ったより当たっている。毎日変なラッキーアイテムばっかりだから全く信用してなかったけど、占い自体はけっこう当たるのかもしれない。ここは占いを信じて例のラッキーアイテムのお力をお借りするのが得策だろう。
「うん、もうドンピシャ。すげーっす」 「そうだろう」 「こんな最低の日にはどうしたらいいんだろうねえ」 「もちろんラッキーアイテムを持っておくに限るのだよ」 「……ラッキーアイテムって何?」
やっぱり来たよラッキーアイテム。普通なの来い普通なの来い普通なの「青峰は折り畳み傘、みょうじはベンチなのだよ」なんかわたしのだけタイプ違うやないかい。持ち運び不便すぎるだろ。いや緑間くんがいつも持ち歩いてるから持ち歩く前提で考えてるわたしもわたしだなオイ。
(ベンチとかどうやって用意するわけ?!) (心配するな、持ってきているのだよ) (あなたは神か) ((早く焼き菓子食いてえ…))
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